高齢者の日常生活支援
公開日:2019年8月 9日 09時20分
更新日:2019年8月 5日 11時18分
高齢になるにつれ、体力や気力の衰えなどにより日常の簡単な家事ですら困難に感じるようになります。これは体力や気力の低下とともに、加齢による腰痛や膝痛なども原因であり、高齢者であれば誰でも見られる症状で仕方のないことです。日常の家事を困難に感じる高齢者に対する支援にはどのようなものがあるのか見てみましょう。
高齢者の日常生活支援のニーズとは1)
高齢になると、掃除、洗濯、料理、買物など日常生活を営むうえで不可欠な家事等に様々な不自由を感じるようになり、支援を必要とします(ニーズ)。
掃除・洗濯
掃除・洗濯を例にあげると、重い掃除機を操作するのは高齢者にとって足腰に大きな負担がかかってしまいます。洗濯は洗濯機がやってくれますが、洗った衣類を二階に上がり干す、そして取り込む、という動作も高齢者にとっては大変に感じてしまいます。
買い物
買い物は、高齢になり運転免許を返納したことにより出かけるのが難しくなってしまったり、店まで歩いて行くことができたとしても荷物を持って帰ることが無理になってしまい、思うように買い物に行くことができない、ということもあります。
料理
料理においては、調理が億劫になり簡単なもので済ませてしまいがちです。献立を考え、買い物に行き、食べたら片付けるという食事に関わる一連の行動は、気力体力の衰えた高齢者にとっては大変に感じてしまうものです。
実際に、妻を亡くした男性で、調理ができないために毎日お弁当を買っているというケースもあります。また、一人暮らしの高齢者の中には、蛍光灯の交換や、家電製品の不具合などのささいなことを対処するのが難しく、心細さや不安を感じてしまう方もいます。
高齢者が日常生活で必要とする「5つのこと」と「ちょっとしたこと」
高齢者の生活がうまく営まれるためには、どのようなことを満たす必要があるのでしょうか。高齢者の日常生活の中には様々な不自由なことがあり、生活上での支援を必要としています。これらのニーズをまとめてみると、高齢者の日常生活において「5つのこと」と「ちょっとしたこと」があげられます。
「5つのこと」と「ちょっとしたこと」
- 安心
- 情報を提供したり何かトラブルが生じたときの早期対処や危機管理など、高齢者にとっての安心を確保すること
- 日常的な家事
- 掃除、洗濯、買い物、調理、布団干し、ごみ捨てなどの日常的な家事のこと
- 外出
- 通院や買い物の際の移送や付き添いなど
- 交流
- 友人や近隣の人たちなど仲間づくり
- 非日常的家事
- 大掃除や日用品以外の家電等の買い物
- ちょっとしたこと
- 壁掛け時計の電池交換や、蛍光灯の交換、固い蓋の開け閉めなど日常生活において思いがけず起こること
これら高齢者の日常生活支援ニーズである「5つのこと」「ちょっとしたこと」の中で「安心」は高齢者の生活の基盤となるもので最も重要なものです。
日常生活支援サービスの種類
高齢者の日常生活支援のサービスとして、掃除や買い物の支援や、一人暮らしの方のためのホームヘルパー訪問などがあります。これらのサービスを提供するために2つの方法がとられてきました。
包括的な方法
包括的な方法とは、1回1時間など決められた時間枠において、ホームヘルパーや訪問ボランティアの方が訪れて家事などをしながら、話し相手にもなり、利用者の安否を確認するものです。訪問する時間内で、どのような支援を行うのか決められている場合が多いのですが、生活の不自由さは個人差があり、必要とする支援もそれぞれ違います。包括的な方法は、状況に応じながら支援内容を変えることができるため、さまざまなニーズに柔軟に応えることができるという利点があります。とはいえ、一部分において自分でできることがあっても、代行の場合だと一連の行為全てを代わりに行なってしまいがちです。また、支援内容に対して、高齢者自身ではしないであろう高い水準を求められてしまう、などという問題も起こることがあるため、あらかじめ支援する内容をしっかりと決めておくことも必要になるでしょう。
単品サービスで対応する方法1)
単品サービスで対応する方法とは、配食、外出の際の移動、買い物、掃除・洗濯など単品サービスの形で対応し、必要があれば話し相手や安否確認のサービスを付加させることができます。配食サービスは、もともと一人暮らしの高齢者の安否を確認するために開発されたものです。定期的に食事を配達することで高齢者にバランスの良い食事を提供することができるうえに、話し相手になり安否も確認できる、ということで全国に広がったものです。単品サービスの場合は、提供するメニューが決められているため、包括的な方法で起こるようなトラブルは起こりにくいという利点はあります。しかし、それとは逆に高齢者のそれぞれのニーズに応えるために柔軟に支援内容を変えることができない、という難点もあります。
包括的な方法、単品サービスで対応する方法、それぞれにメリット・デメリットがあります。高齢者それぞれの多様なニーズに対応できるよう、地域において生活支援サービスについてさらなる検討が必要だといえるでしょう。