腎不全とCKDについて
公開日:2016年7月25日 15時00分
更新日:2019年6月12日 11時01分
腎臓の働き
腎臓は腰に手を当てたときの高さにあり、背中側に左右2個あります。1個の腎臓はおおよそ握りこぶしの大きさです。この腎臓に体中の血液が送り込まれ、老廃物を取り除く濾過(ろか)機能をもったネフロンを通り抜けることで血液がきれいになって体に戻っていきます。腎臓はその他に体の水分を調整したり、血液の酸性アルカリ性を調整したりといった調整機能を持っています。さらに骨を強くするビタミンD、赤血球をつくるホルモン(エリスロポエチン)、血圧を調整するホルモン(レニン)などを分泌しています。
腎不全とは
腎不全とは、腎機能低下した状態、すなわち腎臓の働きが悪くなった状態ことを言います。具体的には正常な時と比較して腎臓の働きが30%以下になった時を腎不全といいます。
腎不全はその経過によって2つに分けられます。1つは数日から数週間で腎不全になる急性腎不全です。もう1つは数年以上かけてゆっくりと腎不全になる慢性腎不全です。急性腎不全は治療により改善する可能性がありますが、慢性腎不全の場合は治療による改善が難しいのが現状です。
CKDとは
CKDはchronic kidney diseaseの頭文字をとったもので、日本語では慢性腎臓病という意味です。CKDは慢性に経過するすべての腎臓病を意味しています。日本では約1330万人のCKD患者がいると考えられています。これは成人の8人に1人であり、決してまれな病気ではありません。特に多い原因は糖尿病や高血圧などの生活習慣病に関連したものや、慢性腎炎です。
CKDの初期には自覚症状が全くないこともあります。症状がないからといって通院を中断したり、指示された生活習慣を守らないと知らないうちに改善できないほど腎臓の状態が悪化することがあるため注意が必要です。
CKDの診断基準
以下の1、2のいずれか、もしくは両方が3か月以上持続した場合、CKDと診断されます。
1.腎障害を示唆する所見(特に0.15g/gCr以上の蛋白尿もしくは30mg/gCr以上のアルブミン尿がある)
腎臓の働きの1つは血液の中から必要なものを体に残し、不要なものを尿として捨てるという機能があります。ところが腎臓の機能が低下すると、体に必要な蛋白やアルブミンが尿に漏れてしまいます。本来は1日分の尿量をすべて集めて、1日に出た蛋白もしくはアルブミンを測定するのが望ましいのですが手間がかかるため、実際の診療では1回の尿で測定できる方法で経過をみることが多いようです。単位のg/gCrはクレアチニン(Cr)の1日の尿中排泄量が1gであることを利用し、尿の中の蛋白やアルブミンをCrの量で割って1日の尿蛋白や尿中アルブミン量を推算しています。
2.糸球体濾過量(GFR)が60ml/分/1.73m²未満
GFRは腎臓を通っていく血液の量を反映しています。腎臓を通る血液の量が減ると体の不要物が取り除きにくくなります。GFRの単位のml/分/1.73m²は大きな人や小さな人を標準の大きさにしたとき(1.73m²は標準的な体表面積です)に、1分間に行われている(分)濾過量(ml)を表しています。
GFRは実際の糸球体濾過量ですが、これを測定するのは難しいため、実際の診療ではeGFR(推算糸球体濾過量)を代用します。eGFRは年齢・性別・血清クレアチニン値から計算できます。
CKDと腎不全の関係
CKDは慢性腎不全の予備軍と考えられます。そのため、適切な健康管理や治療を行う必要があります。CKDはその時期によって治療方針が異なります。CKDは進行してから治療に取り組んでも元の機能を取り戻すことができない不可逆的な疾患です。CKDが進行すれば腎不全になります。末期腎不全状態は命に関わる状態であり、心臓疾患や脳血管障害も起きやすくなります。また、末期腎不全になれば治療には透析や腎移植しかないのが現状で、CKDの人が大切なのは腎不全に近づかないよう健康管理を行うことなのです。