サルコペニアの原因
公開日:2021年10月29日 10時00分
更新日:2023年7月14日 10時26分
サルコペニアは、加齢に伴う様々な変化によって引き起こされます(図1)1,2)。例えば、神経の問題、慢性的な炎症状態、酸化ストレスという身体のサビのような問題、成長ホルモンや性ホルモンの減少などです。このような様々な要因が関係していると考えられている中で、日々の習慣により変化可能(改善可能)とされているのが運動と栄養になります。
筋肉(ここでは筋タンパク質といいます)は作ったり(合成)、壊したり(分解)を繰り返しています3)。若い方では、この筋肉の作られる量と壊される量がほぼ均一に保たれているので、普通の生活を送っていて大幅に増えたり減ったりすることはありません。しかし、高齢の方になると、作られる量が減少し、壊される量が増加するため、普通の生活を送っているだけでは筋肉が減りやすい状態になります(図2)。
重要な点は、「普通の生活を送っていても筋肉が減りやすい」ということです。例えば、若い頃には特に運動をしていなくても、また食事に気を使っていなくても、筋肉が目立って減ってしまうことはありません。しかし、高齢になっても同じような意識で生活をしていると、筋肉が減少してしまうことになります。そのため、なるべく意識的に運動を行い、たんぱく質(食べる方の)の摂取を心掛けることが大切になります。
文献
- Cruz-Jentoft AJ, Baeyens JP, Bauer JM, Boirie Y, et al. Sarcopenia: European consensus on definition and diagnosis: Report of the European Working Group on Sarcopenia in Older People.Age Ageing. 2010 Jul;39(4):412-23.
- Dickinson JM, Volpi E, Rasmussen BB. Exercise and nutrition to target protein synthesis impairments in aging skeletal muscle. Exerc Sport Sci Rev. 2013 Oct;41(4):216-23.
- Breen L, Phillips SM. Skeletal muscle protein metabolism in the elderly: Interventions to counteract the 'anabolic resistance' of ageing. Nutr Metab (Lond). 2011 Oct 5;8:68.
筆者
- 山田 実(やまだ みのる)
- 筑波大学人間系 教授
- 最終学歴
- 2010年 神戸大学大学院医学系研究科博士後期課程修了(保健学博士)
- 主な職歴
- 2008年 京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻助手、2010年 同・助教、2014年 筑波大学人間系准教授、2019年 同・教授、現在に至る。
- 専門分野
- 老年学、リハビリテーション
フレイルとは何?サルコペニアとは何?
フレイルとサルコペニアの概要、原因、評価方法、予防方法などについて国立長寿医療研究センター理事長 荒井 秀典 先生に解説いただきました。本動画は第32回日本老年学会総会「成熟社会への課題~高齢者は幸せになったか~」の市民公開講座にて公開された動画です。
長寿科学研究業績集「フレイル予防・対策:基礎研究から臨床、そして地域へ」について
長寿科学研究業績集は学術的研究成果の中で、社会のニーズにあったテーマを医療等従事者向けに編集した研究マニュアルです。各関係機関に活用いただくことで研究成果の普及啓発を図かっております。
令和2年度長寿科学研究業績集は「フレイル予防・対策:基礎研究から臨床、そして地域へ」(令和3年3月発刊)と題し、著名な先生方にご解説いただきました。
公益財団法人長寿科学振興財団のホームページで長寿科学研究業績集をご覧いただけます。