高齢者のストレスと解消法
公開日:2016年7月25日 10時00分
更新日:2019年2月 1日 15時37分
高齢者のストレスの特徴
厚生労働省の「平成28年 国民生活基礎調査概況」によると、多くの高齢者がストレスを抱えている実態が明らかになりました(表)。
40~49歳 | 50~59歳 | 60~69歳 | 70~79歳 | 80歳以上 | |
---|---|---|---|---|---|
男性 | 48.6 | 48.6 | 38.5 | 37 | 43.9 |
女性 | 58.7 | 58.4 | 47.6 | 46.5 | 50.2 |
(注)
- 入院者は含まない。
- 熊本県を除いたものである。
どの年代でも、それなりにストレスを抱えながら生活していますが、高齢者は特に「年齢が上がるとともにストレスを抱えている人が多くなる」という特徴があります。
それでは、高齢者はどのようなことにストレスを感じるのでしょうか。
少し古いデータですが、内閣府が公表している「平成8年度 高齢者の健康に関する意識調査の結果」から見ていきます(グラフ1)。
このグラフを見ても分かるように、1番は健康上の問題、2番は政治、外交等社会問題、3番は子どもとの関係となっています。この他にも、仕事上の問題や配偶者との関係性の問題、家計などの経済的な問題も上がっており、高齢者の感じるストレスは多岐にわたることが分かります。
また、近年では高齢者が高齢の要介護者を世話する「老々介護」の割合も増えており、その数は50%を超えているともいわれています。そんな老々介護をしている介護者の高齢者は、家族の介護や病気、経済面、自由時間のなさをストレスとして挙げている人が多くなっています。
つまり、高齢者だからといってみんながみんな同じストレスを抱えているわけではなく、生活している環境等により感じるストレスはさまざまであるということが分かります。
加齢によるストレスの変化
加齢によるストレスには、若年者のそれとは、大きく違うストレスの変化があります。高齢者は職業の退職により、人間関係によるストレスからは解放される傾向にあるとされています。しかし、この退職時期が自分の思っていた時期よりも早かった、あるいは強制されての退職だったという場合には、非常に大きなストレスを感じます。また、配偶者や兄弟との死別、家族の病気や介護といった悪いライフイベントを高齢者は体験するする機会が増えます。加齢に伴いこの悪いライフイベントが増えることで高齢者のストレスは増強していくものと推測されます。
しかし、高齢者のストレスの中には社会的なサポート、いわゆるソーシャルサポートを受けることで、緩和できるものもあることが特徴です2)。
ストレスの身体的・精神的影響
また別の調査3)によると、高齢者がストレスを抱えるきっかけは、身体的、心理的な健康の喪失によることが多い、ということが分かりました。
高齢者はストレスに対しての心身反応が大きく出現し、特に75歳以上の高齢者は、75歳未満と比較すると「眠りが浅くなる」「判断力が落ちる」「物事が面倒になった」「頭の回転が鈍くなった」という「ストレスの心身反応」を強く示しています。また、男性よりも女性でストレス反応による心身への影響が有意に出現し、肩こりや目の疲れ、眠りの浅さやいらだち、焦りなどを感じやすい傾向にあるとされています。
高齢者のストレス解消法
では、高齢者はどのようにしてストレスを解消しているのでしょうか。内閣府の「平成8年度 高齢者の健康に関する意識調査の結果について 概要版」によると、最も多いストレス解消法は「友人に話を聞いてもらう」であり、これは女性に特に多く見られました。この他にも「配偶者に話を聞いてもらう」「スポーツをする」が上がっており、これは男性で特に多く見られています。
さらには、趣味や習い事の集いに参加したり、酒やたばこなどの嗜好品を利用してストレスを対処しているという人もいます(グラフ2)。
参考文献
- 北翔大学学術リポジトリ 北方園生活福祉研究所年報第 1巻 1995 高齢者のストレスと心理社会的特性との関連