各論1 様々な臨床病態とフレイルの関連 5.オーラルフレイル~口腔機能低下症:医科歯科連携の視点から
公開月:2021年9月
北海道大学 大学院歯学研究院 口腔健康科学分野
高齢者歯科学教室 准教授
渡邊 裕
1:はじめに
現在の日本の医療介護制度は主に疾病や外傷に対応した制度であり、自然な老化によって徐々に心身の機能低下が進行するような場合、現行の制度では早期に発見し対応することは難しい。特に日本は高齢者人口の割合が28.4%、後期高齢者人口の割合が14.6%、100歳以上の高齢者も8万人を超えた長寿、超高齢社会にある。つまり自然な老化によって徐々に心身の機能低下が進行している高齢者が相当数いる社会である。フレイル対策の目的の1つは、このような高齢者を早期に発見し対応していくことである。
自然な老化の過程では、その人の身体や心理、取り巻く生活および社会の環境にあわせて、身体機能のみならず、精神心理、社会的機能が調和しながら徐々に変化していくもので、そのような自然な老化の中で人は周囲との不調和を感じることは少ない。一方、フレイルは、様々なささいな老化が相互に影響しあって負の連鎖が生じ、悪循環となって、要介護状態や死亡といった不幸な転帰に陥りやすい状態と考えられている1)。見た目では問題ないように見えても、軽度な侵襲やストレスに暴露されると、元の状態に戻ることができないばかりか、身体、精神・心理、社会的な軽微な問題が相互に影響しあって、悪循環を加速させ、日常生活に大きな不具合が生じるような状態といえる2)。つまりフレイル対策とは、自然な老化に抗うのではなく、このような悪循環を断ち切り、自然な老化を支援することではないかと考える。
このようなフレイルに関連する様々なささいな老化の中に、滑舌低下、食べこぼし、わずかなむせ、かめない食品が増える、口の乾燥など、ほんのささいな口の機能低下であるオーラルフレイルがあると考えられている。オーラルフレイルのフレイルへの影響を具体的に考えてみると、前歯の色のくすみや歯並びの乱れ、歯肉の退縮など容姿の問題や食事中の食べこぼし、むせ、食後の痰がらみ、口臭を家族に指摘されたり、会話や電話中に何度も聞き返されたり、などといった自身の老化を実感させるような経験により、周囲との不調和を自覚するようになり、社会との繋がりを避けるようになる。これにより、外食、外出、会話、電話などの頻度が少なくなるだけでなく、それらを楽しむことができなくなる。これにより、孤立することが多くなりうつ傾向となる。また、外出頻度が減少すると、身体機能の低下、栄養状態の悪化、コミュニケーション能力や認知機能の低下、さらにうつ傾向の重度化が進み、悪循環が加速する。これに、友人、親族とのコミュニケ-ション不足による関係性の悪化による孤立、経済的不安などが加わることで、フレイルは回復することが困難な状態に陥るものと思われる(図1)。このような状況にならないようにするには、歯科が容姿の回復や摂食嚥下、会話といった機能の回復、口腔衛生管理を通して、フレイルを予防し、またフレイルにある高齢者に対しては、フレイルから回復できるよう口の健康を通して支援する必要がある。
2:オーラルフレイル
高齢期になると他者との交流が少なくなることが多く、容姿に気を掛けることも少なくなって、口の健康への意識も低下し、定期的な歯科受診をやめてしまったり、セルフケアもおろそかになったりする高齢者は多い。痛みがあったら歯科を受診しようと思っていても、実際に噛めなくなったり、歯がしみるようになったりしても、これくらいは年のせいと諦めて放置してしまい、う蝕や歯周病が悪化するようになる。う蝕や歯周病が悪化すると、硬いものや繊維のあるものが食べにくくなるため、それら食品を食べなくなったり、容姿や口臭などを意識して、大きく口を開けて会話することを避けたりするようになる。口は会話や食事で毎日使うので、その機能は低下することは少ないと思われがちだが、加齢によって着実に低下し、フレイル高齢者は健常者よりも低下していることが日本の地域高齢者5,000名を対象とした調査で明らかになっている3)。
口の機能が徐々に低下し、口のささいなトラブル(滑舌の低下、噛めない食品の増加、むせ、など)が生じているにもかかわらず、放置してしまうと、食欲低下や食品多様性の低下が生じる4)。さらに、本格的に口腔機能が低下し(咬合力低下、舌運動機能低下など)、低栄養、サルコペニアのリスクが高まり、最終的に食べる機能の障害に至る。この一連の現象及び過程を現在オーラルフレイルとして次のように定義している。「老化に伴う様々な口腔の状態(歯数・口腔衛生・口腔機能など)の変化に、口腔の健康への関心の低下や心身の予備能力低下も重なり、口腔の脆弱性が増加し、食べる機能障害へ陥り、さらにはフレイルに影響を与え、心身の機能低下にまで繫がる一連の現象及び過程」5)。このようにオーラルフレイルは、「口に関する"ささいな衰え"が軽視されないように、口腔機能低下、食べる機能の低下、さらには、心身の機能低下まで繋がる"負の連鎖"に警鐘を鳴らした概念」とされ、病名である「口腔機能低下症」と区別されている。
咀嚼しなくても済むような軟らかく、食べやすい食事は、さらに咀嚼機能を低下させるだけでなく、味覚、食感、風味などが損なわれるため、食の楽しみが減り、食欲も減退させる。軟らかい食事は、栄養価が低下すること、脱水を招く可能性が高いことが指摘されている6-10)。また、軟らかい食事への変更がQuality of Life(QOL)の低下に関連するとの報告もある11)。口腔機能の低下は会話や外食の機会を減少させ、滑舌の低下、食べこぼし、わずかなむせ、噛めない食品の増加など "口の衰え"を加速させる。さらに、好物が食べにくくなったり、口の中に痛みがあったりすると、食欲が低下し必要な量の食事が摂れなくなり、栄養のバランスも悪くなるなど栄養状態が悪化する。このような状態が長期間続くと、必要な栄養素が枯渇し、筋肉など身体の組成や機能を保つことが困難になってきて、さらに意欲が低下するという悪循環に陥る可能性がある(図2)。
