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第1章 序論 高齢期の食・栄養・口腔機能―健康増進の視点から―

 

公開月:2020年5月

桜美林大学 老年学総合研究所 所長
国立長寿医療研究センター 理事長特任補佐
鈴木 隆雄

1:はじめに 低栄養の現状とフレイル

 今日、世界的な規模においても「食」のありようが大きな関心を呼んでいる。2015年9月の国連本部においてSustainable Development Goals(SDGs)が採択され、さらに2019年1月のLancetには"Food in the Anthropocene: the EAT- Lancet Commission on healthy diets from sustainable food systems"1)が報告されている。このレポートに関しては中村丁次博士の総論で詳しく紹介されることになっているが、その基本理念は気候変動や温室効果ガスの課題を含め、地球規模の人類全体の健康の持続可能性の視点から今後の望ましい食のありようを提言したもので、特に赤身肉消費量の削減と全粒穀類・豆類・野菜・果物を中心とした食生活への転換が推奨されている1)

 一方で、わが国のように高齢者の人口割合が30%に達するような超高齢社会においては、中年期の食のありようと同様、高齢者の健康特性に配慮した食と栄養、そして口腔機能の維持を目的とした、わが国特有の課題を踏まえつつ、望ましい食のありようを考慮し取り組むべき時代ともいえよう。

 今日の日本人が到達した世界でもトップレベルの長寿化の要因の一つに著しい栄養改善が挙げられる。すなわち、国民生活が豊かになるにつれ、たんぱく質(特に動物性たんぱく質)や油脂類の摂取が大幅にそして望ましい領域に到達し、一方で摂取総エネルギー量は適切な領域に維持されたことが大きな貢献を果たしている。しかし、近年の日本人の栄養摂取には長寿を脅かすといっても過言ではない偏った食生活あるいは低栄養が顕在化してきていることに注意が必要である。平成27(2015)年国民健康・栄養調査報告(厚生労働省)での重点調査項目の一つが、栄養バランスの取れた食事摂取の状況調査であるが、この調査から、主食・主菜・副菜を組み合わせた、いわゆる栄養バランスの取れた食事を「ほぼ毎日、1日2回以上」取れている人の割合は男性47.6%、女性52.7%と全体の半分程度と報告されている2)。比較的栄養バランスの良いと思われる60歳代(60-69歳)でもその割合は男性51.5%、女性58.6%であり、6割に満たない割合となっている。さらに、栄養バランスの悪化とともに、より重要な問題として「低栄養」が挙げられる。低栄養の問題は単に高齢者の問題にとどまらず、現在の日本人全体を覆っている国家的な問題である。2000年以降日本人の総エネルギー量(kcal)は2,000kcalを下回り、減少傾向が止まらない状況である。さらに動物性たんぱく質を含む全たんぱく質摂取量および油脂類(脂肪)もまた2000年以降減少している。特に若年層での低下傾向が著しく、今後の日本人全体の健康度の水準が低下することに大きな懸念が示されている3)。高齢者における低栄養もまた問題である。平成29年度国民健康・栄養調査では、BMI≦20kg/㎥を基準値とした場合の65歳以上高齢者における低栄養傾向と判断される者の割合は男性12.5%、女性19.6%となっており、特に女性では増加傾向にあることが指摘されている4)。一般に、高齢期の低栄養はエネルギー摂取量や栄養素摂取量の低下あるいは必要量に対する不均等によって生ずる。低栄養によって体重減少、低体重(やせ)、筋肉量の減少(サルコペニア)そして血清たんぱく質(アルブミン値)の減少などが顕在化してくる。従って低栄養は高齢期の健康障害、特にフレイルの最初のそして中核的な問題となる。

