健康づくりのための睡眠指針
公開日:2019年6月21日 09時55分
更新日:2022年8月25日 17時23分
睡眠は心身の回復を図る働きがあり、毎日の健康を保つための大切な時間です。厚生労働省で示されている健康づくりのための睡眠指針についてみていきましょう。
「健康づくりのための睡眠指針2014」とは
厚生労働省の健康日本21(第2次)では、生活習慣病や生活習慣病につながる生活習慣の課題として、「栄養・食生活、身体活動と運動、休養・こころの健康づくり、たばこ、アルコール、歯の健康、糖尿病、循環器病、がん」の9分野の健康指針が示されています。
睡眠は、休養・こころの健康づくりの中心課題として平成15年(2003年)に、「健康づくりのための睡眠指針~快適な睡眠のための7箇条~」が作られました。平成26年(2014年)には、睡眠に関する科学的根拠をふまえ、具体的な生活に活かせるようにライフステージ・ライフスタイル別の記載と、生活習慣病やこころの健康に関する記載の充実を図って改訂された「健康づくりのための睡眠指針2014~睡眠12箇条~」が発表されました1)2)。
睡眠は、こころと身体の回復をはかる時間であり、睡眠の問題が生じると心身の健康が損なわれます。「健康づくりのための睡眠指針2014~睡眠12箇条~」では、良い睡眠のための生活習慣・環境や睡眠不足・睡眠障害の予防などについて、睡眠12箇条としてまとめられています2)3)。
健康づくりのための睡眠指針2014~睡眠12箇条~
- 良い睡眠で、からだもこころも健康に。
- 適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。
- 良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。
- 睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。
- 年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を。
- 良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。
- 若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。
- 勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。
- 熟年世代は朝晩メリハリ、ひるまに適度な運動で良い睡眠。
- 眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。
- いつもと違う睡眠には、要注意。
- 眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。
健康づくりのための睡眠指針2014 睡眠12箇条の解説
1.良い睡眠で、からだもこころも健康に。
睡眠は心身の疲労を回復する働きがあり睡眠時間の不足や睡眠の質の悪化は生活習慣病のリスク、こころの病、事故につながります。良い睡眠で身体、こころの健康づくりと事故防止を目指しましょう。
2.適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。
適度な運動は入眠を促し、朝食をしっかり摂ると朝の目覚めが促されます。適度な運動としっかりと朝食をとる生活習慣を身につけ、睡眠(ねむり)と覚醒(めざめ)のメリハリをつけましょう。
寝る前の飲酒や喫煙は眠りが浅くなり、睡眠の質を悪化させます。生活習慣病予防のためにも避けましょう。寝る前3~4時間以内のカフェイン摂取も寝つきを悪くし、眠りを浅くするので控えた方がよいでしょう。
3.良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。
睡眠不足や不眠は生活習慣病のリスクを高めます。睡眠時無呼吸症候群は生活習慣病の発症の原因となるので、睡眠時無呼吸症候群の予防のためにも肥満にならないように気をつけましょう。
4.睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。
眠れない、寝ても疲れがとれない場合はこころのSOSの場合があります。日中も心や身体の不調でつらい場合はうつ病の可能性もあります。
5.年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を。
年をとるにつれ、睡眠時間は徐々に短くなります。必要な睡眠時間は人それぞれです。日中に眠気で困らない程度の自然な睡眠をとることが一番です。
6.良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。
スムーズな入眠を得るためには、自分に合ったリラックス方法をみつけましょう。寝室や寝床の中の温度や湿度は心地良いと感じる程度に調節し、照明は明るすぎず不安を感じない程度の暗さにしましょう。
7.若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。
休日の朝、遅くまで寝ることや夜更かしをすると、体内時計がずれて夜型生活が促進されます。光の刺激は入眠を妨げるので、夜、布団に入ったらゲームやスマホの画面は見ないようにしましょう。朝起きたら光を浴びて体内時計をリセットし、夜のスムーズな入眠に備えましょう。
8.勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。
睡眠不足は注意力や集中力を低下させます。注意力や集中力の低下は、作業効率を悪くして事故や人為的ミスへとつながります。睡眠不足は寝だめでは解消できません。睡眠不足は蓄積すると回復までに時間もかかります。日中に眠気を感じるようであれば睡眠不足のサインです。午後に15分程度の短い昼寝をして作業効率の改善を図りましょう。
9.熟年世代は朝晩メリハリ、ひるまに適度な運動で良い睡眠。
年齢によって睡眠時間や睡眠パターンは異なり、高齢になると必要な睡眠時間は少なくなります。必要な睡眠時間を大幅に超えて寝すぎると、熟睡感が減ってしまいます。年齢相応の適切な睡眠時間をとれるように就寝・起床時刻を見直し、日中の適度な運動で昼夜のメリハリをつけて良い睡眠につなげましょう。
10.眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。
就寝時刻にこだわりすぎて眠たくないのに眠ろうとすると、かえって目が冴えて眠れなくなります。眠れないときは一旦寝床を出てリラックスし、眠たくなってから寝床に就きましょう。眠りが浅い場合は、寝床で過ごす時間が長すぎる可能性があります。積極的に遅寝・早起きをして適切な睡眠時間を調節しましょう。
11.いつもと違う睡眠には、要注意。
睡眠中の激しいいびきや呼吸停止、就寝時の足のむずむず感や熱感、熟睡中の手足のピクつきは、睡眠時無呼吸症候群、レストレスレッグス症候群、周期性四肢運動障害などの睡眠障害の可能性があります。不眠や日中の眠気・居眠りがある場合は、うつ病やナルコレプシーの場合もあります。睡眠での困りごとがある場合には専門家に相談しましょう。
12. 眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。
眠れない、熟睡できない、寝ても日中の眠気が強いなどの睡眠の問題が続き、生活習慣の改善や環境の工夫だけでは解決しない場合には早めに専門家に相談しましょう。眠れない気持ちを相談し、助言を受けることで気持ちが楽になることや、改善の手立てが見つかる場合もあります。身体やこころの病気があり、専門的な治療が必要であることもあります。早めに相談し、適切な検査を受けて対策をとることが大切です。治療で服薬が必要な場合は、医師の指示に従って用法・用量を守って使用しましょう。