禁煙の効果と禁煙方法
公開日:2016年7月25日 03時00分
更新日:2022年4月15日 12時02分
タバコとは
タバコは、日本及び世界で古く昔から嗜好品として愛用されてきました1)。タバコの煙には一酸化炭素を始め、ニコチン、タールなど、様々な有毒な物質が含まれています。また、タバコの煙にはタバコを吸う人が直接吸い込む「主流煙」と、タバコを吸っている人が出している煙を、タバコを吸っていない人が吸ってしまう「副流煙」があり、副流煙の方が、より多くの有害成分を含んでいるとされています2)。
タバコは、我々がよく目にする紙巻きたばこ、シガレットと呼ばれるもの以外にも、パイプやキセル、水パイプタバコ、噛みタバコ、嗅ぎタバコなど、さまざまな種類があり、タバコの種類によっても身体へ及ぼす影響は異なるといわれています。
喫煙率の動向
平成27年の国民健康・栄養調査によると、習慣的に喫煙している人(1か月間に毎日又は時々たばこを吸っている人)の割合は、男性が30.1%、女性が7.9%でした。経年的にみると、男女ともに喫煙率は減少してきていますが、諸外国の中ではきわめて高い数字です。男性では30代、女性では40代の喫煙率が高い傾向にあります。
さらに、この中で1日21本以上喫煙をしている者は男性で12.4%、女性で2%となっています(グラフ、表1)。
総数 | 20歳代 | 30歳代 | 40歳代 | 50歳代 | 60歳代 | 70歳代 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
男性 | 12.4 | 1.3 | 7.7 | 12.5 | 16.1 | 19.6 | 8.1 |
女性 | 2.0 | 0 | 0 | 0 | 3.1 | 5.8 | 0 |
また、いわゆる受動喫煙の状況を見てみると、41.4%が飲食店において受動喫煙をしているとしており、33.4%が遊技場、30.9%が職場という結果が出ています。
タバコの身体への影響
タバコは、ほぼすべての臓器へ悪影響を及ぼすことが分かっています。自分自身の喫煙習慣だけではなく、副流煙を吸っている人たちでも、病気のリスクは増加します。タバコによる身体への影響や、リスクとなる主な病気は以下の通りです(表2)。
疾患名 | 発症部位および影響 |
---|---|
がん | 膀胱がん、子宮頸部がん、食道がん、腎臓がん、喉頭がん、口腔がん、肺がん、膵臓がん、胃がん、白血病 |
循環器疾患 | 腹部大動脈瘤、動脈硬化、脳血管疾患、冠状動脈疾患 |
呼吸器疾患 | 慢性閉塞性肺疾患、肺炎、小児および青年期の呼吸器への影響(肺機能、呼吸器症状、喘息症状)、成人の呼吸器への影響(肺機能)、その他(呼吸器症状) |
生殖器における疾患 | 生殖機能低下、妊娠合併症、胎児死亡、死産、低出生体重児 |
その他 | 白内障、大腿頚部骨折、低骨密度、消化性潰瘍、健康状態の減弱や有病 |
また、低タール、低ニコチンのタバコを選択すれば良いと考える方もいますが、これによる明らかな健康へのメリット等については、現在分かっていません。
タバコと生活習慣病
タバコによる生活習慣病のリスクはさまざまな報告があります。特にがんに関しては、タバコに含まれる有害物質が発がん性を示す、十分な根拠があるとされています。実際、タバコには発がん性物質が60種類以上も含まれており、タバコとの関連が確実ながんとして、口腔がん、鼻咽頭がん、副鼻腔がん、喉頭がん、肺がん、食道がん、胃がん、膵臓がん、大腸がん、肝臓がん、腎臓がん、尿管および膀胱がん、子宮頚部がん、卵巣がん、骨髄性白血病などがあります。
また、タバコに含まれる有害物質により、血管壁の損傷や細胞の機能不全、酸素運搬能の低下などが起こることから、動脈硬化、脳卒中、腹部大動脈瘤に対するリスク要因としても挙げられています。
さらに、肺機能が低下することで肺炎の発症や喘息の悪化を招きますし、体内でのインスリンの働きを抑制するため、血糖上昇から糖尿病を発症しやすくなります4)。
禁煙の効果とは
年を取ってから禁煙してももう遅いと思われる方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。世界各国の研究をまとめたアメリカの報告によると「禁煙は性別・年齢・喫煙による病気の有無を問わず、すべての人々に大きくかつ迅速な健康改善をもたらす」ということが明らかになりました。つまり、高齢者になってからでも、禁煙は決して遅くはないのです。
禁煙すると以下の効果があるとされています。
禁煙の効果
- 24時間で心臓発作のリスクが軽減する。
- 2~3週間禁煙すれば、心臓や血管など循環器の機能が改善する。
- 1年後には、肺機能の改善が見られる。
- 2~4年で、虚血性心疾患や脳梗塞のリスクが軽減する。
- 5~9年で肺がんのリスクが軽減できる。
さらに10~15年禁煙できれば、さまざまな疾患を発症するリスクは、非喫煙者と同等となります5)。
禁煙の方法
禁煙するためには、たばこの有害性を知り、やめることのメリットを確認し、「やめようという強い意志」を持つことが大切です。吸いたくなったときには、気分を変える術(すべ)を身につけましょう。そのほか、禁煙外来や禁煙支援プログラムの利用や、ニコチンガム、ニコチンパッチといった禁煙補助剤を用いることで、禁煙しやすい環境を整えましょう。