 高齢期の低栄養とフレイルに関する研究は多く、本書でも葛谷雅文博士の詳細な各論に譲るが、例えば、MNA®を用いて75歳以上の高齢者における低栄養とフレイルとの関係性を分析した研究によれば5)、フレイルと判定された高齢者の46.9%、プレフレイルの12.2%は低栄養リスクの状態にあると報告されている。これは健常者での2.2%に比してフレイルでは約21倍、プレフレイルでも5.5倍、低栄養の有病率が高いことをあらわしている。一方、MNA®で「低栄養リスクあり」と評価された高齢者の90%がフレイルまたはプレフレイルのいずれかの状態であったと報告しており、低栄養はフレイルの根本的な状態像であることがうかがわれる。わが国の地域高齢者を対象とした、健康群、プレフレイル群、フレイル群の3群に分類したフレイル重症度と栄養指標の関連についての研究6)からもフレイル群では、健康群に比し血清アルブミン値(g/㎗)の低値(4.5±0.3 vs 4.4±0.3;p=0.016)、食品摂取の多様性(点)の低値(4.5±2.2 vs 3.9±2.1;p=0.003)などが指摘されている(表1)。この研究は横断的研究であることから因果関係は不明ではあるが、フレイルの状態では食品摂取の多様性の低下や(おそらくたんぱく質摂取量の低下に伴う)血清アルブミン値の低下が強い関連性を有していることは確実であると思われる。

表1 フレイル重症度と栄養指標の関連(Motokawa K, et al., 20186)より引用)

表1:フレイル重症度と栄養指標の関連を示す表。

2:栄養と認知機能

 栄養学的視点からの認知的フレイルの中核となる認知機能低下抑制の研究も進んでいる。欧米では「地中海食」(すなわち、イタリア料理、スペイン料理、ギリシャ料理などの地中海沿岸諸国の伝統料理で、季節折々の野菜・豆類・果物・種実類が多く含まれ、オリーブオイルが主たる油脂であり、魚介類や乳製品(チーズ、ヨーグルト)、鶏肉が主たる動物性たんぱく質源、そして食事中に適量の赤ワインを摂取するような食習慣)が認知機能低下を抑制することが多く報告されている。一方、日本では久山町研究から、乳類、豆類、野菜類、海藻類などの伝統的日本食パターンを持つ高齢者で、その後の認知症発症リスクの低かったことが報告されている7)。また国立長寿医療研究センターの長期縦断疫学研究(NILS-LSA)グループの研究からは、認知症予防に関する食事の要素として、「食品摂取の多様性」が認知機能の維持に大きな影響を与えていることを10年間の観察研究から報告しているが8)、このことは食品摂取多様性の高い人(つまり、いろいろな食品をバランスよく食べる人)ほど、認知機能の低下するリスクが低いことが示され、バランスよくいろいろな食品を食べるという習慣(食行動)が脳の機能維持あるいは認知症予防に効果的である可能性が示されたことになる。日本では、米を中心とする主食、たんぱく質を中心とする主菜、野菜などの副菜を基本としたバランスの良い食事が推奨されており、2005年厚生労働省と農林水産省の協力による「食事バランスガイド」を作成し普及に努めてきた。このバランスガイドの有効性について日本の中高年を対象とした代表的コホートの一つであるJPHCスタディの15年間の追跡研究(45-75歳;男性36,624名、女性42,970名)からバランスの良い食事をしている者ほど死亡率(総死亡、循環器死亡および脳血管死亡)のリスクが有意に低下していることが明らかにされている9)

 近年、認知症予防の視点から脳由来神経栄養因子(Brain Derived Neurotrophic Factor:BDNF)の重要性が指摘されているが、わが国においてもBDNFの増加をもたらす発酵性乳製品の摂取の有効性に関するランダム化研究が実施されその有効性が確認されている10)。本研究は、70歳以上の軽度認知障害(MCI)と判定される地域在宅高齢女性を対象とした非盲検ランダム化クロスオーバー比較試験であり、介入群には白カビ発酵チーズ(1日2ピース;16.7g/日)を摂取、対照群には非発酵プロセスチーズ(1日2ピース;16.7g/日)を摂取し、3ヶ月間の介入後ウォッシュアウトを3ヶ月間設定し、その後3ヶ月間でクロスオーバーによる介入を実施し、両群におけるBDNFの変動を比較検討したものである。その結果、白カビ発酵チーズを摂取した群では非カビ発酵チーズ摂取群に比し有意にBDNFの増加が認められた。すなわち、白カビ発酵チーズ摂取群では血清BDNFが6.18%増加したのに対し、非カビ発酵チーズ摂取群では-2.66%と減少し、約9%の変動差が確認されたのである。白カビ発酵チーズには白カビ成分に(オレイン酸からの生合成たんぱく質である)オレアミドが豊富に含まれ、それがミクログリアの炎症を抑制させる作用が確認されていることから11)、BDNFの増加につながったと推定されている。おそらくわが国のように、欧米諸国に比しチーズ(特に今回対象とした白カビ発酵チーズ)摂取量の少ない国では、白カビ発酵チーズの摂取がBDNFの産生に影響する可能性が示唆されたと言えよう。

