正しい飲酒の基礎知識
公開日:2016年7月25日 02時00分
更新日:2019年8月15日 14時47分
お酒とは
アルコールを1%以上含む飲料のことを「お酒」と定義されています。
お酒は飲み方次第で薬にも毒にもなります。適度な飲酒は気分をリラックスさせストレス解消になりますが、アルコールは体に様々な悪影響を与え、摂り過ぎれば毒になるので、飲み方に気をつけなければいけません。
アルコールの代謝
お酒を飲むとアルコールは胃から約20%、小腸から約80%が吸収され、その後血液に入り、全身を巡ります。アルコールは肝臓でアルコールを分解する酵素によってアセトアルデヒドになり、さらに酢酸に分解され、最終的には水と二酸化炭素となって汗、尿、呼気から排出されていきます。
お酒を飲んで酔っ払うのは、アルコールが脳の神経細胞に作用し、麻痺させるためです。また飲み過ぎると頭痛、吐き気、顔面紅潮などが現れるのは、アセトアルデヒドが原因です。
日本人の4割近くの人がアセトアルデヒドを分解する酵素の働きが低いため、欧米人に比べてお酒に弱い人が多いです。
また、アルコールが血中からなくなるまではアルコールの処理能力や体重によっても異なるため、個人差があります。一般に体重60~70kgの方は純アルコール約5g分解に1時間ほどかかります。お酒に換算すると、中瓶1本、日本酒1合、ウイスキーダブル1杯を分解するには約4時間かかることになります。
アルコールの身体への影響
長期にわたり大量のアルコールを摂取すると、肝臓でアルコールが代謝される際に中性脂肪が蓄積し、脂肪肝や肝硬変などの肝臓障害を引き起こします。
また、妊娠中や授乳中にアルコールを摂取すると、胎児性アルコール依存症(発育遅延、中枢神経系の障害)を引き起こします。
未成年の飲酒は脳障害、急性アルコール中毒、アルコール依存症、精神的成長や心理的発達の停止、職場での作業効率の低下など身体的、精神面、社会性への影響が出てきます(表1)。
影響の生じる側面 | 主な影響 |
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身体的影響 |
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精神的影響 |
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社会的影響 |
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アルコールと病気
脂肪肝
中性脂肪が大量に蓄積し、肝臓全体が大きくなった状態です。アルコールを飲み続けることにより、脂肪の分解が抑えられてしまい、中性脂肪の材料である脂肪酸の合成が高まることで起こります。
アルコール性肝炎
脂肪肝の状態が数年以上続き、大量飲酒を続けていると、肝細胞が炎症して壊れてしまいます。
高血圧
アルコールを長期間摂取し続けると、血圧を上げ、高血圧を引き起こします。高血圧の状態が続くと心臓や脳へも負担がかかり、心疾患や脳血管疾患へとつながります。
慢性膵炎
大量の飲酒を続けると、膵臓の中の消化酵素が活性化され、自分の膵臓を消化してしまう自己消化を引き起こします。
アルコール依存症
アルコール依存症になると、自分で飲酒のコントロールができなくなります。また飲まないとイライラし、不眠になる精神的依存や、アルコールの中断や減量で幻視、手指のふるえなど身体的依存があります。専門病院や自助グループのサポートを受けながら、治療をしていくことが大切です。
急性アルコール中毒
短時間で大量のアルコールを摂取すると、肝臓でアルコールの分解が追いつかず、血中アルコール濃度が一気に上昇し、意識混濁、昏睡、嘔吐、低血圧など様々な症状がでます。これが急性アルコール中毒です。
慢性中毒
大量の飲酒習慣で休肝日を設けずに飲み続けると、アルコール性の脂肪肝、肝炎、肝硬変、食道静脈瘤を引き起こします。また口腔、食道、肝臓、咽頭、大腸、乳がんなどのリスクは飲酒で高まります。
正しい飲酒の仕方とは
正しい飲酒の仕方は以下の6項目です。
- 空腹で飲まない
- 味わいながらゆっくり飲む
- 適量飲酒を守る
- 休肝日をつくる
- 強いお酒は割って飲む
- 寝酒は極力控える
また、お酒は、飲めば飲むほど強くなるわけではありません。アルコールを分解する能力は人によって違います。飲めない人に無理やり飲ませること、飲めないのに無理して飲むことはやめましょう。その日の体調に合わせて、適量を楽しむことが大切です。
適性飲酒の目安
適正飲酒の目安は、アルコール摂取量の適正な基準とされるお酒1単位です。お酒1単位は純アルコールに換算して20gです(表2)2)。
お酒の種類 | アルコール度数 | お酒の量 |
---|---|---|
ビール | 5% | 中瓶1本500ml |
日本酒 | 15% | 1合180ml |
焼酎 | 25% | 0.6合110ml |
ウイスキー・ブランデー | 43% | ダブル60ml |
ワイン | 14% | 1杯180ml |
缶チューハイ | 5% | 1.5缶520ml |
- ※アルコール量の計算式:
- お酒の量(ml)×[アルコール度数(%)÷100]×0.8
飲酒の注意点
- 運動前後の飲酒は平衡感覚を狂わせ、心臓に負担がかかります。アルコールは脱水作用があるため、水分補給にはならないです。
- 飲酒中、または飲酒直後の入浴やサウナは血圧を急上昇させるので、アルコールが抜けてから入浴する。脳卒中を引き起こす可能性があります。
- 薬と併用すると、アルコールの分解が優先され、薬が血液中に長く停滞し、薬の作用が強まってしまい、昏睡や胃潰瘍など、危険な状態を引き起こす可能性があります。
アルコール依存度のチェックツール「snappy-cat(スナッピー・キャット)」
アルコールへの依存度を年齢や性別、酒の種類、飲酒量などの質問に択一式の簡単な質問に答えるだけで調べられるプログラム「snappy-cat(スナッピー・キャット)」はインターネット上で無料公開されています。
厚生労働科学研究の「WHO世界戦略を踏まえたアルコールの有害使用対策に関する総合的研究」班により開発されたsnappy-catは回答内容によって質問の内容や数は変わりますが、「迎え酒をした」「罪悪感や自責の念にかられた」「前夜の記憶が思い出せなかった」といった頻度を問う質問が登場します。自分の飲酒について知るツールとして一度試してみてはいかがでしょうか?
アルコール分解の目安時間のチェックツール「snappy-panda(スナッピー・パンダ)」
また、同研究班が開発したツールの「snappy-panda(スナッピー・パンダ」は、飲酒量を入力すると、アルコールの分解にかかる時間を計算して表示してくれます。
酒は百薬の長?
適量の酒はどんな良薬よりも効果があると言われ、少量の飲酒はリラックスでき、健康にも良いとされています。適量を守り、休肝日をもうけながら、お酒を楽しみましょう。