質の良い睡眠と効果
公開日:2019年6月21日 09時50分
更新日:2019年6月21日 09時50分
質の良い睡眠はからだとこころの健康をつくります。質の良い睡眠と健康への効果、実践方法について解説いたします。
睡眠の質の評価
睡眠の質の評価としては、起床後に自分の睡眠を振り返る主観的な評価方法と、自分以外の他人からの評価や脳波などを計測する客観的な評価方法とがあります。
しかし、客観的に評価した脳波などのデータが正常範囲であっても、本人自身の睡眠に対する満足度が低いなど、主観的評価と客観的評価が乖離する場合もあり、定量的に完璧な評価を求めることは難しいとされています。
また、夜間の睡眠と日中の覚醒は相互に影響しあっているため、熟睡感や寝心地、目覚め感などの睡眠の満足度のみを振り返った評価だけではなく、日中の生活の満足度や概日リズム※1の状態など、多面的な評価が必要であることが言われています1)。
- ※1 概日リズム:
- 概日リズムとは、地球の自転による約24時間の昼夜変動に同調して、体温やホルモン分泌などの身体の基本的な機能が周期的に変動するリズムのこと2)。
質の良い睡眠とは
質の良い睡眠とはどのような睡眠かを厚生労働省の資料で示されている睡眠の質の評価指標1)から考えていきましょう。
- 規則正しい睡眠、覚醒のリズムが保たれていて、昼夜のメリハリがはっきりとしている
- 必要な睡眠時間がとれており、日中に眠気や居眠りすることがなく、良好な心身の状態で過ごせる
- 途中で覚醒することが少なく、安定した睡眠が得られる
- 朝は気持ちよくすっきりと目覚める
- 目覚めてからスムーズに行動できる
- 寝床に就いてから、過度に時間をかけすぎずに入眠できる
- 睡眠で熟眠感が得られる
- 日中、過度の疲労感がなく満足度が得られる
質の良い睡眠の健康への効果
睡眠はからだとこころの回復を行う働きがあり、食事や運動、喫煙、飲酒などの生活習慣と同じように健康に深く関わっています3)。
質の良い睡眠をとると、生活のリズムが整いやすくなり、体内のホルモンのバランスも保たれやすくなるので、肥満や高血圧、耐糖能障害、循環器疾患、メタボリックシンドロームといった生活習慣病の予防につながります。抑うつや不安などのこころの不健康も予防します3)。
質の良い睡眠が得られると日中の状態が良くなり、活動的に過ごすことができます。日中の活動的な生活がまた、良質な睡眠をもたらし、からだとこころを健康にします。
質の良い睡眠の実践方法
質の良い睡眠のためには以下のことを実践しましょう。
規則正しい生活
睡眠も生活習慣のひとつであり、質の良い睡眠を得るためには、規則正しい生活を送ることが大切です。
運動習慣を持つ
速歩や軽いランニングなどの運動習慣を持つことで寝つきがよくなり、深い睡眠が得られるようになります。運動は、寝る3時間くらい前の夕方から夜にかけて行うと、一時的に上がった脳の温度が寝床に入る時に下がってスムーズな睡眠が得られやすくなります。寝る直前の激しい運動は身体が興奮して眠れなくなるので避けましょう。
寝る2~3時間前の入浴
入浴は体温を一時的に上げるので運動と同じように寝つきを良くし、深い睡眠を得る効果があります。38度のぬるま湯では25~30分の入浴、42度の熱めのお湯では5分程度の入浴、または約40度のお湯で半身浴をするのがおすすめです。体調や好みに合わせた入浴スタイルを選びましょう。
朝、起床後に光を浴びる
朝、起きてすぐに太陽の光を浴びると、24時間よりも長い周期の体内時計のずれをリセットすることができます。夜は家の照明の光でも浴びると体内時計が遅れてしまいます。夜の照明はひかえめにして、朝起きたらカーテンを開けて自然の光を浴びましょう。
食生活
朝食はしっかりとって、日中に活動するためのエネルギーを補給しましょう。寝る前に食事をとると消化活動で睡眠が妨げられるので控えて、規則正しい食生活を送りましょう。寝る前のカフェイン摂取や喫煙は覚醒作用があり、アルコール摂取は眠りが浅くなるのでお勧めできません。
昼寝を有効に利用する
午後に眠気がある場合には15分程度の昼寝をすることで夜によく眠れるようになることがあります。高齢者の場合は30分程度の昼寝がよいとされています4)。
室内環境を整える
室内の温度、湿度は季節に応じて適切に保たれていること、静かで暗い環境が質の良い睡眠をもたらします。寝床の中の温度は33℃前後、湿度は50%前後、睡眠を邪魔しない光と音の刺激の程度の環境を整えましょう。
よく眠れる寝具を選ぶ
深い眠りを保つために身体は発汗しているので、吸湿、放湿性がよく、保温性の良い寝具を選びましょう。敷布団やマットは適度に硬く、身体が沈み込みすぎないもの、掛布団は身体にフィットしやすく軽いものを選びましょう。枕は首や肩への負担が少ない自分にあった硬さ、高さで安定感のあるものがよいでしょう5)。
睡眠のセルフチェック
睡眠を評価する方法はいくつかありますが、睡眠障害の可能性や睡眠に問題がないか、朝型夜型傾向、平日と休日の睡眠・起床リズムのずれを自分でチェックできるウェブサイト(ホームページ)があります。睡眠障害の有無が簡易的に判定でき、睡眠障害がある場合には詳細診断が可能なウェブサイト(ホームページ)の案内を受けることができ、診療を受ける際に、診断結果を持参して役立てることも可能です。よりよい睡眠を得るためには、自分の睡眠に目を向けることが大切です。自分の睡眠について知るきっかけとして活用してみるのもよいでしょう(リンク1)。