3:低栄養とサルコペニア

 身体的フレイルの中核的現象としてサルコペニアが挙げられるが、本症に対する予防対策に関しても多くの科学的根拠が積み上げられている。運動による筋量・筋力の増加のみならず、適切な栄養、特にアミノ酸を付加したサプリメントの服用、あるいはビタミンDの関与に関する研究等も進んでいる。Kobayashi et al.は65歳以上の高齢女性2,108名を対象として、たんぱく質とアミノ酸の摂取量とフレイルの関連を調査した多施設横断研究では、フレイルの割合は23%であり、総たんぱく質摂取量はフレイルと有意に負の相関を示しており、その関連はたんぱく質の供給源あるいはたんぱく質を構成するアミノ酸に関係なく、安定した関連性を示していたと報告している12)。また、たんぱく質摂取量の増加、中でも分岐鎖アミノ酸であるロイシン摂取量の増加は高齢期における除脂肪体重(LBM)の減少と関連性のあることが報告されている13)。一方、介入研究の視点から、わが国で実施された地域在宅の75歳以上の後期高齢女性のなかで筋肉量および筋力のいずれも減少し、サルコペニアと判断された女性を対象として運動介入(筋力と歩行能力の向上)と栄養介入(アミノ酸、特に分岐鎖アミノ酸であるロイシン高付加サプルメントの服用)によるサルコペニア改善のためのランダム化比較試験(RCT)が実施され、運動とアミノ酸の両方を介入した群での改善率は対照群に比べて約5倍となり、アミノ酸服用だけでも約2倍、運動だけでは約2.6倍、いずれもサルコペニア状態を改善することが明らかにされている14)。また、日本茶に多く含まれる茶カテキンのサルコペニアに対する予防効果あるいは改善効果もランダム化試験として実施され、その予防効果が報告されている15)。しかし、サルコペニア予防のための栄養介入に関する最近のシステマティックレビュー(SR)では、筋量、筋力、身体機能(Physical Performance)に対して運動と栄養のそれぞれの介入による増大効果(augment effect)の分析によれば、運動による上昇効果はほぼ80%以上示されたのに対し、栄養のそれはおよそ20%前後と1/4程度にとどまっていることが報告されている16)

4:低栄養とビタミンD

 近年の疫学研究において、ビタミンD、すなわち血清25(OH)D3濃度がカルシウム吸収を中心とする骨代謝に関与することはもちろんのこと、循環器疾患や2型糖尿病、上気道感染、自己免疫疾患、結腸癌をはじめとする悪性腫瘍、そしてサルコペニアなど、これまで知られていなかったさまざまな疾患に関与していることが明らかにされている。しかし一方で、若年女性や高齢者で慢性的に血清25(OH)D3の未充足状態(欠乏あるいは不足状態)であることも、明らかになっている。たとえば日本人成人9,084人におけるビタミンD充足状況に関する報告によれば17)、血清25(OH)D3濃度のカットオフ値を75nmol/L(=30ng/mL)とした場合、充足率はわずか9.1%であり、逆に言えば約91%が未充足状態となっていることが明らかとなっている。特に女性での若年層は著しい低濃度であることが示されている。そのひとつの要因として日焼け止め(UVカットクリーム)の過剰な使用が指摘されている。また、国際骨粗鬆症財団(IOF:International Osteoporosis Foundation)からの声明として、世界的にも女性の低25(OH)D3濃度はきわめて憂慮すべき状態と報告され、特に(カットオフ値を75nmol/Lに設定した場合)女性の90%以上が不足状態にある国として日本と韓国が挙げられている18)。このように、わが国の場合、女性特に10-20代の若年女性および65歳以上の高齢女性において(これまで想像もされなかったような)ビタミンDの不足~欠乏状態が存在しており、今後の平均寿命の延びと高齢社会の進展を考慮するならば、きわめて憂慮すべき状態となっている。血清25(OH)D3濃度と体組成、下肢筋力の関連性について日本人成人(40名)を対象とした研究では、参加者の70%が血清25(OH)D3濃度20ng/mL以下のビタミンD低下/欠乏の状態であり、血清25(OH)D3濃度は骨格筋量指数(SMI)および下肢筋力とのいずれとも優位な相関を示していたことが報告されている19)

