高齢者の食事のポイント
公開日:2016年7月25日 06時00分
更新日:2019年8月 1日 14時14分
高齢者の食事の特徴
高齢者は加齢に伴い身体機能が低下してきます。そのため、食事がうまく取れなくなり、食事量が徐々に減り、食生活に影響を及ぼします。また固いものが噛みにくくなるため、柔らかいものを好みます。
加齢に伴う機能低下
味覚が衰える
味覚が衰えると味を感じにくくなるため、濃い味を好むようになります。また美味しさも感じにくくなり、食事がすすまず、食事量も減り、低栄養も招きます。
噛む力が衰える
義歯の不具合や咀嚼(そしゃく:噛むこと)の低下により、固いものや繊維質なものが食べにくくなるため、噛まずに食べられる形状(ペーストやきざみ)や柔らかい食べ物が多くなります。
飲み込む力が弱くなる
唾液の分泌量が減り、食べ物が口の中でまとめられなくなると、上手に飲み込めず誤嚥(誤嚥:口の中の食べ物が、食道ではなく気道や肺に入ること)してしまいます。水やお茶などのサラサラした水分も誤嚥しやすいです。そのため飲み込みやすくするため、食べ物や飲み物にとろみをつけます。
高齢者の食事の形態
病院や高齢者施設などでは、高齢者の食事の形態は咀嚼能力に合わせて、常食、軟菜食、刻み食、ミキサー食、ペースト食、ソフト食、流動食など、食べやすい形で提供しています。
形態により、食材の向き不向きもあります。
高齢者の食事の調理法
高齢者にとってお食事は楽しみの1つでもあります。安全でおいしく食事をすることが大切です。
噛みやすくする工夫
噛みやすくすることで、噛む力や口の中でまとめる力を助けます。
- 肉、野菜類、芋類は一口大の食べやすい大きさに切る
- 噛みにくい肉は叩いたり、皮の部分を取り除くなどして切れ目を入れる
- 野菜は時間をかけて加熱し、歯茎でつぶせるくらいに柔らかくする
- トマトやなすなど野菜の皮は剥き、切れ目を入れる
- ほうれん草や小松菜など葉物野菜は柔らかい葉先を使用し、根菜などは繊維を断ち切る
飲み込みやすくする工夫
飲み込みやすくすることで、食べ物を舌でまとめたり、飲み込む力を助けてくれます。
- 食材は煮崩れるくらい加熱し、舌と上あごでつぶせるくらいに柔らかくする
- 滑らかになるまで裏ごしをする
- ミキサーにかける
また、見た目や味は食欲につながり、唾液の分泌も促すので、本人の嗜好を重視し、季節感のある料理にし、楽しい食卓にします。
高齢者の食事中の姿勢
安全に食事をするためには、姿勢も重要です。食べにくい姿勢では、食事に集中できず、誤嚥を引き起こしやすいです。また、食事をする前に、目が覚めているか、意識状態の確認も必要です。
椅子で食事をするときは、背筋を伸ばして顎を軽く引き、やや前かがみになります。背もたれのある椅子に、深く座り、足は床につけます。テーブルの高さは腕をのせて肘が90度に曲がる程度です。体とテーブルの距離が遠かったり、いすとテーブルの高さがあっていないと姿勢が不安定となり、食べ物がうまく口に運べず、こぼしたり、誤嚥につながります。
ベッドで食事をするときは、背の角度を45~60度以上になるようにし、頭に枕などを置き、やや前かがみになるようにします。また、足がずり落ちないように、クッションを置きます。
仰向けに近い状態は、ベッドと机の距離が離れているため、前かがみになりにくく、顎が上がってしまうため、飲み込みにくくなります。
高齢者の孤食のリスク
「高齢者の孤食の社会的背景および孤食が及ぼす健康影響に関する縦断的検討」(研究代表者:谷 友香子)の研究結果によると、高齢者の孤食により欠食、野菜・果物の低摂取頻度、肥満、低体重、うつ、死亡と関連することが明らかになりました。
さらに、孤食が及ぼす影響は世帯構成(同居または独居)や性別によって異なることを見出しました1)。
孤食とは、1人で食事を摂ることですが、最近では独居でなく、家族と暮らしていても、食事は孤食という方もいます。
毎日1人での食事が続くと調理をする意欲が低下するだけでなく、同じメニューが続くことでの食事の偏りや、食事回数が減るということがあります。何よりも本来食事で大切なことは楽しく食べることですが、その食事の楽しみもなくなってしまいます。
孤食により、徐々に食事量が減り、食事のバランスが崩れてしまい、次第に低栄養状態になってしまいます。孤食による問題は栄養不足により、筋肉量が減っていき、生活の活力の低下を招き、さらに食欲の低下という悪循環に陥ってしまい、結果的に要介護が必要な状態になってしまいます2)。
高齢者の孤食を防ぐために、家族や友人、近隣の人たちを巻き込んで共食を推奨する事や、自治体のコミュニティでレストランを開催することで、共食を進めるなど対策が求められます。