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令和4年度 長生きを喜べる長寿社会実現研究支援 採択プロジェクトについて

 公益財団法人長寿科学振興財団(以下「当財団」という。)は、財団ビジョン「長生きを喜べる長寿社会の実現~生きがいのある高齢者を増やす~」を達成するため、長寿科学研究者支援事業「長生きを喜べる長寿社会実現研究支援」(以下「本事業」という。)を実施しています。本事業は課題解決になる実用的な方法の研究開発から本格的な社会実装を含めた一気通貫の課題解決型のプロジェクトを採択し、支援するものです。

 令和4年度本事業の提案募集では、産学官民各界より53件の応募がありました。提案募集締切後、第一次審査(書類審査)、第二次審査(プレゼンテーション審査)、最終審査を審査評価委員会が実施し、当財団理事会承認のうえ以下の2つのプロジェクト採択しました。

No.プロジェクトリーダー氏名所属団体・部署・役職プロジェクト名開始ステージ初年度助成額
1 三浦 久幸 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 在宅医療・地域医療連携推進部 部長 アドバンス・ケア・プランニング推進のための共通ICTプラットフォーム構築―どこで療養していても本人意思が尊重される社会作り Aステージ:探索研究 10,000,000円
2 檜山 敦 一橋大学ソーシャル・データサイエンス教育研究推進センター 教授 貢献寿命延伸への挑戦! 〜高齢者が活躍するスマートコミュニティの社会実装〜 Bステージ:実装研究 30,000,000円

審査講評(審査評価委員長 駒村 康平)

 令和4年度長寿科学研究者支援事業「長生きを喜べる長寿社会実現研究支援」(以下「本事業」という。)の審査について、1.審査の経緯と手続き、2.審査と今後の課題、3.採択されたプロジェクトについて講評する。

1.審査の経緯と手続き

 審査手続きについては、「審査基準」の共有、「利害関係の排除」を明瞭にしたため、特段の課題はなかったと評価する。

 他方で、実際の審査については、53件という多数の応募があったため、審査評価委員(以下「委員」という。)の利害関係を考慮したうえで一次審査(書面審査)では2つのチームに分けて審査を行った。

 審査を完全に公平にするためには、委員全員が全てのプロジェクト提案を審査することが望ましいが、この点は審査スケジュールと委員の負担についても考慮する必要がある。

 この点に対する工夫として、一次審査(書面審査)においては2つのチームそれぞれにおける審査基準に基づく採点の上位層について敗者復活を含めた合議による審査を委員全員で行った。また、二次審査および最終審査においても審査基準に基づく採点に加え合議により審査を行った。

2.審査と今後の課題

 本事業の主課題は「長生きを喜べる長寿社会の実現~生きがいのある高齢者を増やす~」である。また、主課題を実現するための課題解決となるキーワードとして、①高齢者のQOL、生きがい、健康、活力のエンパワメント、②弱っても安心して活き活き過ごせるまちづくり、③認知機能が低下しても個人の尊厳を尊重した普段の生活における様々な意思決定支援、④高齢者にやさしいテクノロジー・デジタル技術の開発・実装の4つを掲げた。さらにプロジェクト提案の審査においては、1)社会的インパクトがあるか、2)学際的であるか、3)持続可能かつ実効性があるか、という基準を設定した。

 全てのプロジェクト提案において、委員間でこの3つの基準を共有し、採点および合議による審査を行った。ただし、3つの基準のうちいずれを優先するかについては、委員間で若干の差異があったと思われる。この点については、次年度にむけてすりあわせが必要であろう。

 また提案されたプロジェクトとその審査において、はたして「研究は誰のものなのか」という点は改めて問い直す必要を感じた。本事業が大きな意味で、「長寿社会の諸問題を解決する」プロジェクトを支援したいという目的を持っている以上、1)そのプロジェクトが特定分野の研究者目線によってのみ作られ、ひとりよがりの内容になっていないのか、2)技術面の可能性だけではなく、社会に受け入れられる可能性を十分に検討しているのか、といった視点は極めて重要であろう。これらの問題を解決するためには、市民と研究者が協力してプロジェクトを進めていく、「アクションリサーチ」あるいは「シチズンサイエンス」という視点や「真に学際的なチーム編成になっているのか」という点をより意識して、審査をすべきと考える。

 またこうした社会へのインパクトとともに、研究手法の厳密性や事業可能性を審査したわけであるが、これらのいずれも十分満たす応募はあまり多くはなかったこともあり、委員にとって、これらのバランスをどうとるのかは難しい課題である。

 そのほか研究者サイドの目線や供給オリエンテッドからの発想で、本当に需要を作りうるのかどうなのか、社会実装が可能なのか、技術が社会に浸透するのかという点が曖昧な応募も少なからずあった。

3.採択されたプロジェクト

 採択された2つのプロジェクトについてコメントする。

 「アドバンス・ケア・プランニング推進のための共通ICTプラットフォーム構築―どこで療養していても本人意思が尊重される社会作り(三浦久幸、国立研究開発法人国立長寿医療研究センター)」では、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の普及・実装化は、今後ますます重要性が高まるテーマであることは明瞭である。他方、「高齢者や家族の側のACPに対する意識が変わり行動変容が進んで行くのかが心配である」、「国民に対し早い段階から本プロジェクトで提案するACPの価値を理解・納得頂けるよう国民を巻き込むようなプロモーション計画の策定を求める」という指摘もあり、審査評価委員会としては、この点は今後もプロジェクトの進捗をモニターしていく必要があると考える。

 また「貢献寿命延伸への挑戦!高齢者が活躍するスマートコミュニティの社会実装(檜山敦、一橋大学ソーシャル・データサイエンス教育研究推進センター)」は、本事業で想定された本筋のプロジェクトであり、大きなインパクトも期待され、すでに市民との協働も進められている点からも高く評価された。その一方で、「「貢献寿命」は非常に多角的な内容であり拡張性がある概念だが、「貢献寿命の価値」に誤解を与えないよう」、「貢献の概念を「就労」から幅を広げ、個人の知恵・能力・やりがい等を評価できる仕組、「受援力」の発揮も「貢献」と言えるのではないか」など、「貢献寿命」の概念を社会で広く受け入れていくためには、かなりの工夫も必要であるという指摘もあった。

 次年度の公募においては、より市民参加を含めて社会的インパクトを意識し、持続可能かつ実質的に学際的なプロジェクトの応募を多数期待したい。

令和4年度公募要領

令和4年度 長寿科学研究者支援事業 「長生きを喜べる長寿社会実現研究支援」公募要領(PDF:1.16KB)(新しいウインドウが開きます)

公募について

 公募については以下のページをご覧ください。

長生きを喜べる長寿社会実現研究支援の公募


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