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派遣報告書(高島翔太)

派遣者氏名

高島 翔太(たかしま しょうた)

所属機関・職名

北海道大学大学院医学研究院皮膚科学教室・大学院生

専門分野

皮膚科

参加した国際学会等名称

2019 SID Annual Meeting

学会主催団体名

Society for Investigative Dermatology

開催地

アメリカ シカゴ

開催期間

2019年5月8日から2019年5月12日まで(5日間)

発表役割

ポスター発表

発表題目

Novel mevalonate kinase mutation in a patient with porokeratosis ptychotropica

MVK遺伝子変異を伴う汗孔角化症 ptychotropica typeの病態解析

発表の概要

目的

 皮膚悪性腫瘍の発生母地となることが知られている汗孔角化症の病態解明と治療法を開発すること。

方法

 汗孔角化症の原因遺伝子として報告されている遺伝子を解析し、また患者皮膚の皮疹部と無皮疹部における角化関連タンパクの発現を比較する。

結果

 汗孔角化症の原因遺伝子として、MVK、PMVK、MVD、FDPS遺伝子が報告されており、これらの遺伝子がコードするタンパクはいずれもメバロン酸経路に関わっていることが知られている。本研究では、汗孔角化症の非常に稀な亜型であるptychotropica typeの遺伝子解析を施行し、MVK遺伝子に新規遺伝子変異を同定した。

 また、同一患者の皮疹部と無皮疹部の皮膚検体を用いて、免疫染色法、micro array法を用いて遺伝子発現の差異の解析を行ったところ、皮疹部においてケラチン6 (KRT6)の発現量が有意に増加していた。

考察

 本研究からMVKを中心としてメバロン酸経路の異常とKRT6が汗孔角化症の発症メカニズムに大きな役割を果たしている可能性が示唆された。

 汗孔角化症は自覚症状に乏しく、一般的な疾患ではあるが、これまで確立された治療法は存在していない。また皮膚悪性腫瘍の発生母地となることが知られており、発症のメカニズムと治療法の開発は喫緊の課題である。まだ、どのような分子メカニズムでメバロン酸経路の異常がKRT6の発現を亢進しているのかは明らかになっていないが、今後研究を継続していくことで本疾患の病態の解明と治療法の開発が期待される。

派遣先学会等の開催状況、質疑応答内容等

 2019 SID annual meetingでは全1,015の演題が発表された。会場はHilton Chicagoで、ヨーロッパやアメリカを中心に著名な先生が講演をされ、最先端の皮膚科研究を直接学ぶことができた。

 発表に関しては関連分野から、同一疾患であるporokeratosisで皮疹部ではsecond hit mutationがあることを発表しているグループがあり、今後自分の研究にも生かしていきたいと思った。

平成31年度第1期国際学会派遣事業派遣者:高島翔太の発表風景写真写真:学会会場内

本発表が今後どのように長寿科学に貢献できるか

 本疾患は悪性腫瘍の発生母地になることが知られており、また近年の死因の多くが悪性腫瘍であることからも、難治性皮膚疾患の病態解明と治療法についての研究を通して、長寿科学に大いに貢献することが期待される。