健康長寿ネット

健康長寿ネットは高齢期を前向きに生活するための情報を提供し、健康長寿社会の発展を目的に作られた公益財団法人長寿科学振興財団が運営しているウェブサイトです。

高齢者のデジタルデバイド解消に向けた新たな一歩

公開日:2025年4月11日 10時30分
更新日:2025年4月11日 10時30分

荒井 秀典(あらい ひでのり)

国立長寿医療研究センター理事長


 デジタル技術が日常生活に深く浸透する現代において、その利用により様々な健康への効果が示されてきた。しかしながら、その恩恵を享受するためには、デジタルデバイスやインターネットの基本的な利用スキルが不可欠である。ところが、高齢者の中にはこれらの技術に馴染みがない、あるいは利用する機会が限られている方も多く存在する。この状況は「デジタルデバイド(情報格差)」と呼ばれ、社会的な孤立や情報へのアクセス格差といった問題を引き起こす要因となっている。さらなる健康寿命の延伸を獲得するためには、デジタルデバイドを解消し、デジタル技術の恩恵を享受できる高齢者を増やすことが望ましいと考えられている。

 今回の特集では、高齢者のデジタルデバイドを解消することを目的とした長寿科学振興財団「高齢社会課題解決研究および社会実装活動への助成」事業について紹介する。本プロジェクトは、長寿科学振興財団が掲げる「長生きを喜べる長寿社会の実現」と、あらゆる世代のデジタルスキル向上を目指すGoogle社の思いが一致し、Google社の支援を受け、実現した。Google社の支援により、3人の研究者がそれぞれの専門分野からこの課題に取り組み、具体的な解決策を模索した。スマートフォンの利用促進を介したコミュニティーの形成(国立長寿医療研究センター・島田裕之氏)、多世代交流によるデジタルスキルの学び合い(東北大学・瀧靖之氏)、デジタルを用いた就労支援(東京都健康長寿医療センター・村山洋史氏)について、それぞれ目標数を設定して、その目標を達成した。

 本特集では、まずデジタルデバイドがもたらす社会的影響についての分析から、これら事業の取り組みを通じて見えてきた課題や成果を詳しく取り上げる。

 本プロジェクトを通じて明らかになったのは、技術的なサポートだけでなく、高齢者が自信を持ってデジタル技術を活用できるよう心理的な側面にも配慮する必要があるという点である。これらの取り組みを総合的に進めることで、高齢者がデジタル社会の一員として主体的に活躍でき、長生きを喜べる環境を整えることが可能となるであろう。

 改めて本特集が、高齢者のデジタルデバイド解消に向けた新たな一歩となることを願っている。

筆者

あらいひでのり氏の写真。
荒井 秀典(あらい ひでのり)
国立長寿医療研究センター理事長
略歴
1991年:京都大学医学部大学院医学研究科博士課程修了(医学博士)、同老年科医員、同助手、1993年:カリフォルニア大学サンフランシスコ校、1997年:京都大学医学部老年内科助手、2003年:京都大学大学院医学研究科加齢医学講師、2009年:同人間健康科学系専攻教授、2015年:国立長寿医療研究センター副院長、同老年学・社会科学センター長、2018年:同病院長、2019年より現職
専門分野
老年医学
過去の掲載記事
巻頭言/感染予防とフレイル対策 2つの視点が鍵(Aging&Health 第30巻第1号)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
総論 フレイルの全体像を学ぶ 3.フレイルとサルコペニア:サルコペニア診断の変遷とAWGS 2019(令和2年度長寿科学研究業績集)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

公益財団法人長寿科学振興財団発行 機関誌 Aging&Health 2025年 第34巻第1号(PDF:7.0MB)(新しいウィンドウが開きます)

WEB版機関誌「Aging&Health」アンケート

 WEB版機関誌「Aging&Health」のよりよい誌面作りのため、ご意見・ご感想・ご要望をお聞かせください。

 お手数ではございますが、是非ともご協力いただきますようお願いいたします。

WEB版機関誌「Aging&Health」アンケートGoogleフォーム(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

無料メールマガジン配信について

 健康長寿ネットの更新情報や、長寿科学研究成果ニュース、財団からのメッセージなど日々に役立つ健康情報をメールでお届けいたします。

 メールマガジンの配信をご希望の方は登録ページをご覧ください。

無料メールマガジン配信登録

寄附について

 当財団は、「長生きを喜べる長寿社会実現」のため、調査研究の実施・研究の助長奨励・研究成果の普及を行っており、これらの活動は皆様からのご寄附により成り立っています。

 温かいご支援を賜りますようお願い申し上げます。

ご寄附のお願い(新しいウインドウが開きます)

このページについてご意見をお聞かせください(今後の参考にさせていただきます。)