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第5章 口腔ケア 7.高齢者のQOLを低下させるドライマウスへの対応

 

公開月:2020年5月

神奈川歯科大学顎顔面病態診断治療学講座 准教授
岩渕 博史

1:ドライマウスとは

 ドライマウス(Dry mouth)とは、自覚的・他覚的な口(口腔)の乾燥症状であると理解され、類似した言葉に口腔乾燥症や口渇がある。ドライマウスには様々なタイプがあり大別すると、唾液分泌量が減少したタイプ、唾液分泌量は正常であるが口腔内の唾液量が減少したタイプ、口腔乾燥感を有するが唾液分泌量、口腔内の唾液量ともに正常なタイプがある。一般的に高齢者ほどドライマウス患者が増えるとされているが、その原因は老化のみではなく、多種多様である。ドライマウスの原因となる疾患や薬剤の服用が高齢者ほど多いことに起因すると思われる。このドライマウスは単なる口が渇く症状ではなく、その背景には様々な疾患が隠れていたり、高齢者のQOLを低下させる原因となっており、高齢者にとってその対応は大変重要である。

2:ドライマウスの概念と原因

 前述した如く、ドライマウスには、唾液分泌量が減少したタイプ、唾液分泌量は正常であるが口腔内の唾液量が減少したタイプ、口腔乾燥感を有するが唾液分泌量、口腔内の唾液量ともに正常なタイプがある。唾液分泌量は正常であるが、口腔内の唾液量が減少したタイプとは、唾液腺からの唾液分泌は正常であるが、何らかの原因で口腔の保湿力が低下(唾液の口腔からの蒸発量が著しく亢進)したことにより生じる口腔乾燥感や舌や口蓋を中心とした口腔粘膜の乾燥状態で、主に開口が原因となる。ADLが低下した高齢者の多くに開口症がみられ、その原因は顎関節脱臼や咀嚼筋筋力の低下、呼吸不全が挙げられる。また、経口挿管や気管切開中の患者、マスクによる酸素投与中の患者でも口腔の保湿力は低下する。これらによる口腔内の乾燥は要介護者の口腔ケアを行なうにあたって、大きな障害となる。その他にも口呼吸の習慣、扁桃肥大や鼻疾患による口呼吸がある。

 一方、唾液分泌量の減少したタイプには、体の水分量(体液量)が減少したことに伴い唾液分泌量が減少したタイプと、唾液腺の唾液分泌機能が低下したことに伴い唾液分泌量が減少したタイプがある(図1)。

図1:口腔乾燥症の広義での分類を表した図。大きくは唾液分泌の減少をきたすものと、きたさないものに分けられる。
図1 口腔乾燥症の概念

 体液量減少が減少したタイプとは、唾液腺の分泌機能は正常に保たれているが、体の水分(循環体液量)が何らかの原因により減少したことで、唾液分泌量が減少したものである。原因としては感冒やインフルエンザなどによる発熱、下痢、尿崩症、糖尿病、多汗症、バセドー病などや、人工透析、利尿薬の服用による水分の体外への排泄が亢進することが主な原因である。高齢者では心不全、腎不全などによる浮腫や腹腔の進行がん患者、肺炎などによる肺機能低下患者にみられる腹水や胸水の貯留も循環体液量を減少させるので脱水を生じる。唾液分泌機能が低下したことに伴い唾液分泌量が減少したタイプには、唾液腺組織に障害が生じたため唾液腺の機能が低下したものと、唾液腺組織は正常であるが、唾液分泌に関与する様々な刺激がブロックされたため唾液腺が正常に機能しなくなったものがある。唾液腺組織の障害で最も良く知られているのが加齢による変化である。他には、唾液腺の炎症や腫瘍、シェーグレン症候群などの自己免疫疾患への罹患、がん化学療法や頭頸部領域への放射線照射による唾液腺組織の破壊が挙げられる。特殊な疾病としては移植片対宿主病(GVHD: graft versus host disease)やAIDS、悪性リンパ腫により唾液腺組織が傷害されることがある。唾液腺への刺激がブロックされる原因として最も多いのが、薬剤の副作用である。降圧薬(Ca拮抗薬)、向精神薬、抗不安薬、抗うつ薬、制吐薬、抗ヒスタミン薬、副交感神経遮断薬(抗コリン薬)、オピオイド(医療用麻薬)など多くの薬剤が唾液腺への神経伝達を抑制する(図2)。

