睡眠のメカニズム
公開日:2019年6月21日 09時45分
更新日:2019年6月21日 09時45分
睡眠は体内時計が密接に関係し、睡眠、覚醒のリズムがつくられています。睡眠のメカニズムについて解説していきます。
睡眠の仕組み、メカニズムについて
睡眠はどのような仕組みによって起こっているのでしょうか。睡眠のシステム、睡眠に密接に関係する体内時計、睡眠を構成するノンレム睡眠とレム睡眠についてみていきましょう。
睡眠欲求と覚醒力
睡眠は睡眠欲求と覚醒力との二つのシステムによって行われています。ヒトは覚醒中、活動を続けていると脳に疲労(熱)が溜まっていきます。脳に溜まった熱を冷やすためには睡眠が必要で、覚醒時間が長くなるほど、睡眠欲求は強くなります。眠ると睡眠欲求は減少していき、必要な時間眠ると睡眠欲求はなくなります。
覚醒時間が長くなるにつれて睡眠欲求は増していくので、睡眠欲求だけでは昼過ぎには起きていられなくなります。そうならないように、睡眠欲求に打ち勝って、日中起きて活動できるようにしているのは覚醒力です。覚醒力は体内時計から起こっており、起床後からだんだんと強くなって、普段就寝する時刻の数時間前に最も強くなります。就寝時刻の1~2時間前になると睡眠と覚醒のリズムの調整に深く関わるメラトニンが分泌され、就寝時刻付近に急に眠気を感じるようになります(図1)。
体内時計と睡眠
脳の視交叉上核に存在する体内時計によって、体温やホルモン分泌などの生体機能が24時間の周期のリズムで動き、睡眠と覚醒の調節をしています(図2)。
脳の温度は、日中活動中は高くなっていますが、夜になると身体から熱が放散されて脳の温度は低下します。夜、寝る前の時間帯には急激に脳が冷えて眠気が強くなります。同じころに睡眠を促すメラトニンが分泌され、入眠を促します。他にもいろいろな生体機能が深い睡眠のために作用します。
朝方になると、脳の温度が上昇し、覚醒作用のある副腎皮質ホルモンが分泌されて自然な目覚めのための準備がされます。概日リズムによって睡眠と覚醒のリズムはもたらされており、体内時計のズレを起こさないことが質の高い睡眠を得ることにつながります。
メラトニンは明るい光を浴びると分泌されないので、夜は部屋を暗くして休み、メラトニンの分泌を妨げないようにしましょう。そして、1日24時間の外界の周期よりも少し長い時間である体内時計の周期を、朝の光を浴びてリセットすることが睡眠、覚醒のリズムを保つために大切です。
ノンレム睡眠とレム睡眠
夜寝ている間、脳はずっと休んでいるわけではなく、脳活動は変化し続けています。睡眠は、ノンレム睡眠とレム睡眠の二つの睡眠で構成されています。
ノンレム睡眠
ノンレム睡眠とは普通の眠りで、ほとんど眼球運動がみられません。ノンレム睡眠は睡眠の深さでN1、N2、N3の3段階に分かれており、一般的にはN1とN2は浅い眠り、N3は深い眠りに分類されています。睡眠の前半に、ノンレム睡眠の深い眠りであるN3の多くが出現します。睡眠欲求が低下する朝方には浅い眠りであるノンレム睡眠のN1とN2が多くなります2)。
ノンレム睡眠では脳活動が休まり、交感神経の活動も休息して心拍数や呼吸数、血圧が低下します。
レム睡眠
レム睡眠は浅い眠りで眼球が良く動き、脳も活動している状態です。脳波を見ると覚醒しているときに近い状態となっています。レム睡眠はノンレム睡眠の間に約90分の周期で繰り返し現れ1)、朝方に近づくにつれて一回ごとのレム睡眠の時間が長くなっていきます。
レム睡眠では脳はある程度活動していますが、筋肉の活動が低下します。脳は比較的起きているのに身体が動かないと感じる金縛りはレム睡眠時に起こります。夢を見るのもレム睡眠時が多く、記憶回路が成長、活発化しています。交感神経の活動は休まるどころか亢進しており、目が覚めて夢で見た内容にドキドキすることがあるのは、レム睡眠時の交感神経の活動が活発になっているからです。
ノンレム睡眠とレム睡眠のサイクル
ノンレム睡眠は、睡眠のサイクルの前半で集中して脳を休養させる睡眠です。一方、レム睡眠は、筋肉が弛緩し、身体を休める睡眠です。起床の時間に近づくにつれてレム睡眠の一回の時間が長く出現し、脳が働いて夢をみることや、血圧や脈拍の変動などの身体の働きもみられ、覚醒するための準備をしている睡眠とも言われています。ノンレム睡眠とレム睡眠で構成されたサイクルは一晩の睡眠で3~5周期繰り返されます2)。