慢性閉塞性肺疾患(COPD)の原因
公開日:2016年7月25日 13時00分
更新日:2020年3月 4日 09時28分
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の別名はタバコ病
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の主な原因はタバコの煙で、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の90%以上が喫煙者です。吸っている本人も、近くでタバコの煙を受動喫煙している人も発症率が上がります。
タバコの煙には4,000種類以上の化学物質が含まれており、人体に有害な影響を与える化学物質も200種類以上存在します。タバコの煙は粒子が小さいので肺の奥まで入り込みやすく、特に、ニコチン、タール、一酸化炭素は三大有害物質とも言われており、吸い込むことによって気道や肺が傷つき、炎症を起こしたり、肺胞が破壊されたりする原因となります。タバコの煙は、主流煙よりも副流煙に多く含まれているので、吸っている人よりも、ただ、近くにいたというだけでタバコの煙を無理やり吸わされている人の方が慢性閉塞性肺疾患(COPD)になるリスクが高くなります。喫煙者でなくても、受動喫煙だけでも慢性閉塞性肺疾患(COPD)を発症する場合もあるのです。
一般的には、若い年齢で喫煙を開始した人、喫煙年数(20年以上)が長い人、1日に吸うタバコの本数(1日20本以上)が多い人ほど慢性閉塞性肺疾患(COPD)になるリスクが高いとされており、40代以上の喫煙者に多くみられます。タバコの煙に対する感受性も要因のひとつで、感受性の高い、低いは人によって個人差があるので、40年以上喫煙歴のあるヘビースモーカの人でも慢性閉塞性肺疾患(COPD)にならない人もいます。
喫煙者全体で慢性閉塞性肺疾患(COPD)になる人は15%程度と言われていますが、タバコを辞めない場合、10年後には慢性閉塞性肺疾患(COPD)によって死亡する確率が30%以上増加すると言われています 1)。ダメージを受けた肺の機能は元に戻ることはありませんが、禁煙することで慢性閉塞性肺疾患(COPD)を発症するリスクは軽減でき、すでに慢性閉塞性肺疾患(COPD)を発症している人も今以上に症状が進行することを防ぐことができます(グラフ1参照)2)。
- 1秒量(FEV1)
- 1秒量(FEV1)とは、息を大きく吸ったのち、最初の1秒間で吐き出した息の量のこと
慢性閉塞性肺疾患(COPD)のタバコ以外の原因
- 大気汚染物質(工場の煙、自動車の排気ガス、黄砂などのPM2.5)
- 職業上の粉塵や化学物質(蒸気、煙など)
- 低出生体重児
- 遺伝的要因(感受性の高さ、α1-アンチトリプシン欠乏症※1)
- 加齢
- 呼吸器の感染症
PM2.5などの粒子の細かい大気汚染物質や化学物質は肺胞まで入り込みやすく、蓄積量が多くなると慢性閉塞性肺疾患(COPD)を発症するリスクが高くなります。また、加齢による肺機能の低下や、肺機能が未熟のまま産まれた低出生体重児や小児期に起こった慢性肺疾患、遺伝的な要因も慢性閉塞性肺疾患(COPD)の発生に関与しています。気道の炎症を起こす感染症も慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪因子となります。
- ※1 α1-アンチトリプシン欠乏症:
- 糖タンパクの一種で肺胞の壁が壊されることを防ぐ働きがあるα1-アンチトリプシンが生まれつき少ない疾患で、日本でみられることは稀です。
COPDの原因による発生機序
COPDの発症は、タバコの煙や大気汚染物質などの外的な要因と、外的な刺激物質への感受性や遺伝性などの内的要因とによって気道や肺に炎症が起こります。炎症を起こす細胞や物質(炎症性サイトカイン)の増加、肺胞壁を構成する物質(プロテアーゼ、アンチプロテアーゼ)のバランスの崩れ、抗酸化システムに関与する物質(オキシダント、アンチオキシダント)のバランスの崩れによる酸化ストレス※2の増加、細胞の老化現象(アポトーシス)などの関与により炎症が増強することが言われています。
- ※2 酸化ストレス:
- 体を構成する分子に酸素が結合して酸化することで起こる体への悪影響
出典・引用
- 引用:CHARLES FLETCHER, RICHARD PETO:The natural history of chronic airflow obstruction、British Medical.Journal, 1977, 1, 1645-1648