 平成28(2016)年の国民栄養調査によれば、日本人成人のビタミンD摂取量の平均は7.5㎍/dayであるが、標準偏差8.0㎍/day、中央値3.8㎍/dayと非常に個人差が大きくばらついていることが示される。また、最近策定された「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では推奨されるビタミンDの摂取量は8.5㎍/dayと前回の摂取推奨量(5.0㎍/day)よりも引き上げられたが、多くの日本人で推奨量を大きく下回っていると推定され、大腿骨頸部骨折や転倒などの疾病リスクを低下させるための「必要量」などより明らかに少ない摂取量であり、必ずしも十分な摂取量ではないことに注意が必要である。

 高齢者において血清25(OH)D3濃度が不足すると、容易に要介護状態をもたらす可能性が大きい骨粗鬆症や転倒・骨折を始めとする様々な筋骨格系の障害との関連性が明らかとなってきた。特に75歳以上の後期高齢者では、加齢に伴った低栄養を基盤とした心身機能の減衰からフレイル、ロコモティブ・シンドローム、さらにはサルコペニアなどが顕在化し、転倒リスクは著しく増加することが明らかとなっているが、高齢期の転倒には血中のビタミンDの低下が大きく関与していることがさまざまな研究から明らかとなっている20,21)

 世界中で多くのビタミンD投与を含む転倒予防のためのRCTが実施されているが、2018年の最新の介入研究の効果に関するSRでの地域在宅高齢者を対象とした、転倒予防の有効性と有害性についてのSRでは62のRCT(総人数35,058人)を対象として分析している22)

 転倒予防の介入手法としては3つの介入方法に着目している。すなわち、導入時の転倒リスク評価後に、1.多角的介入(26研究、N=15,506人)、2.運動介入(21研究、N=7,297人)および3.ビタミンDサプリメント介入(7研究、N=7,531人)の3つの介入方法についてのSRをおこなっている。

 その結果、多角的介入では転倒発生が有意に減少していた[RR 0.79(95% CI: 0.68-0.91)]が、転倒関連性障害や死亡率には関連が認められていなかった。次に、運動介入では転倒経験者人数は優位に減少[RR 0.89(95% CI: 0.81-0.97)]したほか、外傷を伴う転倒発生も有意に減少した。しかし転倒そのものの発生現象に有意性は無く、死亡率にも有意差は認めなかった。また、ビタミンD摂取に関する異なった介入方法を有する7つの研究(カルシウムの併用の有無は考慮していない)では異なった結果が示され、一定の傾向が示されなかったとしている。

5:低栄養と口腔機能

 高齢期の栄養を考える上で、口腔機能の重要性については以前から知られていたが、近年、オーラルフレイルとして特に注目されるようになってきた。オーラルフレイルの概念については第1期「前フレイル期」に始まり、第2期「オーラルフレイル期」、第3期「サルコ+ロコモ期」、そして第4期「障害・重症フレイル期」の4期を想定されている23)

