腎不全の診断
公開日:2016年7月25日 12時00分
更新日:2023年8月 1日 11時11分
CKDの診断基準
以下の1、2のいずれか、もしくは両方が3か月以上持続した場合、CKDと診断されます。
- 腎障害を示唆する所見(特に0.15g/gCr以上の蛋白尿(たんぱくにょう)もしくは30mg/gCr以上のアルブミン尿がある)
- 糸球体濾過量(GFR)が60ml/分/1.73m²未満
CKDの重症度分類
CKDの重症度はその原因(C)・腎機能(G)・アルブミン尿もしくは蛋白尿(A)によるCGA分類があります(表)。
原疾患 | 蛋白尿区分 | A1 | A2 | A3 |
---|---|---|---|---|
糖尿病 | 尿アルブミン定量(mg/日) 尿アルブミン/Cr比(mg/gCr) |
正常 | 微量アルブミン尿 | 顕性アルブミン尿 |
糖尿病 | 尿アルブミン定量(mg/日) 尿アルブミン/Cr比(mg/gCr) |
30未満 | 30~299 | 300以上 |
高血圧 腎炎 多発性嚢胞腎 移植腎 不明 その他 |
尿蛋白定量(g/日) 尿蛋白/Cr比(g/gCr) |
正常 | 軽度タンパク尿 | 高度タンパク尿 |
高血圧 腎炎 多発性嚢胞腎 移植腎 不明 その他 |
尿蛋白定量(g/日) 尿蛋白/Cr比(g/gCr) |
0.15未満 | 0.15~0.49 | 0.50以上 |
GFR区分(G1) (ml/分/1.73m²) |
正常または高値 >90 | ステージ1 | ステージ2 | ステージ3 |
GFR区分(G2) (ml/分/1.73m²) |
正常または軽度低下 60~89 | ステージ1 | ステージ2 | ステージ3 |
GFR区分(G3a) (ml/分/1.73m²) |
軽度~中等度低下 45~59 | ステージ2 | ステージ3 | ステージ4 |
GFR区分(G3b) (ml/分/1.73m²) |
中等度~高度低下 30~44 | ステージ3 | ステージ4 | ステージ4 |
GFR区分(G4) (ml/分/1.73m²) |
高度低下 15~29 | ステージ4 | ステージ4 | ステージ4 |
GFR区分(G5) (ml/分/1.73m²) |
末期腎不全(ESKD) <15 | ステージ4 | ステージ4 | ステージ4 |
重症度は原疾患・GFR区分・尿タンパク区分を合わせたステージにより評価する。
CKDの重症度は死亡、末期腎不全、心血管死亡発症のリスクをステージ1のステージを基準に、ステージ2⇒ステージ3⇒ステージ4の順にステージが上昇するほどリスクは上昇する。
腎不全やCKDで行われる検査
尿検査
尿検査は基本の検査になります。尿蛋白は通常(-)(マイナス)か、(±)(プラスマイナス)が正常です。(1+)以上の蛋白がみられると、病気の可能性があるのでさらに細かい検査を行います。その他に1日の蛋白量を見るために、1日分の尿を集める蓄尿検査もあります。
尿潜血は尿の中に血液が混じっていないかを見る検査です。尿潜血は実際に血が混じっていなくても陽性になることがあるので、尿潜血で陽性だった場合には、尿の中の沈殿物を直接顕微鏡で確認して、本当に血が混じっているのか追加検査を行います。
血液検査
尿素窒素(BUN)は蛋白質の代謝物で、通常は腎臓から尿に排出されますが、腎機能が低下すると排出できずに血液中に溜まり増加します。尿素窒素は腎臓疾患以外でも上昇することがあります。
クレアチニン(Cr)は筋肉から出てくる老廃物の1つで、食事などの影響を受けず常に一定量が産生され、腎臓以外から排出されないことから腎機能の測定に用いられています。血液中のクレアチニンが上昇している場合、老廃物が正しく尿に排出されていない可能性があります。また、血中クレアチニン値と年齢・性別を用いてeGFR(推算糸球体濾過量)を算出することもできます。
クレアチニン・クリアランス(CCr)は腎臓、特に糸球体での濾過能力を評価する検査です。血液と尿中のクレアチニンを同時に測定し、計算式を用いて算出します。数値が低いほど腎機能が低下しています。
画像検査
画像検査を行う目的は腎臓の形を確認したり、尿の通り道に異常がないかを見るためです。その他に腎臓に出入りする血管の異常を見つけたり、全身疾患の可能性がある場合は腎臓以外を見る目的もあります。
- 腹部単純レントゲン
- 腹部超音波検査
- 腹部CT(単純・造影)
- 経静脈性腎盂造影:造影剤を点滴や注射で血管に投与し、造影剤が腎臓から尿管に流れていく様子をレントゲンで撮影します
- アイソトープ検査:放射性物質を注射して腎臓を通過する様子を測定します
腎生検
腎生検は腎臓の組織を一部採取し、顕微鏡で腎臓のどの部分に異常があるかを調べる検査です。CKDがあるのに、他の検査で原因が分からない場合に行われます。生検の方法は2つあり、1つは超音波で腎臓の位置を確認しながら、ボールペンの芯ほどの太さの針を腎臓に刺して採取する方法、もう1つは全身麻酔でお腹を切り開いて腎臓を直接見ながらメスで腎臓を切り取る方法です。