図2:唾液分泌低下を低下させる副作用がある薬剤の一覧を表している。
図2 唾液分泌低下を生じる主な薬剤

 その他には精神疾患、脳の障害(脳梗塞や脳出血)、ストレスや更年期障害などでも唾液腺への刺激伝達が抑制される(図3)。また、口腔の感覚異常でも唾液腺への刺激伝達が抑制される。

図3:唾液分泌量の減少の原因について、体液量の減少によるものと唾液分泌能の低下によるものに分けて示した図
図3 唾液減少の原因

3:ドライマウスの為害作用

 ドライマウスは単に口腔乾燥感を生じさせるのみではなく、口腔局所や全身の恒常性にも大きく影響している。唾液中には各種無機成分やたんぱくが存在しており、口腔粘膜と歯の潤滑・保護、緩衝作用、抗菌作用、自浄作用などを担っている。これらが口腔のみならず、その周囲器官や臓器を感染などから保護している(図4)。

  1. 粘膜の潤滑・保護作用
  2. 洗浄・希釈作用
  3. 非特異的抗菌作用
    1. 細菌の付着抑制作用をもつ物質
      • ムチン、フィブロネクチン、ヒスタチン、シスタチンなど
    2. 殺菌作用をもつ物質
      • リゾチーム、ペルオキシダーゼ、ディフェンシン、ラクトフェリンなど
  4. 特異的抗菌作用
    • 分泌型IgA、歯肉溝由来免疫グロブリン(IgGなど)

図4 唾液の感染防御作用

1.口腔局所への影響

 ドライマウスでは、唾液の多才な働きが低下するため、う蝕や辺縁性歯周炎の増加・進行、義歯の適合不全やそれに伴う疼痛を生じさせている。最近では食塊形成能や潤滑作用の低下から、食物の咽頭・食道通過を障害するなど摂食・嚥下機能にも関与していると考えられている。さらに、味覚異常1)、舌の疼痛2)、口腔カンジダ症3)の発症にも関与していることが報告されている。また、唾液分泌量の減少期間が長いほど口腔カンジダ症を含む口腔粘膜疾患の罹患率が高い4)ことも判っている。一方、唾液分泌量の減少を改善することによる口腔疾患の改善効果も報告5)されている(図5)。

図5:シェーグレン症候群に伴う唾液分泌量減少症患者に対する唾液分泌促進剤投与前後での乾燥感、飲望感、摂食障害、粘つき感、疼痛、味覚障害の自覚スコアを表したグラフ。すべて改善されている。
図5 シェーグレン症候群に伴う唾液分泌量減少症患者に対する唾液分泌促進剤投与前と2年後における各自覚症状の変化
(岩渕博史 他, 20076)より引用)

2.全身への影響

 ドライマウスの為害作用(体に害を及ぼす悪い作用)は口腔局所への影響のみならず、全身への影響も考慮する必要がある。口腔は呼吸器や消化管の入り口であるため、そこの障害は口腔粘膜のみならず、全身疾患や他臓器疾患に影響を及ぼしている。

 消化器疾患への関与としては、逆流性食道炎(胃酸逆流症)患者では唾液分泌量や唾液中EGF(Epidermal growth factor:上皮増殖因子)の分泌量が正常コントロール群に比べ低下していることが報告7、8)されている。唾液には逆流した胃酸を洗い流す効果(wash out)と重炭酸塩による胃酸の中和効果、EGFによる食道粘膜の修復作用があり、この作用が逆流性食道炎発症に大きく関与していると考えられている。呼吸器疾患への唾液分泌量減少の影響としては、唾液分泌量の減少者では正常人に比べ、かぜ症候群とインフルエンザを合わせた罹患率が他の要因を調整しても約2倍高いことが報告9)されている。また、唾液分泌量の減少が精神的ストレスを生じさせている可能性も報告10)されている。一方、唾液の粘性が低下すると義歯の安定が悪くなり、粘性が高くなるとう蝕や辺縁性歯周炎が増加するとされている(図6)。