 最初の「前フレイル期」はいわば社会的・精神的な面での脆弱化が始まる時期であり、生活範囲の狭まりおよび精神面の不安定さの出現が想定されているが、この期で最も重要な事象としては「社会的紐帯の低下」と「口腔機能管理に対する自己関心度の低下」である。この時期は一般的な予防対策における「一次予防」に相当し、健康管理に対する自己関心度や自己管理能力の低下、すなわちヘルスリテラシーの低下と捉えることができる。このような口腔機能や口腔衛生に対するリテラシーの低下、すなわち「口腔リテラシー」の低下は当然、口腔内不潔や歯周病そして残存歯数の低下のリスクを増大化させる。また、この時期ではフレイル、特に社会的フレイル、すなわち他者との交流や社会的な紐帯が低下する時期でもあり、オーラルフレイルに限らずフレイル全体の予防対策の時期として最も重視されるべきと考えられている。第2期である「オーラルフレイル期」は一般的な予防対策における「二次予防」に相当するステージであり、実質的な口腔機能の軽度の低下が出現する。重要なサインとして、滑舌低下、食べこぼし、むせ、といった食習慣にかかわる機能低下が現れる。第3期の「サルコ+ロコモ期」となると、口腔機能の低下が顕在化し、咬合力の低下や舌運動の低下が自覚的にも明確化し、同時に全身のサルコペニアも進行するステージでもある。最後の第4期「障害・重症フレイル期」では摂食嚥下機能低下や咀嚼機能不全により心身のフレイルは一段と進行し、いわば重度のフレイルであり、障害(Disability)の時期あるいは要介護状態と考えるべきであろう。このようなステージの進行に伴い咀嚼能力も低下してゆくが、地域在宅高齢者509名を対象とした咀嚼能力と食品・栄養素等摂取量の実態についての調査から、咀嚼機能良好な群に比し、咀嚼機能不良の群では図に示されるように、すべての栄養素において低下を認めている(図1)24)。さらに、那須(2012)は65歳以上高齢者5,000人に郵送調査を実施し、咀嚼可能な食品群の中で、「さきいか・たくあん」を咀嚼できる者を「咀嚼機能5」と規定し、それ以下を「咀嚼機能4以下」と規定して、健康余命を比較検討した。その結果、全ての年代で「咀嚼機能5」と「咀嚼機能4以下」の間で健康余命は有意差が認められ、たとえば65歳代で2.8年の差、75歳代で2.2年の差、そして85歳代でも1.4年の差が確認されたと報告している(図2)25)

図1:咀嚼機能と栄養素等摂取量との関連を示す図。
図1 咀嚼機能と栄養素等摂取量(本川佳子 他,201724)より引用)
図2:年齢別に咀嚼能力5と咀嚼能力4以下に分類し健康余命との関係を示した図。
図2 咀嚼機能と健康余命の関係(那須郁夫,201225)より引用)

 オーラルフレイルの予防対策として口腔ケアの重要性が高まっているが、特に初期の「前フレイル期」は、上述のように単に口腔領域の問題として捉えるよりも、社会的フレイルの出現時期でもあることがより重要であり、高齢者本人はもちろんのこと高齢者を取り巻く方々においても口腔機能の維持が社会的フレイルをも予防する可能性の高いことに関心を持つべきであろうと思われる。高齢期において健全な時期から継続的に口腔ケアを行うことにより、誤嚥性肺炎や低栄養の予防が可能であるだけでなく、食の楽しさや美味しさといった人間として最も基本的な能力の維持向上とともに、家族社会、地域社会とのつながりにも好影響をもたらし、生活の質・生命の質(QOL)にも大きな関わりをもつことになる。

文献

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  • 25)那須郁夫:咀嚼能力の向上は健康余命を延伸する.日本補綴歯科学会誌 2012; 4: 380-387.

プロフィール

筆者:鈴木隆雄先生
鈴木 隆雄(すずき たかお)
桜美林大学 老年学総合研究所 所長
国立長寿医療研究センター 理事長特任補佐
最終学歴
1982年 東京大学大学院理学系研究科博士課程修了
主な職歴
1988年 札幌医科大学助教授 1990年 東京都老人総合研究所疫学研究室長(疫学) 1995年 東京大学大学院客員教授(生命科学専攻分野) 1996年 東京都老人総合研究所部長 2000 年 同研究所副所長 2009年 国立長寿医療研究センター研究所所長 2015年 桜美林大学大学院教授、老年学総合研究所所長 現在に至る
主な著書
2019年 超高齢社会のリアルー健康長寿の本質を探るー(大修館書店)、2012年 超高齢社会の基礎知識(講談社)、2008年 体の年齢事典(朝倉書店)その他多数。

※筆者の所属・役職は執筆当時のもの

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