無酸素性閾値(むさんそせいいきち)・嫌気性代謝閾値
公開日:2016年7月25日 13時00分
更新日:2019年2月 1日 17時59分
糖や脂肪等のエネルギー源と酸素の利用
運動のエネルギーは糖や脂肪を主な燃料としていますが、燃料からエネルギーを作り出す過程においては若干の違いがあります。この違いは酸素を利用するのか、それとも利用しないのかということです。
軽い運動をする場合は、糖や脂肪をエネルギー源とし、酸素を利用することによって多くのエネルギーを獲得します。
一方、強い運動になると、酸素を利用しないで獲得するエネルギーが増大します。
強い運動と乳酸の生成
エネルギーは筋肉の細胞で作られるのですが、筋肉に多くの酸素が供給されていれば、糖は酸素を利用することができますが、強い運動になると大量の糖をエネルギー源にするため、筋肉への酸素供給が間に合わず、酸素を利用しないで作り出すエネルギー量が増大します。
酸素がない状態で糖をエネルギー源にした場合には、"乳酸"(リンク1参照)という物質が生成されます。強い運動になればなるほど、多くの乳酸が生成されことになり、かつ血液中への放出が急増するため、血中乳酸濃度の上昇を招きます(詳しくは"乳酸性閾値"の項(リンク2参照)をご覧下さい。)。
無酸素性閾値とは
無酸素性閾値(嫌気性代謝閾値)「AT:Anaerobic Threshold」というのは、自転車のペダルを徐々に重くするように軽い負荷から強い負荷へと運動強度を徐々に上げていくような運動をした場合に、筋肉への酸素供給が十分に足りている状態から不足が生じる状態に移行する変化点となる運動強度のことをいいます。
この観点からすると、酸素が十分に足りているという意味で有酸素運動(リンク3参照)の上限の運動強度といえます。この変化点は運動中の身体状態を調べてみると、換気量が急増する、酸素摂取量の増加に対して二酸化炭素排出量の増加が上回るなどの生理学的な変化と一致します。
無酸素性閾値も、全身持久力の体力指標
無酸素性閾値(嫌気性代謝閾値)は最大酸素摂取量(リンク4参照)と同様に全身持久力(スタミナ)の体力指標として用いられています。これは、最大限までの運動を実施しなくてもよく、かつ客観的に測定が可能であることがその理由です。
また、現在では健康づくりとしての運動や生活習慣病の予防および改善としての運動における強度の目安として広く利用されています。
この理由としては、最大運動の50~60%程度の運動強度に相当し、かつ自覚的にも"きつい"を感じない程度の運動なので無理なくできる、血液中の乳酸が急増しないので長時間持続できる、息切れを起こさない、心臓への負担が少ないなどが挙げられます。