図6:唾液が義歯床の機械的刺激から保護していることを表す模型図
図6 唾液の潤滑油作用
義歯床と床下粘膜の間に介在し、潤滑油の役割果たし、義歯床の機械的刺激から床下粘膜を保護している。

4:ドライマウスの症状

 初期の症状としては軽度の口腔乾燥感が多いようであるが、このことに医療機関を受診する患者は少ない。その後、次第に舌のざらつきや舌痛、粘つき感を自覚するようになる。さらに症状が進行すると義歯の装着不良や味覚障害を生じる。他覚的には舌乳頭の萎縮や粘膜の発赤がみられる。最も問題となるが認知症患者や意識のない患者で、これらの患者では口腔乾燥感などの自覚症状を聴取することは出来ない。硬口蓋や舌背部粘膜などの乾燥や剥離上皮膜、痰の付着などが他覚的所見としてみられる。

5:ドライマウスの診断

1.問診

 問診はいつからどのような症状があったのか(現病歴)、症状発生のきっかけはあるか、既往症、併存疾患、精神状態、内服薬を確認する。自覚症状については症状の強弱の有無、訴えに矛盾点がないかなどを丁寧に聞き取る。症状の強弱は「食事時に痛みを伴うか」、「朝・昼・夜のどの時間帯に口腔乾燥感が生じるか」などを聴取する。ここで注意することは、食事時には痛みを生じないからといっても、必ずしも精神的な要因で痛みを生じているとは限らない。初期のドライマウスでは疼痛や違和感を訴えるが食事には支障がなく、他覚所見も明らかでないことが多い。夜間の口腔乾燥感を強く訴える場合でも、その原因として安易に口呼吸を考えるべきではない。昼間は水分を頻回に摂取出来るため、口腔乾燥感を自覚していない場合もある。また、夜間は唾液分泌刺激が乏しいため、刺激時唾液は殆ど分泌されない。そのため、夜間の保湿は安静時唾液に依存しているが、この安静時唾液が減少している場合では夜間の口腔乾燥感を強く訴える傾向がある。症状発症時期が比較的はっきりしている場合では、症状発症前に誘因となるような内服薬の開始や疾病への罹患などのイベントがなかったか注意深く問診する。また、家庭や職場などにおけるストレスの有無、更年期症状の有無を聴取することも必要になる。患者自身はその症状がドライマウスに伴うものであるとは自覚していないことが多い。そのため、ドライマウスを疑うのであれば、乾燥症状のみを問診するのではなく、前述したようなドライマウス特有の症状を問診する必要がある。他覚的には口腔粘膜の萎縮や乾燥がみられるか、唾液にあわ立ちがないかなどを確認する。しかし、ドライマウスが重症でなければ、明らかな他覚所見は生じないことが多い。

2.唾液分泌量や唾液分泌機能の測定

 唾液分泌量の測定にはガムテスト、サクソンテストによる刺激時唾液分泌量の測定と吐唾法などによる安静時唾液量の測定があり、唾液分泌量減少の目安はガムテストでは10分間で10㎖以下、サクソンテストでは2分間で2g以下、安静時唾液量では15分間で1.5㎖以下と考えるが、唾液分泌量減少により様々な、障害が生じるのは10分間ガムテストで6㎖以下と考える。唾液分泌機能は唾液腺シンチグラフィーにより判断する。どこでも行なえるという検査ではないが、唾液分泌機能を直接評価することのできる唯一の方法である。

3.粘膜保湿度の測定

 意思疎通が取れない患者や、咀嚼のできない患者に刺激時・安静時の唾液分泌量の測定は困難である。ムーカス®は口腔粘膜(頬粘膜や舌)に器具のセンサー部を軽く接触させるのみで口腔の湿潤度を測定することができる。ムーカス®は唾液分泌量を直接測定するものではないが、測定値と唾液分泌量には相関があるとされている11)。そのため、ムーカス®を用いれば意思疎通の取れない患者でもドライマウスの診断をすることができる可能性がある(図7)。

