腎不全の原因
公開日:2016年7月25日 13時00分
更新日:2019年2月 1日 21時29分
慢性腎不全の原因
CKDや慢性腎不全の原因は様々です。日本透析学会が2012年に出したデータでは、透析治療を始めた人の原因で最も多いのは糖尿病性腎症で、37.1%を占めています。次いで慢性糸球体腎炎が33.6%、腎硬化症が12.3%となっています。
糖尿病性腎症
糖尿病が原因で起きる腎臓合併症です。糖尿病は血液内の糖分(血糖)が増えた状態です。血管内の血糖が高くなると腎臓に血液を運ぶ血管(輸入細動脈)と腎臓から血液を運び出す血管(輸出細動脈)が拡張します。その結果、腎臓に運ばれる血液量も運び出される血液量は増えますが、実際には輸入細動脈の方がより拡張するため腎臓にはたくさんの血液が流れ込み腎臓内の血圧が上がります。そのことによって腎臓の細胞が障害を受けて腎機能が悪化します。
慢性糸球体腎炎
慢性糸球体腎炎は糸球体の炎症によって、蛋白尿や血尿が1年以上続く病気の総称です。糸球体とは腎臓の中にあり、血液の濾過を担当している部分です。慢性糸球体腎炎の原因は明らかでないものもありますが、免疫学的機序が考えられています。免疫とは体にウイルスなどの病原菌が侵入した際に、その病原菌を追い出す働きです。実際には抗体(こうたい)とよばれる物質を体が作り、その抗体が病原体にくっつくことで病原体を退治しています。ところが病原体を退治するために産生された抗体が糸球体を傷つけて糸球体腎炎を起こしてしまいます。
慢性糸球体腎炎の代表的な疾患は30%以上を占めるIgA腎症です。腎臓の一部を採取して検査を行うと、糸球体内のメサンギウムという場所にIgAという抗体が付着しています。将来的には30%程度が腎不全になるため、無症状であっても経過観察が必要な疾患です。
その他の慢性糸球体腎炎には以下のものがあります。
- 膜性腎症
- 膜性増殖性糸球体腎炎
- 溶連菌感染後急性糸球体腎炎
- 微小変化型ネフローゼ症候群
- 巣状糸球体硬化症
- 急性進行性糸球体腎炎
腎硬化症
腎硬化症は高血圧が原因で腎臓の血管に動脈硬化を起こしたものです。腎臓の血管は硬くなると同時に狭くなり、腎臓への血流が減ります。そのため尿が作られなくなり腎不全になります。
その他の慢性腎不全の原因となる腎疾患
- 多発性嚢胞腎
- 慢性腎盂腎炎
- SLE腎炎
など頻度は低いものの多くの腎疾患があります。
急性腎不全の原因
急性腎不全には全身性疾患によるものや医療行為に伴うものなど多様な原因があります。腎不全の原因がどこに起きているかで、腎前性・腎性・腎後性の3つに分類されます。
腎前性
腎臓に十分な血液量が流れてこない状態です。他の病気などで血圧が低下すると腎臓に流れ込む血液が減り、尿を作れなくなります。腎前性腎不全の原因には脱水・大量出血・心不全などがあります。
腎性
腎臓そのものに原因がある場合は腎性に分類します。急性腎炎や急性間質性腎炎などの腎臓疾患のほかに、手術や抗生剤、抗がん剤や造影剤など医療行為に関連したものもあります。また腎臓内の血管の病気としては腎梗塞、腎動脈血栓などがあります。腎臓に流れる血流が減ると腎臓の細胞に酸素が届きにくくなり、腎臓の細胞が死んでしまいます。特に尿細管と呼ばれる部分の細胞は酸素が少ない状態ですぐに傷害を受けます。その後血流が再開しても尿細管はすぐには回復しません。新しい尿管細胞がきちんと働くまで、1週間程度尿が作られなくなります。
腎後性
尿が腎臓を出た後に原因がある場合を腎後性といいます。尿が作られた後、尿管を通って膀胱にためられ、その後排尿されますが、その通り道に尿の通りを邪魔するものがあった場合、尿はそれ以上先に進めなくなります。原因としては前立腺肥大・尿管結石・膀胱癌・腹腔内や骨盤内の癌による尿路閉塞などがあります。