筋力トレーニングの効果と方法
公開日:2016年7月25日 09時00分
更新日:2019年8月14日 14時02分
筋力トレーニング(筋トレ)とは
筋力は、筋肉に一定の負荷をかけることで維持・向上します。筋力トレーニングには、自分の体重だけで行う「自重トレーニング」、バーベルやダンベルを使った「フリーウエイトトレーニング」、板状の重りや空気抵抗を用いた「マシントレーニング」など様々な負荷のかけ方があります。
筋力トレーニング(筋トレ)の目的
筋力トレーニング(筋トレ)は、筋力を向上させることを目的に行われます。トレーニングの負荷や回数、トレーニングの頻度を調整することで筋力だけでなく、筋持久力、筋パワーを向上させることができます。
筋力を高めることで、以下の効果があります。
- 日常生活がより楽に行えるようになること(階段の昇降や買い物袋の持ち運びなど)。
- 慢性疾患を予防、改善すること(骨粗鬆症、2型糖尿病、肥満など)。
そのため、筋力トレーニング(筋トレ)は、若者が行うイメージがありますが、その重要性はむしろ高齢者にあるといえます1)。
筋力トレーニング(筋トレ)の種類
筋力トレーニング(筋トレ)は、筋が短縮しながら力を発揮する「短縮性筋活動(収縮)」と、筋が負荷によって受動的に伸長しながらも力を発揮する「伸張性筋活動(収縮)」の2つの活動(収縮)形態があります。
図のような、上腕二頭筋を鍛える種目のアームカールを例に挙げると、ダンベルを巻き上げるような動作のときに短縮性筋活動によって力が発揮され(真ん中図)、巻き上げたダンベルを重さに耐えながらゆっくりとおろす動作のときに伸張性筋活動によって力が発揮(右図)されます。
筋力トレーニング(筋トレ)は、受動的に力を発揮させられる伸張性筋活動の方が筋力向上に効果があるといわれます。筋力トレーニング(筋トレ)を行う際は、伸張性筋活動の動作時は負荷に耐えながらゆっくりと動作をコントロールすることがポイントになります。
一方、関節が動かないようにある角度で固定し、筋の長さを変えない状態で筋収縮を行う方法(左図)が等尺性筋活動=アイソメトリックトレーニングです。胸の前で両手を押し合う、引き合うという動作もアイソメトリックトレーニングです。アイソメトリックトレーニングは必ずしも道具を必要とせず、関節の動きが最小限であるため関節への負担が軽く怪我の危険性が低い方法です。そのため、関節の強さが十分でない子どもや中高齢者に適しているといえます。
一方で、トレーニングを行う関節角度でしか筋力を増強できないことや、運動中に血流が止まり血圧上昇につながるため高血圧の人には注意が必要といったデメリットもあります。いろいろな活動場面に応用できるように、バランス良く複数の筋力発揮の方法を取り入れることが大切です。
等尺性筋活動(等尺性筋収縮)
関節を動かさずに筋の長さが変わらずに力を発揮する方法。 アームカールの場合、関節の角度を動かさずダンベルを持ち続けます。
短縮性筋活動(短縮性筋収縮)
筋が短く収縮しながら力を発揮する方法です。 アームカールの場合、肘を曲げながらダンベルを持ち上げます。
伸張性筋活動(伸張性筋収縮)
筋が強制的に伸ばされながら力を発揮する方法です。 アームカールの場合、肘を伸ばしながらダンベルを下ろしていきます。
筋力トレーニング(筋トレ)の注意点
呼吸を止めない
筋力を発揮する際は、息を止めて下腹部に力をいれる怒責(どせき)が起こりやすくなります。確かに怒責をした方がより大きな力は発揮しやすくなりますが、怒責を行うことで血圧が一気に上昇してしまいます。中高齢者だけでなく、大きな負荷で筋力トレーニング(筋トレ)をする際にはできる限り身体に負担をかけないように呼吸を続けることが大切です。
無理しない
筋力トレーニング(筋トレ)の中でダンベルやバーベルなどを使う「フリーウェイトトレーニング」を行う際は、筋力測定や1RMテスト※1などを行い自分の体力・筋力に合った負荷を把握することが必要です。しかし、テストをする環境がない場合は、少しずつ負荷を上げながら調整していきます。ここですぐに高い負荷をかけてトレーニングを行おうとすると、フォームが崩れ、転倒などの事故が起き怪我をしやすくなります。筋力トレーニング(筋トレ)は無理せず、自分に合った負荷で行うことが大切です。
- ※1RMテスト:
- RMとはRepetition Maximumの略で、設定した負荷を何回繰り返しできるかを表します。たとえば、アームカールを5kgの負荷で10回行ったときは、5kgを10rep(10レップ)という言い方になります。1RMテストとは、1repの最大重量を測定します。
超回復のため間隔をあける
筋力トレーニング(筋トレ)では筋線維が損傷を受けます。そのため、筋力トレーニング(筋トレ)で同じ筋群を鍛える場合は48時間から72時間の間隔をあけて筋を回復させる必要があります。筋を十分に回復させることで、前よりも太く強い筋に変わっていきます。これを超回復といいます。しかし、回復させずに筋トレを繰り返し行うとオーバートレーニングに陥り、筋力トレーニング(筋トレ)をすることで逆に筋力低下を招いてしまいます。
筋力トレーニング(筋トレ)はどこでできるか
ダンベル等の器具を使わない自重トレーニングの場合は、自宅や公園など場所を選ばずに行う事ができます。たとえば、カーフレイズ※2は、電車の中や、料理などの家事をする際、立っている場面ならいつでも行うことができます。
また、フィットネスジムや、トレーニングルームを備えた体育施設でも自由に筋力トレーニングを行うことができます。施設によって置かれているマシンが異なったり、フリーウェイトコーナーがない場合もあります。自分の筋力トレーニング方法に適した場所を選ぶことが筋力トレーニングを続けるためには大切です。
- ※2 カーフレイズ:
- カーフレイズとは、腓腹筋:ふくらはぎ(足の膝の下の後ろ側)の筋力向上を目的とした筋力トレーニングの種目の一つです。背筋を伸ばし、踵をゆっくりと上げ下げすることでふくらはぎの筋を収縮させます。
参考文献
- ACSM(アメリカスポーツ医学会) 運動処方の指針 運動負荷試験と運動プログラム 原書第8版 南江堂 2013