メタボリックシンドロームの改善
公開日:2016年7月25日 04時00分
更新日:2024年2月27日 11時14分
メタボリックシンドロームとは
メタボロックシンドロームとは、内臓脂肪型肥満があることによって、高血圧、高血糖、脂質代謝異常、脂肪肝などの病気が起こることです。ただ単に、肥満の方をメタボリックシンドロームと呼んでいるわけではありません。
内臓脂肪型肥満は動脈硬化を進行させて、高血圧、糖代謝異常、脂質代謝異常などを引き起こし、さらに動脈硬化を進行させて心筋梗塞や脳卒中などの心臓血管疾患をもたらします。動脈硬化によって起こる高血糖や高血圧などの病態が重複すればするほど、心臓血管疾患を発症するリスクは高まるといわれています1),2)。
メタボリックシンドロームの診断基準
メタボリックシンドローム診断基準検討委員会により、メタボリックシンドロームは、腹囲の増大で示した内臓脂肪蓄積がある前提で、脂質や血圧、血糖のうち、2つ以上の項目が基準にあてはまることを定義としています(表1)。
診断項目 | 基準値 | |
---|---|---|
必須項目 | ウエスト周囲径 (内臓脂肪面積 男女とも≥100cm2に相当) |
男性≥85cm 女性≥90cm |
選択項目 3項目のうち2項目以上 | 高トリグリセリド血症 かつ/または 低HDLコレステロール血症 |
≥150mg/dl <40mg/dl |
選択項目 3項目のうち2項目以上 | 収縮期(最大)血圧 かつ/または 拡張期(最小)血圧 |
≥130mmHG ≥85mmHG |
選択項目 3項目のうち2項目以上 | 空腹時高血糖 | ≥110mg/dl |
- CTスキャンなどで内臓脂肪量測定を行うことが望ましい。
- ウエスト径は立位、軽呼気時、臍レベルで測定する。脂肪蓄積が著明で臍が下方に偏位している場合は肋骨下縁と前上腸骨棘の中点の高さで測定する。
- メタボリックシンドロームと診断された場合、糖負荷試験が薦められるが診断には必須ではない。
- 高TG血、低HDL-C血症、高血圧、糖尿病に対する薬剤治療をうけている場合は、それぞれの項目に含める。
- 糖尿病、高コレステロール血症の存在はメタボリックシンドロームの診断から除外されない。
出典:日本内科学会雑誌 第94巻 第4号・2005年4月10日 表1 メタボリックシンドロームの診断基準
メタボリックシンドロームの影響
メタボリックシンドロームになると、糖尿病、高血圧、脂質異常症、心筋梗塞や脳卒中などの心臓血管疾患だけではなく、高尿酸血症や腎臓病、認知症、がんなどの病気も引き起こされる可能性があります4)。
メタボリックシンドロームは心筋梗塞や脳卒中といった循環器疾患の発症リスクを高めます。高血圧や高血糖、脂質代謝異常などのメタボリックシンドロームとなる要因がひとつ増えるごとに発症リスクが高くなることも報告されています1)。
メタボリックシンドロームの食事療法
メタボリックシンドロームの食事療法の基本は、適正なエネルギー摂取をおこなったうえで、運動をしてエネルギー消費を増やすことです。
健康維持を図れる範囲内で食事での摂取エネルギーを抑え、標準体重当たりタンパク質量1.0~1.2g(動物性タンパク質40~50%)、必須脂肪酸2g/日、脂肪20g/日、糖質100g/日以上とします。配分は、炭水化物60%、脂肪20~25%、タンパク質15~20%がよいとされています。
食事では以下のような工夫をすることも大切です。
メタボリックシンドロームの食事で工夫すること
- 食塩は10/日g以下に控える(高トリグリセリド(中性脂肪)血症の場合は6g/日以下)
- こんにゃくやキノコなどの食物繊維を多くとる
- グリセミックインデックス(GI)値※1の低い食べ物を食べるようにする
- 甘いジュースやお菓子を控える
- 良く噛んで食べ、腹七~八分でおさえる
- 緑黄色野菜を積極的に食べる
- 間食や夜食をせずに決まった時間に食事する
- アルコールは飲み過ぎない5)
- ※1 グリセミックインデックス(GI)値:
- グリセミックインデックス(GI)値とは、食事後の血糖値の上昇率を示す指標で、ブドウ糖摂取後の血糖値の上昇を100とした場合の食品ごとの数値のこと。
個人の体格や生活リズム、高トリグリセリド血症や高血圧、高血糖などの病態に適した食事内容、制限を継続して行うことが大切です。
メタボリックシンドロームの運動療法
メタボリックシンドロームの改善には、1週間で10メッツ・時以上のウォーキングや自転車エルゴメーター、ジョギング、水泳、体操などの有酸素運動を行うことが必要とされています。
エネルギー消費を行うことが運動療法の目的であり、1週間当たりの運動量が多いほど、内臓脂肪量も減少しやすいという報告があります。低強度の運動を長時間行うことでも、高強度の運動を短時間行うことでもエネルギー消費が行なえますが、中強度の運動をやや長めに行うことが、効率が良いとされています。個人の体力や運動機能、生活環境に合わせてどれくらいの強度の運動を、どれくらいの時間行うかを検討することも必要です6)。
参考文献
- 滋賀医科大学附属病院 栄養治療部 副部長 日本糖尿病療養指導士 岩川裕美:CDEJ News Letter 第23 号2009 年7月メタボリックシンドロームと食事療法--科学的にダイエットを考える--