脳血管障害の作業療法
公開日:2016年7月25日 17時00分
更新日:2019年5月29日 10時50分
脳血管障害の作業療法は、病棟での生活に不可欠な基本動作として、更衣動作、食事動作、トイレ動作、入浴動作などを介助しながら、身につける援助を行います。
訓練可能な上肢を用いて書字動作訓練を行ったり、アームスリングやコックアップスプリントなどの装具を作成したり、スプーンの柄を太くしたり、リーチャーやボタンフックなどの自助具を作成したり、これらを用いて日常生活動作の向上を図ります。
機能的作業療法
機能的作業療法では、関節可動域の改善、筋力強化、協調性の改善、持久性の獲得という目的のために、単純な動作の繰り返しでなく、患者さんが興味を持てるような作業項目を選択します。
この目的のために、両手で組みながらアクリルプラスチックコーンなどを運び移動させる運動、机上での輪入れの練習をしたり、サンディング、ブロックの移動、ペグボード、ペグさしなどを行います。
応用動作としては、銅板細工、木工細工、皮細工、レーシング、ちぎり絵、折り紙、ペーパーフラワー、手芸、機織りなどの作業も行います。
患側上肢、手指の関節可動域訓練
麻痺した上肢は、肩、肘、手の関節に拘縮を起こしやすいので、初期は、他動的な関節可動域訓練を行い、徐々に自分で動かす随意運動を引き出すために、サンディング、机上ワイピング、組み合わせた両手で輪をポールに入れる作業、棒体操などを行うことにより、関節の動きを改善させます。
ファシリテーション
脳血管障害患者では、痙性により動的姿勢コントロールが障害されて、異常姿勢が固定・悪化すると考えられ、治療として筋トーヌスと運動により正常な感覚を患者さんに与えることにより筋の緊張と運動をコントロールする方法を学習することが、ファシリテーションです。
治療手技は非常に多彩であり、具体的には、肩・肘に随意運動が現れたときに、スケーターボードを用いて腕の重みを除いて動かしたり、両手動作を行うことにより、健側上肢を能動的に使うことを促します。
高次脳機能訓練
高次脳機能の評価としては、知能検査、記憶検査、失行・失認の評価などがあります。
半側空間無視などの障害に対しては、患側から刺激を加えたり、平面および立体図形の模写や日常の生活場面で患側に注意を向ける訓練を行います。
着衣失行では、袖を通すところに色の目印を付けるなどの手がかりを与えて練習します。
高次脳機能訓練の中には、認知訓練・記憶トレーニングも含まれ、具体的には、構成課題、迷路、はめ絵、パズルボックス、塗り絵なども行います。(リンク1参照)
健側上肢の筋力増強訓練
健側上肢の機能を高めるためにも、革細工、木工、金工、絵画などの作業が行われます。麻痺側が利き手である場合は、利き手交換の練習を行います。
心理的作業療法(気晴らし作業療法)
脳血管障害患者は、様々な心因反応を示します。
たとえばうつ状態、麻痺の回復へ固執し障害受容ができない状態、入院に伴い活動性の低下した状態などがあります。このような状態には、本人が興味、関心をもって取り組める趣味活動を勧めます。
具体的には、銅板細工、木工細工、皮細工、レーシング、ちぎり絵、折り紙、ペーパーフラワー、手芸、機織り、陶芸などを行います。
職業前訓練
障害の程度、年齢、社会経済的背景によっては、職場復帰するために訓練する必要があります。退院後には、障害者職業センターや障害者能力開発校などを紹介します。