安心、安全で快適、心豊かな長寿社会創成に寄与する長寿科学
人類は長い歴史の中で、コミュニティを作り、お互いの生活の向上を獲得、安全など様々の目的遂行に努力、見事に実現してきました。
その背景には、人間のすばらしい英知による科学、技術の発展、活用、絶えざる努力など種々の要因が働いている。その総合的結果として今日の輝かしい繁栄が得られ、われわれはその恩恵の中に生きています。そうした過程の中で人類の長年の夢であった長寿を実現、グローバル化しているが、中でもわが国では、平均寿命、健康寿命など世界でもトップレベルの座を占め、関心は一段と高まっています。
今や人生90年時代となり、超エリート老人が増えつつある状況で、センテナリアン(百寿者)も急増しており、人生100年(上寿)時代の到来も目前に迫りつつあります。一方、高齢化には、人体心身諸機能の低下は生物学的に必然であり、さらに高齢者特有の疾患の発生と共に自立不全に陥ることも避けられません。また、介護など大きな課題がのしかかっています。
一方では、長寿化と共に家族制度の崩壊、少子化など長寿社会を支えていくためには逆行する種々の現象が台頭してきました。したがって、高齢者には経済、健康、孤独の側面から生ずる3つの大きな不安要因があるとされています。長寿社会に随伴するこれらの難題にいかに対応するのか、さらに最近では、生きる意義、目標、生きがいなど人間にとって最も基本的な課題がクローズアップしてきました。様々な問題を抱えた長寿社会、コミュニティのあり方をどうすればよいのか、どうしたら安心で、快適な生活を享受し、心豊かな理想的な長寿社会を構築できるのか、それには社会全体とそれを構成する各個人レベルの両面からのアプローチが必要とされます。
また、以下のようにいくつかのこと、ことに種々の支援体制の充実が必要です。
- 高齢者の生きる力、自由に生きる自立する力がまず基本
- 年金や種々の社会福祉制度など経済的側面からの支援体制
- 医療、介護面で高齢者にやさしい支援システム
- 社会、環境面で高齢者生活にふさわしく、楽しみを感じることができる環境作り
- 高齢者をサポートする地域コミュニティ活動
- 高齢者を中心とした活性化された行政施策
これら多くの課題を支え、遂行するためには、関連する各種科学、さらにそれに連携する諸科学、技術など実に膨大な領域からなる総合的科学すなわち長寿科学の向上を遂行、振興が要求されます。
これらの点からすれば、長寿科学は多彩な分野からなるビッグサイエンスであり、これまでにない全く新しい学際的科学といえます。その内容は、純然たる基礎的なものから、社会全般に係る応用科学に至るまで多岐にわたり、人文科学、自然科学的両面からのバランスのとれた科学的展開が期待されます。安全、安心で、住み易く、心豊かな長寿社会の創生と確立の基盤として長寿科学の意義は極めて重大です。