生活支援・自立支援ロボット
公開日:2019年8月 9日 09時30分
更新日:2024年2月15日 14時19分
日本はロボット開発に関する高い技術があり、製造業、サービス業などさまざまな分野でロボット開発が行われています。最近は技術の進歩が著しく、高齢者の生活や介護を支えるロボットも開発・販売されています。そのようなロボットにはさまざまなセンサー技術が組み込まれています。本稿では高齢者の生活支援・自立支援で活躍するロボットについて解説します。
ロボットの定義1)
「ロボット」には、決まった形状はありません。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「NEDOロボット白書2014」(2014年3月)において、ロボットとは「センサー、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する、知能化した機械システム」と定義されています。
さらにNEDOロボット白書は、ロボットの役割を大きく3つに分けています(図1)。
- 生産環境における人の作業の代替をするロボット(産業用ロボットなど)
- 危機環境下での作業代行をするロボット(無人システムなど)
- 日常生活支援をするロボット(それに日常生活の中での家事支援や介護支援など)
「危険環境下での作業代行」をするロボットは、人が行けないところでの作業を行うことを目的としていますので、人による制御が無くなった場合でも、自立した動作をすることが求められます。例えば、月の表面で作業する無人の「月面探査機」などは、この種類のロボットです。
「生産環境における人の作業の代替」をするロボットは、必要な作業を高速かつ高精度で行う必要があります。例えば、食品加工工場で加工を行うような機器は、産業用のロボットです。
日常生活支援のためのロボットとは1)2)
では、「日常生活支援」をするロボットにはどのようなものがあるでしょうか。このタイプのロボットはさらに、「サービスロボット」と「エンターテインメントロボット」に分けられます。
サービスロボットとして身近なものに、お掃除ロボットがあります。ゴミがあるかどうか、壁や段差があるかどうかをセンサーで感知し、自動制御で掃除をしてくれます。
エンターテインメントロボットには、アザラシ型の癒しロボットの「パロ®」や、犬型ロボットの「AIBO®」などがあります。
身近にある日常生活支援・自立支援ロボット2)
少子高齢化が進む日本では、近い将来、介護分野での人手不足が大きな課題です。介護する側の負担を軽減し、介護される側の安全で安心できる生活をまもるため、多くの企業が介護分野で活かせるロボットを開発しています。
その中から、日常生活支援や自立支援を目的として開発された、いくつかの例を挙げてみましょう。
見守り支援ロボット
見守り支援ロボットは主に、高齢者向けの介護施設などで利用されます。赤外線センサーや温度センサー、画像センサーなどが見守りの対象となる人を感知し、異常な行動を確認したらネットワークを通じてスマートフォンやタブレット端末へ伝えます。
介護施設などでは、入居している人の顔の画像などを長く残すことが出来ない場合が多く、赤外線センサーで人物の動きを感知します。ベッドからの転落事故、部屋の中での転倒事故などの防止に役立っています。
離床感知センサーロボット
離床感知センサーロボットは主に、高齢者向けの介護施設などで利用されます。ベッドのマットレスと寝具の間に敷くことで、ベッドからの離床を感知します。重さや圧力を感知するセンサーが組み込まれており、「寝返り」と「離床」を区別できるようになっています。
また、このタイプのセンサーロボットの中には、呼吸の状態や脈拍などを測定できるものもあります。これらは比較的要介護度が高い、あるいは「看取り」が近い施設利用者の状態を、離れたところから観察できるようになっています。
ベッドから車いすへの「移乗」を助けるロボット
移乗を助けるロボットはベッドで寝ている状態から、車いすへと移るための動作を助けるロボットです。これには、いくつかのタイプがあります。寝ている人を持ち上げる動作を助けるタイプ、介護者の足腰の負担を緩和するタイプ、そしてベッドがそのまま車イスへと変化するタイプです。
寝ている人を持ち上げる動作を助けるタイプは、ロボットの一部(シート)を人の体の下に差し込み、シートごと体を持ち上げ、車いすや別のベッドへ移乗します。
介護者の足腰の負担を緩和するタイプは、介護者が装着するロボットです。油圧や空気圧などの動力を利用し、介助者の足腰の筋肉以上の力を出せるようにサポートします。
ベッドがそのまま車いすになるタイプは、普段はベッドとして使用し、背もたれや足元のリクライニングができます。車いすとして使用する際には、ベッド中央から縦に2つに分離し、片方が背もたれを起こし、足元を下げるように調整すると、そのまま車いすとして利用できます。
参考文献
- 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) NEDOロボット白書2014