派遣報告書(榊原利博)
派遣者氏名
榊原 利博(さかきばら としひろ)
所属機関・職名
名古屋大学大学院医学系研究科呼吸器内科学・大学院生
専門分野
呼吸器内科学
参加した国際学会等名称
Annual Meeting of American Thoracic Society 2019
学会主催団体名
The American Thoracic Society
開催地
アメリカ ダラス
開催期間
2019年5月17日から2019年5月22日まで(6日間)
発表役割
ポスター発表
発表題目
A new prediction rule for adverse outcomes in all hospitalized patients with community-onset pneumonia
すべての入院を要する市中発症肺炎患者の重症イベントを予測する新しい予測式
目的
肺炎は世界的に主要な死亡原因である。市中発症肺炎患者の中から重症化する患者を識別する方法は確立していない。特に高齢者や施設入所者を含めたすべての患者に対する重症化予測法は確立していない。
今回、すべての市中発症肺炎患者の重症化を予測するための予測式の作成、検証を目的とした研究を実施した。
方法
2つの独立した、前向き、多施設コホートを用いて、予測式の作成と検証を行った。予測式の作成コホートには1,334例が、検証コホートには643例が組み入れられた。
結果
多変量解析の結果13の変数からなる重症化予測式が作成された。検証コホートにおいて、我々の予測式は高い精度で重症化を予測した(重症化予測に対するROC曲線下面積0.85、感度92%、特異度60%)。またサブグループ解析の結果、この予測式は80歳以上の高齢者や施設入所者等、医療関連肺炎の患者に対する予測精度も示された。
考察
本研究で開発された予測式は高い精度で重症化を予測することができ、またすべての市中発症肺炎に対して使用することが可能であった。重症化が予測される患者に対して、入院時より積極的な治療介入を検討する必要がある。
今後この予測式で重症化が予測される患者に対する、救急外来でケアバンドルを作成し、効果を検証していく必要がある。
派遣先学会等の開催状況、質疑応答内容等
本研究は参加学会におけるScholarship award (ATS abstract scholarship award)とJoint-Sessionにおけるaward (APSR-ISRD Joint-Session award) を受賞することができました。
本発表が今後どのように長寿科学に貢献できるか
本研究は高齢者を含むすべての入院を要する市中発症肺炎患者の重症化を高い精度で予測することができる。重症化が予測される患者に対しては入院時より積極的な治療を考慮する必要がある。また近年進歩している非侵襲的な治療を入院早期に行うことにより、侵襲的な治療を望まない高齢患者の重症化を防ぎ、予後を改善させられる可能性がある。また高齢者の治療に対するゴールは患者ごとに大きく異なるが、重症化が予測される患者や家族に対しては、そのことを説明することにより、患者や家族の意思決定に役立つものと考えられる。