居宅介護住宅改修費(介護予防住宅改修費)とは
公開日:2019年2月12日 13時55分
更新日:2019年2月12日 17時36分
居宅介護住宅改修費(介護予防住宅改修費)とは1)2)3)4)
居宅介護住宅改修費(介護予防住宅改修費)とは、利用者がこれまで住み慣れた自宅でも安全に暮らし続けられるように、住宅内の住宅改修への支援を、介護保険によって受けることができるサービスです。住宅の玄関、廊下、浴室、トイレなどに手すりをつけたり、段差をなくしたりする住宅改修が対象となります。
住宅を、介護に適した状態に改修することで、要介護者が自分でできることが増えたり、介護者にかかる負担を軽減することにつながります。費用は、居宅介護住宅改修費(介護予防住宅改修費)として20万円を上限として給付されます。要支援、要介護ともに、在宅サービスの支給限度額とは別枠で利用できます。
居宅介護住宅改修費の対象となる住宅改修1)2)3)4)
具体的には、以下のような住宅改修を行った場合、居宅介護住宅改修費が支給されます。
- 廊下や階段、浴室、トイレ、玄関まわり等への手すりの設置
- 段差解消のための敷居の平滑化、スロープ設置、浴室床のかさ上げ等
- 滑り防止および円滑な移動のための床材の変更(畳・じゅうたん・板材等)
- 扉の取り替え(開き扉・引き戸・折り戸等、ドアノブ交換等)
- 洋式便座等への便器の取り替え
- 上記の住宅改修に付帯して必要となる改修(下地補強、給排水設備工事、壁・柱・床材の変更等)
住宅が賃貸の場合は、家主の承諾が得られれば、改修可能です。
ただし、転居や退去の際に元の状態に戻すときの費用は、全額自己負担となります。賃貸で住宅改修が難しい場合は、ケアマネジャーに相談しましょう。
また、新築工事中の場合は、介護保険を利用することはできません。新築工事が完成した後であれば、手すりやスロープの設置などの改修は介護保険を利用できます。
居宅介護住宅改修費の対象者
居宅介護住宅改修費は要介護の認定を受けた方が対象となります。
なお、要支援者の場合は、「介護予防住宅改修費」として、別のサービスを利用できます。
居宅介護住宅改修費の利用負担1)3)
居宅介護住宅改修費の利用者の負担割合は、65歳以上の方は1割または一定以上の所得のある場合は2割、特に所得の高い場合は3割となります。40歳から64歳までの方は1割となります。
住宅改修費の支給限度額は、要介護度に関わらず20万円です。20万円の改修工事を行った場合、1割負担者は2万円、2割負担者は4万円となります。
例えば、20万円未満の工事で済んだ場合、残額分で今後の改修費用に充てることができます。逆に20万円を超えた場合は、超過部分が全額自己負担となります。
住宅改修の見積もりで20万円を越えた場合、自治体独自の住宅改修補助制度を利用することができれば、これを合わせて利用することで利用者負担を抑えることができます。
住宅改修費20万円の支給は原則1回ですが、要介護区分が3段階上昇した場合や、別の住宅に引っ越しをした場合は、再度20万円までの住宅改修費の支給申請が可能です。
住宅改修費の支払いの方法は、まずは利用者が費用全額を支払い、後から自治体が9割又は8割を償還する「償還払い方式」と、認可を受けた事業所を利用する場合、はじめから1割又は2割の負担で行える「受領委任払い方式」があり、自治体により異なります。
居宅介護住宅改修費のサービス利用の流れ1)3)4)
居宅介護住宅改修費のサービスを利用する際の流れは次の通りです。
- ケアマネジャー、理学療法士等に相談します
- ケアマネジャーと住宅改修事業者が住宅の状態を把握し、本人の身体状態や日常動作、本人とご家族の希望を確認したうえで、改修の提案をします。
- 住宅改修事業者が見積書を作成します。
- 利用者、ご家族の承諾を得た場合は、ケアマネジャーが「住宅改修理由書」を添えて工事の前に申請をします(事前申請)。なお、住宅改修理由書の作成者は介護支援専門員、地域包括支援支援センター担当職員、作業療法士、福祉住環境コーディネーター検定試験2級以上その他これに準ずる資格等を有する者に限られています。
- 市区町村から保険給付の許可が下りたら、工事が開始されます。
- 工事が終了、完成したら住宅改修事業者へ支払をします。
- 工事終了後、市町村に改修費の領収書や費用の内訳、改修前と後の写真等を添えて提出します。
- 市町村が事前申請された書類と、工事終了後に提出された書類を確認し、適切な工事が行われたかどうかの確認を行い、住宅改修費の支給が必要であると認めた場合、住宅改修費を支給します。
改修工事の前に「住宅改修費支給申請書」の提出が必要
介護保険で住宅改修をするには、改修工事の前に市町村の窓口に申請をする必要があります。事前に申請をすることなく改修をした場合や介護保険証に記載されている住所以外での住宅改修は、介護保険の給付の対象とならない場合があるので注意が必要です。
また、介護保険を利用する場合には、要介護認定の区分が決定していない場合でも、要介護認定の申請さえ行っていれば適応となります。
改修事業者選び1)
介護住宅改修工事は一定の要件を満たした指定業者でなくても工事ができます。そのため、改修事業者を選ぶ際には、介護保険の住宅改修について専門知識があり、質の高い工事ができる技術がある事業者を選ぶと良いでしょう。
また、工事を請け負う事業者はできるだけ2社以上から見積もりを取り、比較検討しましょう。ケアマネジャーや実際に改修を行った知り合いなどからの情報も参考にすると良いでしょう。
参考文献
- 江田章江ほか編:困りごとから探せる介護サービス利用法[改訂版], 社会福祉法人東京都社会福祉協議会, 東京都, 2017年, P110-113
- 牛越博文監修:図解 介護保険のしくみと使い方がわかる本. 講談社, 東京都, 2018年, P102-103