長生きしている高齢者は何を食べているか?
公開日:2016年7月24日 04時00分
更新日:2019年2月 1日 17時05分
長生きしている高齢者は肉を多めに食べている
年を取ってくると、肉や魚よりも、もっとあっさりしたものを食べたくなる人も多いと思います。若いうちは、体が成長したり、新陳代謝が盛んだったりして、タンパク質をしっかりとったほうが良いけれど、年を取ったらタンパク質はそれほど摂取しなくてもいいと思っている人も少なくありません。
しかし実は、高齢者の方は健康寿命を延ばすためにしっかりタンパク質をとる必要があることを推察させるデータがあります。実際に100歳以上の高齢者のタンパク質の摂取量を調べて見ると、平均的な日本人と比較して、図1・表1のとおり男女ともに総エネルギー量に占めるタンパク質の割合が高く、さらに、図2・表2のとおり総タンパク質に占める動物性のタンパク質の割合が高いことが、明らかとなっています。つまり、長生きをしている高齢者は、肉や魚などの動物性タンパク質をたくさん食べているということになります。
タンパク質由来エネルギー量/総エネルギー量 | |
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平均日本人 | 14.6% |
100歳に達した男 | 16.0% |
100歳に達した女 | 16.9% |
動物性タンパク質/総タンパク量 | |
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平均日本人 | 48.7% |
100歳に達した男 | 59.6% |
100歳に達した女 | 57.6% |
肉を食べることのメリット
タンパク質は、成長期の子どもにとっては体を作る栄養素として必須のものですが、体の大きさがこれ以上成長しない成人においても重要な栄養素です。体が出来上がった人でも、タンパク質全体のうちの約3%のタンパク質(体重70kgの男性の場合約250gから300gのタンパク質)が、代謝されて毎日入れ替わっています。そのため、成長期の子どもだけではなく、成長が終わった成人や高齢者も毎日タンパク質を摂取しなければ、体を維持することが出来ません。
タンパク質は豆腐などに含まれる植物性のタンパク質や、肉や魚などの動物性のタンパク質があります。タンパク質摂取において、豆腐や魚ではなく、肉を食べた方が良いのでしょうか。
タンパク質は、その構成単位であるアミノ酸にまで消化された後、体内に吸収されます。そして、再び体に必要なタンパク質に再合成されます。大豆や魚と比べて同じ哺乳類である家畜の方が生物学的にヒトと近いため、肉に含まれているタンパク質の形も似ています。つまり、タンパク質を構成するアミノ酸の組成が似ているために、畜肉に含まれるタンパク質が、ヒトの体の中で最も効率的にタンパク質に再合成されると考えられているのです。
また、脂肪は肥満の原因になるため健康に良くないと考えている人も多いですが、実は脂肪も長生きをするためには、十分な量を摂取する必要があるとされています。実際には、動物性脂肪と植物性脂肪をほぼ1:1の割合で摂取することが理想的です。その点でも、野菜や魚に偏らず、肉をしっかり摂取する必要があります2)。
そのほかにも、このように効率的に体内で合成されるタンパク質の代表として血中アルブミンがありますが、血中アルブミン濃度が低い方が、免疫力が低下して病気のリスクが高くなるため、寿命が短くなることも示されています。
なぜ高齢者は肉を食べた方が良いのか
なぜ高齢者は肉を食べた方が良いのでしょうか。現在、中年の肥満や生活習慣病とは対照的に、高齢者の間では、低栄養が健康上の大きな問題の一つになっています。
高齢者は、風邪をこじらせて肺炎となり、肺炎が原因で死亡することがよくあります。高齢者の肺炎の原因は、低栄養による免疫力の低下であると考えられています。高齢者はタンパク質が特に不足しがちです。タンパク質の栄養状態を示す血中アルブミンの量が少ない人の割合は、高齢者では年齢が上がるにつれて著しく増加しています(図3)。そのため、低栄養を解消し、免疫力を高めるためには、摂取エネルギーを増やすだけでなく、タンパク質の摂取量を増やすことが大切になります。とくにたくさんの量を食べることのできない高齢者は、効率よくタンパク質の摂取量を増やすために、肉をしっかり食べた方が良いのです。
肉を食べる際の注意点3)
高齢者は肉をしっかり食べた方が良いのですが、腎臓に疾患のある人は、タンパク質をたくさん食べると、腎臓に負担がかかってしまい、腎臓の症状を悪化させてしまう危険があります。腎機能が低下してしまうとそれを元に戻すことはできず、人工透析をしなければならなくなってしまう可能性もあります。腎臓に障害がある場合は、かかりつけの医師や管理栄養士と相談して、適切な量を摂取するようにしましょう。
また、肥満傾向の人や血中脂肪が高い人は、脂肪の摂りすぎはよくありません。脂肪を摂りすぎないように、赤身など脂肪の少ない部位を選んで食べるようにしましょう。
参考文献
- Shibata H.etal.Nutrition and Health 8:165-175,1992