慢性閉塞性肺疾患(COPD)の診断
公開日:2016年7月25日 12時00分
更新日:2019年2月 1日 19時59分
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の診断基準
問診・診察により、慢性の咳や痰、労作時の息切れ、長期間の喫煙歴や職業上の粉塵暴露歴などの症状があることからCOPDが疑われます。確定診断には呼吸機能検査(スパイロメトリー)が必要となります。画像診断や動脈血ガス分析、血中酸素濃度の測定、血液検査、心電図検査などを行い、喘息や他の気流閉塞を起こす気管支拡張症、うっ血性心不全などの疾患との鑑別を行います。
慢性閉塞性疾患(COPD)で行われる検査
呼吸機能検査(スパイロメトリー)
慢性閉塞性肺疾患(COPD)では気道閉塞により、息を吸えても吐くことが障害されるため、呼気量の制限がみられます。呼吸機能を検査するスパイロメーターという医療機器を用いて検査を行います。
- 努力性肺活量(FVC):
胸いっぱいに大きく息を吸い込んでから(最大吸気)できるだけ速く一気に最後まで息を吐ききって(最大呼気)得られる肺気量です。 - 1秒量(FEV1.0):
最大吸気から最初の1秒の間に息を吐いた時の肺気量です。 - 1秒率(%FEV1.0):
1秒量(FEV1.0)÷努力性肺活量(FVC)で求められる値です。
1秒率(%FEV1.0)が70%未満の場合には閉塞性障害(気道閉塞によって気流制限がみられる喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD))の診断が下されます。喘息ではβ2刺激薬(気管支拡張薬)の吸入によって1秒量の改善がみられますが、COPDでは改善しません。
画像診断
画像診断で慢性閉塞性肺疾患(COPD)の特徴が確認される頃には、症状がすでに進行している場合が多いです。慢性閉塞性肺疾患(COPD)の診断の他にも、気管支喘息や気管支炎、肺結核、うっ血性心不全、肺がんなどとの鑑別の目的で用いられます。
胸部X線検査
進行した慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の胸部レントゲン写真は、息を上手く吐けなくなって、肺に空気が残りやすくなることから、肺が膨張しやすく、横隔膜が通常の位置よりも下がって平らになっています。また、心臓は肺に押されて細長く変形し(滴状心)、横から見た肺の形は樽状(樽状胸)となります。
胸部CT検査
肺胞は、本来、スポンジ状の密な構造をしていますが、慢性閉塞性肺疾患(COPD)で肺胞が破壊され、目が粗い構造に変化します。肺胞が破壊された部分は黒く写るので、肺が全体的に黒く写ります(透過性の亢進)。肺動脈の拡張がみられることもあります。
パルスオキシメーター、動脈血ガス分析
慢性閉塞性肺疾患(COPD)では呼吸不全が起こり、血液中の酸素濃度が低下します。進行すると二酸化炭素濃度の上昇もみられます。血液中の酸素濃度は、パルスオキシメーターという指先に挟む機器を用いて容易に測定することができます。パルスオキシメーターは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の自己管理にもよく使用されています。血液中の二酸化炭素濃度は動脈血を採取し、血液ガス分析によって測定します。
心電図検査、心エコー検査
慢性閉塞性肺疾患(COPD)ではうっ血性心不全や肺高血圧症を合併している場合が多いので、心電図検査も行います。
運動負荷心肺機能検査
トレッドミルや自転車エルゴメーターで運動負荷をかけ、最大酸素摂取量、心拍数や呼吸パターン、換気量などの心肺機能の測定を行い、運動が制限されている原因を評価します。
生活の質(QOL)の評価
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の症状により、どのような動作がどの程度制限されているのか、日常生活に与えている影響を評価します。