再考─住民活力による健康長寿・幸福長寿のまちづくり─
公開月:2023年4月
飯島 勝矢 (いいじま かつや)
東京大学高齢社会総合研究機構機構長
東京大学未来ビジョン研究センター教授
わが国は、2020年には100歳以上の高齢者が8万人を超え、さらに2025年には高齢化率が30%を超えることが予想されている。また、新型コロナウイルス流行がもたらした水面下の地域社会課題の露呈も考慮せざるを得ない。すなわち、気軽に地域で集うことができ、同じ時間を共有する。その中で、住民一人ひとりが支える側、支えられる側として多様な生きがいや幸福感を実感できる地域社会を構築したい。
生きがいを持った人生を送りたいわけだが、この「生きがい」という言葉は、言い換えれば「生きるはりあい。生きていてよかったと思えるようなこと。生きる価値や意味を与えるもの。生きていることに対しての充実感や達成感、満足感といった自分自身に見いだせる肯定的な感情」などと定義されている。特に、生きがいを感じることのできる最たるものが、地域貢献活動を通して地域の担い手側(支え手側)になっている時であろう。
今後の生涯現役社会における社会参加・就業のあり方とは、どのようなものなのか。高齢者自身が退職前の段階から自らのライフデザインを考え、可能ならば高齢者自身が地域交流の底上げができる形で、自分の希望に合った地域貢献活動や就業に出会うことが望ましい。そこには本人のマインドリセットだけではなく、職業能力に関する自己評価の見直しも必要となってくることから、これらを後押しする地域での取り組み、およびそのプラットフォームも求められる。
すなわち、生涯現役社会をさらに追い求めるためには、個々人のさらなる前向きな考え方・価値観の転換に加え、それを上手く加速できるような地域コミュニティ側の変革も必須であり、ある意味では一対である。わが国の地域コミュニティにおける将来像として、ICT、デジタル化が基盤のSociety5.0を見据えながら、「高齢住民が自分たちのまちを守る・創る」という原点の考えも包含し、持続可能な次世代型まちづくりを構築していかなければならない。
本号において、「高齢者のQOL・生きがい・健康・活力のエンパワメント」という主課題を掲げて、長生きを喜べる長寿社会の実現をめざすために特集を組んだ。最先端の取り組みを学びながら、今まで以上に地域とのつながりを通して生きがいのある高齢者が増えていくことを願ってやまない。
筆者
- 飯島 勝矢(いいじま かつや)
- 東京大学高齢社会総合研究機構機構長
東京大学未来ビジョン研究センター教授 - 略歴
- 1990年:東京慈恵会医科大学卒業、千葉大学医学部附属病院循環器内科入局、1997年:東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座助手・同講師、2002年:米国スタンフォード大学医学部研究員、2005年:東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座講師、2011年:東京大学高齢社会総合研究機構准教授、2016年:東京大学高齢社会総合研究機構教授、2020年より現職
- 専門分野
- 老年医学、高齢者医療、総合老年学(ジェロントロジー)
- 過去の掲載記事
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