急性腎炎と慢性腎炎と急速進行性腎炎
公開日:2016年7月20日 10時00分
更新日:2019年2月 8日 17時36分
急性腎炎とは
急性腎炎とは、突然濃い紅茶色(ないし赤ワイン色)の血尿が出て、軽度の腎機能低下と高血圧、むくみなどを伴う病気です。
日本では数が激減していますが、原因は溶血性連鎖球菌の感染(多くはのどや皮膚の炎症)と考えられています。
抗生物質の内服と安静で1ヶ月以内で自然に良くなることが多いようです。
慢性腎炎とは
慢性腎炎とは、たんぱく尿や血尿(多くの場合両方)が持続するもので、一部は腎不全へと進行します。たんぱく尿が多いものほど腎不全への進行の危険性は高くなります。
慢性腎炎のタイプ
慢性腎炎にはいろいろなタイプがあり、最終的には腎生検という検査で正確な診断をつける必要があります。
日本人に最も多いタイプの慢性腎炎は、IgA腎症という腎炎です。これは腎臓の中の糸球体(血管から尿をこし出す装置)という場所にIgAというタンパク質が沈着する病気で、厚生労働省と日本腎臓学会が出した指針では、予後(病気がどのようになってゆくかという経過を表わす医学用語)に関してさらに細かく4つのタイプに分類しています。
慢性腎炎の診断
慢性腎炎の診断は、高血圧の有無、たんぱく尿の程度、年齢、現在の腎機能、腎生検の所見、などをもとに専門医により総合的に判断されます。
このうち、予後不良群では5年以内に、また予後比較的不良群では10年から15年で、透析を必要とするような高度の腎不全になる危険性があるとされています。これらに該当する場合には、腎不全に進行しないようにしっかりした治療が必要です。
慢性腎炎の治療
慢性腎炎の治療法は、副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬を用いた原因療法と、降圧薬や低たんぱく血症などを用いた腎保護療法があります。この他、IgA腎症に対する扁桃摘出などの治療が行われる場合があります。どの治療法を選択するかは、検査結果をもとに腎臓専門医によって判断されます。
ステロイド剤や免疫抑制薬を使用するにあたっては、作用とともに、副作用について十分主治医の説明を聞き、十分理解しておくことが重要です。
急速進行性腎炎とは
急速進行性腎炎とは、腎炎の中でも最も激烈なタイプの腎炎で、治療しなければ数週から数ヶ月であっという間に腎機能が低下して、透析が必要になります。
迅速な診断と適切な治療が予後を左右します。従って、腎機能が日単位あるいは週単位で悪化している場合にはこの病気を疑って、ただちに腎生検を行い、診断を下して治療を開始する必要があります。
急速進行性腎炎の治療
急速進行性腎炎の治療は、多くの場合、副腎皮質ステロイドが大量に使用されます。場合によっては、免疫抑制薬や血液を入れ替える血漿(けっしょう)交換などの治療がなされることがあります。
薬の副作用で病気が重篤になることも多く、治療が大変難しい病気です。特に高齢者では副作用や合併症(特に感染症)に十分注意する必要があります。