図7:株式会社ライフ製の口腔水分計ムーカスの写真
図7 口腔水分計ムーカス®
株式会社ライフ(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)より引用

6:ドライマウスの治療

1.原因から対処法を探る

1)唾液分泌量は正常であるが、口腔内の唾液量が減少したタイプ

 多くは咀嚼筋の筋力低下に伴う開口症が原因であるが、顎関節脱臼を生じている場合も少なくない。対処法としては室内の加湿とマスクの使用である。習慣性顎関節脱臼患者に対しては専用のオトガイ帽も販売されている(図8)。気管切開や経口挿管されている場合でも、開口がみられればマスクを使用する。

図8:株式会社パルメディカル製オトガイ帽のAGOキャップ
図8 AGOキャップTM
株式会社パルメディカル(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)より引用

2)体液量減少に起因するドライマウス

 体液量減少に起因するドライマウスであるとの診断と、体液量減少の原因を究明することが重要である。原因除去の可能性を主治医と相談し、出来ない場合にはジェルタイプ保湿剤の使用が中心となる。それ以外では、嚥下機能に問題がなければ各種含嗽薬や人工唾液、スプレータイプの保湿剤を使用する。

3)唾液腺の唾液分泌機能が低下したことに起因するドライマウス

 唾液分泌機能の低下や神経伝達系障害などの原因を突き止めることが重要である。しかし、一度低下した唾液分泌機能や伝達系・中枢の障害を短期間で回復させることは困難である。そのため、対処法は保湿剤や含嗽剤の使用が中心となる。シェーグレン症候群や放射線治療に起因する口腔乾燥症では内服治療の開始を考慮する。また、使用薬剤に起因する場合では薬剤の変更を処方医に相談する。

2.各種物品の使用

1)保湿剤

 主な保湿剤にはスプレータイプのものとジェルタイプがある。スプレータイプは水分負荷(加湿)が主な効果で、即効性があり、清涼感が得られるが持続時間は短い。ジェルタイプは粘膜表面に被膜を形成することにより、保湿効果と粘膜の保護効果が期待でき、作用時間も長い。ただし、ジェルタイプは粘つき感の自覚症状の強い患者には不向きである。また、嚥下機能が低下している患者ではスプレータイプの保湿剤使用は避けた方がよい。

2)含嗽薬

 含嗽薬は多種多様のものが発売されているが、症状により使い分けることが必要である。口渇や粘つき感には重曹含有の含嗽薬を選択する。アルコール含有は乾燥感を助長する可能性があるので良くない。口腔の不快感にはミントなどの香料を含有する含嗽薬を使用すると清涼感が得られる。舌痛やざらつき感には粘膜保護作用のある含嗽薬を選択する。重曹、アルコール含有は粘膜の荒れを助長するので良くない。また、含嗽薬の使用は誤嚥の危険性のある患者では避ける必要がある。

3.唾液分泌促進薬

 本邦において臨床応用されている唾液分泌促進薬にはセビメリン塩酸塩水和物とピロカルピン塩酸塩がある。

1)セビメリン塩酸塩水和物12)(サリグレン®/エボザック®

 本剤はシェーグレン症候群に伴う口腔乾燥症状の改善に使用することができる。また、本剤は優れた唾液分泌量の促進効果や自覚症状の改善効果を示し、その効果は長期間維持され5年程度では明らかな薬剤耐性はみられない。また、様々な自覚症状に対し、改善効果がみられる。しかし、副作用は少なくなく、その大部分が投与開始4週後以内に発生する。最も頻度の高い副作用は嘔気・嘔吐で投与を中止せざるを得ない症例もみられる。しかし、嘔気にはいわゆる「慣れ」がみられ、1か月程度で自然消失する。

