加齢と食欲の変化
公開日:2016年7月25日 11時00分
更新日:2019年2月 1日 18時24分
加齢による食欲の変化の原因
加齢に伴う食欲の変化の原因として以下があります。
1. 運動量や筋肉量の低下
筋力の低下に伴い買い物や散歩などの外出が億劫になり、外出する頻度が減ると、運動量が減るため、お腹が空かず、エネルギーの必要量も減ります。
2. 心因性による食欲低下
高齢者になると、家族や友人の死別による孤独感、施設や病院への入院などによる環境の変化、生きがいや、生きる気力がなくなるなどから食欲が低下することがあります。現在、高齢者の孤食が問題となっていますが、一人の食事は楽しくなく、美味しさも半減してしまい、結果的に食欲低下になってしまいます。
3. 認知症による食欲の変化
認知症になると脳の機能が低下するため、摂食をつかさどる機能のバランスが崩れてしまいます。認知症により、食べ物を食べ物と判断できなくなることもあります。
4. 内臓機能の低下
胃腸の働きが低下し、消化吸収の能力が低下し、消化不良や下痢をしやすくなります。また腸の働きも鈍くなるので、便秘を引き起こし、食欲がわかないことがあります。
5. 味覚、嗅覚の低下
高齢者になると味を感じる細胞の数が減り、塩味や甘味を感じにくくなってしまいます。そのため濃い味を好むようになりますが、高血圧の方は減塩にすると、味を感じられず、食事が進まなくなることがあります。食べ物の匂いがあることにより、食事の味もさらに美味しく感じますが、嗅覚の低下により、さらに味が感じにくくなってしまいます。
また、義歯の調子や誤嚥を経験すると、食べることが苦となってしまい、肉や魚、繊維質の多い野菜の摂取量が減ってきます。それにより、亜鉛などのミネラルの不足になるため、さらに味覚障害を引き起こしてしまいます。また服薬によっても味覚障害を起こします。
また食べ物の好みが変わるので、今まで食べていたものを食べなくなってしまうことがあります。
6. 視覚の低下
高齢者になると白内障が原因で食べ物の色が、黄色味に見えてしまうため、鮮やかな色がわかりにくく、それにより食べ物の色による美味しさが失われてしまいます。
また老化に伴い、物が見えにくくなるので、中が白いお茶碗に、白いご飯やお粥を入れても、はっきりと見えないので、食べにくく、残してしまうことがあります。
7. 口腔の状態
咀嚼(そしゃく)、嚥下(えんげ)の低下で、誤嚥を引き起こしてしまうと、食べることへの不安や楽しく食べられないことから、食欲低下を招きます。また唾液の分泌量が低下するので、味を感じにくい、食べ物をうまくまとめられない、パサパサしたものは食べにくくもなります。
義歯の調子が悪いと、上手に食事ができないため、食事を楽しむことができません。
食欲を維持・高めるにはどうしたらよいか
義歯の調子や嚥下の状態に合わせて食事を刻んだり、ペースト状にすると食べやすくはなるものの、どんな食べ物か判断がつきにくく、食欲が低下してしまいます。食事を美味しく感じるのは五感で楽しむことです。特に視覚からの情報は8割ほどあると言われています。食欲を高めるためには、料理の見た目を良くする、元の形がわかるように盛り付けることです。
食材の色、温度、盛り付けも食欲に関係します。煮物などのいろいろな食材が入っていても、全部一緒にミキサーにかけしまうと、茶色っぽくなってしまい、食材本来の触感だけでなく、色も楽しめなくなります。食材のもつ色を活かすことも大切です。ソフト食では魚のムースを魚の形に入れるなどして、安全な食形態でありつつ、見た目でも楽しめる食事になっています。
会話をしながら楽しい食事は食欲も増します。施設や地域の食事サービスの利用や親せきや友人などとの食事会行うと、食事が楽しくなり、生きがいにもなります。
人の体内には体内時計が備わっており、生活のリズムがあります。規則正しい食生活を送ることで、食事時間も整い、3食きちんと食べることができます。生活リズムを整える方法として、決まった時間に食事をとることです。