インナーマッスルの鍛え方
公開日:2016年7月24日 08時00分
更新日:2019年2月18日 13時14分
インナーマッスルを鍛えることで得られる効果
インナーマッスルを鍛えるエクササイズとして有名なのがピラティスです。ピラティスは、しなやかでスムーズな動作とゆがみのない正しい姿勢をつくり、内臓を本来の位置に戻して機能を促すことを目的としています。もともとはベッド上で行えるリハビリとして考案され、今ではリハビリやトレーニングなど多方面でその考え方が取り入れられています。
体幹深層筋群(腹横筋、多裂筋、骨盤底筋群)を鍛えることで姿勢保持の向上、腰殿部痛の軽減が期待できる1)ともあり、脊柱変形による痛みに対しての運動療法や腰痛予防、スポーツ選手のパフォーマンス向上の目的でインナーマッスルの強化が行われることもあります。
姿勢や動作、歩行時の安定性向上にはアウターマッスルのパワーとともにインナーマッスルの支える力も必要です。足を上に持ち上げる作用のあるインナーマッスルの一つである大腰筋(だいようきん)が萎縮すると、足が上がりにくくなり、すり足歩行になるとも言われています。インナーマッスルを意識したトレーニングやエクササイズの方法はいろいろありますが、ここでは加齢とともに衰えやすい下肢と体幹の筋肉のインナーマッスルのトレーニングや体操について説明していきます。
インナーマッスルの鍛え方
体幹筋のインナーマッスルを使うことを意識するトレーニングとしてドローイン、多裂筋を鍛えるバードドッグ、骨盤低筋群を鍛える体操、大腰筋を鍛える体操をみていきましょう。
体幹のインナーマッスルを使うドローイン
息を強制的に吐き、お腹を凹(へこ)ませて腹圧を高めます。お腹を凹ませた状態で呼吸しながらその状態をキープするのがドローインです。ドローイン時にお腹に軽く両方の手のひらを当てて、腹圧の高まりを確認してみましょう。
初めは両ひざを立てて仰向けに寝た姿勢から行うとお腹を凹ませる感覚がわかりやすくなります。お腹を凹ませる際に床に背中と腰を押し付けるように意識してみましょう。腰は床との間に空間ができないように(反らないよう)します(図1)。
仰向けの姿勢が慣れてきたら、座った状態や立った状態でもドローインを行ってみましょう。腹圧を高めてインナーマッスルを使う姿勢をキープできるようになると、姿勢もよくなり、肩や腰に余計な力が入らずに長時間安定した姿勢をキープできるようになります。30秒キープすることを目指して行ってみましょう。
ドローインを行うことによって普段は感じにくい体幹のインナーマッスルの働きを意識することができます。インナーマッスルの働きを促すことで脊柱の安定性が高まり、腰痛の軽減が期待できることも言われています。
多裂筋を鍛えるバードドッグ
多裂筋は脊柱起立筋の深層に位置する背中の深層筋です。脊柱の骨と骨の安定性を高めて姿勢の安定に働いています。多裂筋のトレーニングであるバードドッグは四つ這いバランスと呼ばれることもあります。
四つ這い位をとり、左手と右足を上げた状態で10秒間キープします。次に右手と左足を上げた状態で10秒間キープします。身体の軸がぶれないように姿勢をキープできることを目指します。どちらか一方が苦手なこともあると思います。どちらも同じように姿勢を保持できることを目標に身体の軸を整えていきましょう(図2)。
骨盤底筋群を鍛える体操
骨盤の底にハンモック状に位置する骨盤底筋群が緩むと尿漏れや便漏れ、内臓の下垂によって内臓の働きの低下などにつながります。特に女性は加齢やホルモンバランスの変化、妊娠・出産、肥満や便秘などの要因によって骨盤底筋群が緩みやすく、くしゃみや咳をしたとき、ジャンプをしたときなど、腹圧がかかった際に尿が漏れてしまうことがあります。
骨盤底筋群を意識するには肛門と膣(睾丸)を締め、陰部を上に引き上げるように力を入れます。仰向けや四つ這い位、前腕をついた四つ這い(肘這い)、立って両手を机についた姿勢、椅子に座った姿勢などで行うことができます。力を入れる感覚がつかみやすい姿勢で力を入れて10秒間キープしてゆるめることを行ってみましょう(図3)。
大腰筋を鍛える体操
足を上にあげる作用を持つ大腰筋が萎縮すると歩行能力が低下に関連2)することが言われています。大腰筋のトレーニングとして椅子スクワットと椅子もも上げ、片足上げの3つのトレーニングを説明します。それぞれ10回ずつ行ってみましょう。
机を使ったスクワット
机を使ったスクワットは、立って机の天板に両手を置き、腰を落として再び立ち上がります。膝が足先より前に出ないように行います(図4)。
椅子もも上げ
椅子もも上げは、椅子に座った状態で、両手で軽く座面を押さえて片足ずつ太ももの裏が椅子から離れるように上に持ち上げます。足を上げる際は身体をややかがめて、お腹に力が入っていることを確認しながらゆっくりと行います(図5)。
片足上げ
片足上げは、立って椅子の背や机を手で軽く持ち、足を上方にあげます。左足も同じようにあげます(図6)。
いずれの運動も疾患や痛みなどを抱えている場合にはあらかじめ主治医に相談し、転倒のないように注意して行いましょう。
参考文献
- 高齢者と慢性運動器痛(3)骨粗鬆症・脊柱変形による腰背部痛 東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座整形外科学分野 准教授 小澤浩司 高齢者の感覚障害:慢性疼痛を中心に 公益財団法人長寿科学振興財団 P101