派遣報告書(真山達也)
派遣者氏名
真山 達也(まやま たつや)
所属機関・職名
東京医科歯科大学 歯科医師(大学院3年生)
専門分野
摂食嚥下リハビリテーション学分野
参加した国際学会等名称
iADH 2024 Seoul
学会主催団体名
InternationalAssociation for Disability & Oral Health
開催地
韓国 ソウル
開催期間
2024年9月26日から2024年9月29日まで(4日間)
発表役割
口頭発表
発表題目
Analysis of gut microbiota from patients with dysphagia after ingesting fermented cabbage
嚥下障害者の発酵漬物摂取による腸内細菌叢変化の解析
発表の概要
嚥下機能が低下した高齢者が発酵食品を経口摂取したときの効果は知られていない。そこで、発酵食品を食べやすい形態に調整し、腸内細菌叢の変化を解析することを目的とした。
嚥下障害を有する高齢者を6名を対象とした。試料は、共同研究施設で作成した1mm幅の千切りのザワークラウト(発酵漬物と非発酵漬物を用意した)を使用した。また、本研究はクロスオーバー比較試験とした。対象者を2群にわけ、一方には発酵漬物を、1日全量50g、3回にわけて2週間摂取させ、2週間間隔を空けた後、非発酵漬物を2週間摂取させた。もう一方の群には非発酵漬物から発酵漬物の順で摂取とさせた。糞便は試料摂取前後に計4回採取した。採取した糞便から、次世代シークエンサーを用いた16SrRNA解析を行い、試料摂取前後での対象者の腸内細菌叢に変化があるかを解析した。種の多様性は、QIIME2を用いてShannon Index、PCoA plotにて評価した。
発酵漬物の摂取前後ではShannon Indexの上昇を認めたが、非発酵漬物の摂取前後では、変化を認めなかった。Tyzzerella属の有意な減少を認め、Tyzzerella属は肝硬変などの炎症性疾患に関連することがわかっている。また、アンケートにて便通の改善、腹部の膨満感の減少などを認めた。嚥下障害患者の腸内環境の改善、QOLの向上に寄与することが期待できる。
派遣先学会等の開催状況、質疑応答内容等
得られた結果に対し、病気に関連する細菌の減少や増加などがわかれば、病気の診断にもつながるのではないか?といった質問を得られた。個人的にはyesだと考えるが、腸内細菌を継続的に測定することが現時点では費用面などから困難であることが考えられる。
本発表が今後どのように長寿科学に貢献できるか等
高齢者、特に嚥下障害をもつ高齢者にとって腸内細菌叢を発酵漬物を摂取することで改善し、全身的なQOL上昇につながる。
また、漬物は高齢者に好まれているが、、一般的には嚥下障害者にとって食べにくいものである。そこで漬物を形態調整し食べやすい形にすることで、嚥下障害のある高齢者にとって満足度の高いものとして貢献することもできる。
参加学会から日本の研究者に伝えたい上位3課題
- 発表者氏名
- Yazan Hassona
- 所属機関、職名、国名
- The University of Jordan Al-Ahliyaa Amman University
- 発表題目
- A new insight into diagnosis and management of dental anxiety using AI-based emotion recognition ; a preliminary prospective clinical study/AIによる感情認識を用いた歯科不安の診断と管理に関する新たな知見;前向き臨床研究
- 発表の概要
- 2つのAI(ChatGPT4とGemini)を使用し、表情をもとに歯科不安の特定と予測を行った。27人の患者に参加してもらい、チェアに座った後、治療を始める前の表情を測定した。30人の歯科不安のない表情もコントロール群としてAIによみとらせた。結果、fearful,terrified,anxious,irritable,cautiousなどの表情をよみとることができ、ChaGPTでは86.4%、Geminiでは79.3%の歯科不安の表情を認識できた。以上から、AIで歯科不安の表情をよみとることができ、今後は歯科不安の診断と治療にいかしていく予定である。
治療に恐怖心があり、来院されないかたがいるはずなので、事前に不安要素を取り除けたら治療もできることができると考える。
- 発表者氏名
- Yuto Tanaka
- 所属機関、職名、国名
- Department of Special Care Dentistry , Osaka Dental University
- 発表題目
- Factors hindering tele-dental care for patients with special needs and nursing care/特別なケアを必要とする患者の遠隔歯科治療と介護を妨げる要因
- 発表の概要
- 障害のある方は医療機関を受診しづらい。そこで障害のある方や看護ケアを必要とする人にとってオンライン歯科診療抑止となる原因について検討する。
オンライン歯科ケアと年齢についてはt検定、オンライン医療ケアとインターネット、スマートフォン、クレジットカードの使用に関してはフィッシャーの正確確立検定を使用した結果、年齢や独居とオンライン歯科ケアへの抵抗には関係がなく、インターネットに不慣れな患者はオンライン歯科診療を受け入れづらいことがわかった。
障害者の歯科への参加の原因を理解することで、遠方で治療やケアを実施できない人へのオンラインによる指導なども拡大していけるのではないかと考えた。
- 発表者氏名
- Brenda vilaca Barros de Carvalho
- 所属機関、職名、国名
- Sao Leopoldo Mandic-Campinas-Brazil
- 発表題目
- Prevention of osteonecrosis in a Patient with Cornelia de Lange Syndrome Using Bisphosphonate ;A Case report/ビスフォスフォネートによるCornelia de Lange症候群患者の骨壊死の予防 ;ケースレポート
- 発表の概要
- Cornelia de Lange症候群(CLS)は様々な身体的機能に影響し、特徴をもった珍しい病気である。ゾメタのようなビスフォスフォネート製剤が治療に使用され、これは顎骨壊死のリスクをひきおこす。今回のケースでは50歳のCLSの患者の抜歯後、PENTOプロトコールにフルコナゾール、プレドニン、クリンダマイシン、ペントキシリフィン、トコフェロールを含んだところ、結果はpositiveだった。顎骨壊死は予防され、骨は回復し、傷は治った。管理と予防戦略が大事な症例であった。
嚥下障害にもみられる病気であり、BP製剤を使用していることを知ったと同時にそれに対する対応策をケースレポートであるが知る機会になった。なかなかみない症例であるため、紹介したい発表とさせていただいた。