慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは
公開日:2016年7月25日 15時00分
更新日:2019年6月20日 17時33分
慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは
慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease)とは、略称COPDとも呼ばれます。主にタバコの煙など、有害物質が含まれる空気を長期間にわたって吸い込むことで発症します。有害物質の刺激によって空気の通り道である気管支や酸素を取り込む働きをする肺胞に炎症が起こり、肺の機能に障害が生じる進行性の疾患です。
肺は呼吸によって酸素を取り込み、二酸化炭素を排出する役割を担っています。空気の通り道となる気管から気管支、細気管支と枝分かれしていき、終末は酸素と二酸化炭素のガス交換を行う肺胞へとつながっています。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)のメカニズムと症状
気管が炎症を起こすと咳や痰などの症状が慢性的にみられるようになります。気管支が狭くなり、肺胞まで炎症が及ぶと、肺胞が酸素を取り込めなくなり、肺胞の壁が壊れていきます。肺胞での酸素交換が障害されることによって呼吸時の空気の出し入れがスムーズに行えなくなり、息切れや喘鳴(ゼイゼイという呼吸音)がみられるようになります。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、肺胞の壁が壊れる、肺胞の壁が厚くなるなどで肺の機能が低下していく肺気腫と、気管支の炎症によって気管支の壁が壊れていく慢性気管支炎とに以前は分類されていましたが、現在は2つの疾患を総称してCOPDと呼ばれています。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の疫学
厚生労働省の調査では、慢性閉塞性肺疾患(COPD)にかかっている方は、平成26年10月時点で26万1000人(男性18万3,000人、女性7万9,000人)1)、平成27年(2015年)の慢性閉塞性肺疾患(COPD)で死亡した人数は、15,749人(男性12,647人、女性3,102人)で、死因の10位となっています。(表1参照)ですが、平成10年の大規模疫学調査では約530万人がCOPD患者と推定されており3)、COPDの診断・治療がされていない患者が多数存在しているとされています。
注
- ( )内の数字は死因順位を示す。
- 男の10位は「肝疾患」で死亡数は9,992、死亡率は16.4である。
- 女の9位は「血管性および詳細不明の認知症」で死亡数は7,955、死亡率は12.4である。
- 女の10位は「アルツハイマー病」で死亡数は7,226、死亡率は11.2である。
- 「結核」は死亡数が1,955、死亡率は1.6で第29位となっている。
- 「熱中症」死亡数が967、死亡率は0.8である。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の予後
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の症状は、慢性的な咳や痰、労作時の息切れなど、日常的に良くみられる症状のために、医療機関にかかることなく過ごし、診断がついた時にはすでに進行していることが多くあります。進行すると少しの動作でも息切れするようになり、在宅酸素療法が必要となったり、全身性の炎症や骨格筋の機能障害(筋力低下や筋萎縮)、骨粗鬆症、栄養障害を起こして寝たきりとなったりすることもあります。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の診断・治療と予防
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の確定診断には、肺活量と1秒率※を測定する呼吸機能検査(スパイロメトリー)が必要であり、胸のレントゲン(X線画像)診断ではわからないこともあります。早期に治療(薬物療法)を開始できれば、症状の増悪を防ぎ、生活の質を保つことができます。
そのためには、早期発見・早期治療はもちろん大切なことですが、発症の多くは喫煙習慣が原因であるため、自分のため、周囲の人のためにも喫煙している方はまず禁煙することが第一です。そして、呼吸筋の働きを保つ運動や発声、バランスのとれた食生活などを継続して行い、COPDを予防するために、肺の生活習慣を整えることが大切です。
- ※1秒率(FEV1%):
- 最初の1秒間でどれくらい息を吐き出すことができるかを測定する呼吸機能検査
参考文献
- FukuchiY,NishimuraM,Ichinose M,etal. COPD in Japan:the Nippon COPD Epidemiology study.Respirology2004;9:458―465.