2)ピロカルピン塩酸塩(サラジェン®

 本剤もセビメリン塩酸塩水和物と同様の作用機序を持ち、同様の禁忌症や併用注意が定められている。本剤は頭頸部領域への放射線治療に伴う口腔乾燥症状の改善とシェーグレン症候群に伴う口腔乾燥症状の改善に使用することができる。頭頸部領域への放射線治療に伴う口腔乾燥症に対する効果は13)安静時唾液量は投与12週後には有意に増加し、投与52週後の平均安静時唾液増加量は0.6ml/10分であった。シェーグレン症候群に伴う口腔乾燥症状についても同様の効果がみられる。また、その効果は長期投与しても減弱しない。本剤の副作用は50%14)以上と報告されており、多汗や頻尿が多いが、セビメリン塩酸塩水和物で多くみられた嘔気は少ない。

7:ドライマウスを合併する 患者の口腔ケア

1.原因を探る

1)口腔内に他覚的な乾燥所見があるか

 口蓋や舌背が最も観察しやすい。粘膜に乾燥があるか、付着物はあるかについて観察する。

2)唾液分泌があるか確認する

 舌下部および口底部を観察する。口蓋や舌背が乾燥していても、舌下部や口底部には唾液が貯留している場合がある。また、耳下腺部や顎下腺部を圧迫し、耳下腺乳頭や舌下ヒダよりの唾液流出がみられるか確認する。

3)患者を観察する

 開口症や顎関節脱臼、いびきの有無などを観察する。これらは要介護高齢者のドライマウスの原因で最も多い。

4)脱水の有無を確認する

 発熱や胸水・腹水貯留の有無、補液や飲水量、尿量や尿比重などからin outバランスを再考する。

2.対処法

1)保湿

 病室の加湿とマスクの使用である。マスクは通常のサージカルマスクや立体型マスクがコストや保湿力を考えると推奨される。保湿剤の使用も有効である。ワセリンやオリーブ油、グリセリンなども使用されているが、保湿力や効果持続時間を考慮すると市販のジェルタイプの保湿剤が優れている。

2)水分負荷

 水分制限のある患者や腹水・胸水が貯留した患者では水分の負荷は困難なことが多い。先ずは、水分負荷の可能性を医師と相談し、出来ない場合にはジェルタイプ保湿剤の使用が中心になる。それ以外に嚥下機能に問題がなければ各種含嗽薬や人工唾液、スプレータイプの保湿剤を使用させる。シュガーレスのガムや飴、夏季であれば氷片をなめさせるのもよい。

3)顔面・唾液腺マッサージ

 筋力低下や脳血管障害の後遺症として生じた口唇閉鎖不全や開口症などに対して顔面や咀嚼筋、口唇マッサージが効果的なことがある。しかし、唾液分泌促進を期待した唾液腺マッサージの効果は限定的と思われる。

4)乾燥した口蓋部の付着物への対応

 ケアへの協力度や嘔吐反射の強弱により口腔ケアの難易度は変化するが、付着物が乾燥しているとスポンジブラシによる通常のケアでは除去が困難である。まずはスプレータイプの保湿剤や重曹水を乾燥した付着物に噴霧し、しばらく時間を空けてからスポンジブラシで除去する。その後、口腔内全体にジェルタイプの保湿剤を塗布する。開口症であれば、マスクを着用させる。また、次回のケア時には前回塗布したジェルタイプ保湿剤を完全に除去した後に粘膜ケアを行うことが重要である。

文献

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  • 14)岩渕博史: 口腔乾燥症(唾液分泌量減少症)に対する唾液分泌促進剤による治療. 日本口腔ケア学会誌 2013; 7: 17-23.

プロフィール

著者:岩渕博史
岩渕 博史(いわぶち ひろし)
神奈川歯科大学顎顔面病態診断治療学講座 准教授
最終学歴
1992年 東京歯科大学卒
主な職歴
1992年 慶應義塾大学医学部研修医 1998年 同・助手 2003年 国立栃木病院歯科・歯科口腔外科・小児歯科医長 2013年 神奈川歯科大学顎顔面外科学講座診療科講師 現職 神奈川歯科大学大学院歯学研究科顎顔面病態診断治療学講座顎顔面外科学分野准教授
専門分野
口腔乾燥症の薬物治療、口腔乾燥症と全身疾患、病院における口腔ケアシステムの確立

※筆者の所属・役職は執筆当時のもの

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