慢性呼吸不全のリハビリテーション
公開日:2016年7月25日 15時00分
更新日:2019年5月29日 11時09分
慢性呼吸不全の方では、呼吸機能をおもに担う横隔膜の働きがだんだん弱くなり、胸式呼吸による浅い呼吸に頼っていることが多く、呼吸の効率が低下しています。
腹式呼吸の練習の目的は、弱っている横隔膜の働きを回復させ、効率良く呼吸することです。横隔膜をゆっくり大きく動かすことにより、酸素を効率良く取り入れることができ、楽に息をすることができるようになります。(リンク1参照)
呼吸訓練
1. 口すぼめ呼吸
口をすぼめて、"フー"または"ファ"という音をさせながら、ゆっくりと息を吐く。1分間に10回呼吸するのを目標にしてゆっくり吐かせます。
2. 腹式呼吸の練習
全身の力を抜いてあお向けになり、楽な姿勢をとります。片手を胸部にもう一方の手を腹部の中央に置く。口を閉じて、鼻で息を深く吸い込みお腹をできるだけふくらませます。手でお腹を押し上げながら口をすぼめて、ゆっくり息を吐き出します。また、抵抗運動として、お腹の上に本や砂袋などの重たいものを乗せたり、立った状態で肋骨の下に帯を巻き付け、息を吐く時、帯を締めるようにして腹式呼吸を行うこともします。
運動療法
1. 胸郭可動域の拡張
胸の動きが制限されていると、呼吸運動に伴う酸素の消費量を増大させることになり、疲労や息切れを悪化させます。理学療法士(リンク2参照)が手を用いて胸の動きを改善させたり、ストレッチングを行います。
2. 歩行
慢性呼吸不全のリハビリテーションとしては歩くことから始めます。家にこもりがちになりやすいので、積極的に外出するように心掛けます。呼吸と歩調を合わせながら、ゆっくりと息切れしないで歩けるペースをつかみます。3歩進む間に息を吸い、5?6歩進む間に息を吐き出すようにします。階段や坂道を昇る時は、まず立ち止まって息を吸い、息を吐く時に昇るようにします。
3. 腹筋筋力強化
腹筋の筋力を強化すると呼吸しやすくなります。腹筋運動として、あお向けに寝て上体をおこします。ひざ曲げ運動として、あお向けに寝てひざが胸につくように、左右の足を交互に持ち上げます。足や体を起こす時に息を吸い、戻す時に息を吐きます。
4. 座位での体操
座位での体操として、両肩の上げ下げ、首を回す、上体を左右に曲げる、上体を回す、上体を前後に曲げる運動を行います。
5. 全身持久力トレーニング
下肢の運動で、全身持久力を向上させるには、平地歩行、20cmの高さの踏み台昇降、階段昇降があります。"自転車エルゴメータ"や"トレッドミル"を用いて決められた負荷量でトレーニングを行う方法もあります。