このような意欲の低下、栄養状態の悪化、筋肉の減少を経て、最終的に生活機能障害に至るといった栄養(食/歯科口腔)から見た虚弱型フローが、平成25年度の老人保健健康増進等事業の研究班よりオーラルフレイルとして提唱された。(図3)12)。
オーラルフレイルについては飯島らが千葉県柏市在住の高齢者2,011人を対象に行った45カ月間のコホート研究(柏スタディ)によって科学的根拠が示されている13)。この研究では、オーラルフレイルを6つの口腔の指標のうち、3つ以上で低下がみられる場合として定義している。その結果、フレイル、サルコペニア、要介護、死亡の発生について、6つの口腔の指標のどれにも該当しなかった者と3つ以上該当したオーラルフレイル該当者とを比較したところ、年齢、性別、手段的日常生活動作、ボディマス指数(Body Mass Index:BMI)、認知機能、うつ傾向、居住形態、既往歴、服薬数を調整してもオーラルフレイル該当者は2年間の身体的フレイル、サルコペニアの発生はそれぞれ、2.41倍、2.13倍、また45カ月間の介護度3以上の要介護認定、全死亡の発生はそれぞれ2.35倍、2.09倍であったとの結果が得られた。つまりフレイルがその発生に関与していることが報告されている要介護状態や死亡の発生との関連だけでなく、フレイル自体の発生、サルコペニアの発生に関しても、オーラルフレイルが関連していることが明らかにされたのである。これらの結果はフレイルや身体能力の低下に先立って、オーラルフレイルが生じていることを示唆しているだけでなく、フレイル、サルコペニア、要介護状態、死へと進行していくなかでも、口の機能の低下が影響している可能性も示唆しており、現在の日本の地域在住高齢者を対象とした研究から得られた結果として、広く注目されることになった。
3:フレイル、オーラルフレイルの予防における医科歯科連携
フレイルの予防には、慢性疾患のコントロール、運動療法、栄養療法、感染症の予防などが重要であるとされている14、15)。糖尿病や高血圧、心臓病、呼吸器疾患などがある場合には、まずこれら慢性疾患のコントロールを行う必要がある。一方、歯周病による口腔内の慢性炎症は、それに対する免疫反応等が全身に波及し、糖尿病16)、虚血性心疾患17)、動脈硬化性疾患、認知症18)などのコントロールの良否や重度化と関連しているとの報告がある。また、現在歯数や咬合、口腔機能と栄養状態や栄養摂取などとの関連も報告されている19-23)。また、歯周病の治療は、口腔局所の慢性炎症を改善するだけではなく、歯や歯周組織を安定化させ、痛みを取り除く。これにより咀嚼機能が回復することで、食事の内容が改善し、糖尿病や動脈硬化性疾患の重度化を予防する可能性がある。つまりフレイル予防のための慢性疾患のコントロールという点で、歯科との連携は重要である。
適切な運動療法を行うと高齢者であっても筋力が維持回復することが明らかにされている。また運動療法は栄養療法とともに行うことで効率よく回復することも明らかになってきている24)。低栄養状態で運動を行っても筋肉を維持できないばかりか、低栄養状態を悪化させることから、筋肉の維持向上に必要なたんぱく質を中心としたバランスの取れた栄養摂取が必要との報告もある。一方、口腔と運動との関連については、咬合や咀嚼機能と歩行速度や転倒との関連が報告されている25-28)。咬合や口腔機能と栄養状態や栄養摂取などとの関連も報告されている20、21)。つまり、咬合や口腔機能は運動機能、栄養状態、栄養摂取とも関連しており、運動療法や栄養療法によるフレイルの予防、回復には咬合や口腔機能の回復が必要であり歯科との連携が必要となる。
高齢者は、貧血や低栄養、細胞の老化によって、免疫が低下しており、インフルエンザや誤嚥性肺炎、尿路感染症に罹患しやすい。これら感染症は重症化すると入院が必要となったり、軽症であっても何度も繰り返すことで徐々に体力が低下し、要介護状態なることもある27)。日頃から適度な運動やバランスのよい食事などにより栄養状態を維持するとともに、マスクや手洗いの徹底など、感染症を予防すること、口腔衛生状態と摂食嚥下機能を良好に保ち、口腔細菌の誤嚥を防ぎ肺炎を予防することなどが、フレイルの予防につながると考える。つまり感染対策においても、歯科との連携は口腔衛生管理とともに、オーラルフレイルや口腔機能低下を予防、改善することでフレイル対策につながると考える。
前述のようにオーラルフレイルは複数の口腔機能が低下した状態で、フレイル1)や要介護状態発生のリスク因子であることが報告されている。フレイルも要介護状態のリスク因子であるが、社会性が複合的に低下した状態である社会的フレイル29)と要介護状態との関連も報告されている。これらを踏まえ、日本の地域在住高齢者を対象者に、口腔機能、社会性、身体機能、栄養状態、認知心理的機能、既往歴、服薬状況について調査を行い30)、身体的フレイルと社会的フレイル、オーラルフレイルとの関係を分析した研究は、社会的フレイルはオーラルフレイルへ直接関連し、オーラルフレイルと社会的フレイルはそれぞれ直接身体的フレイルと関連することを示している。またオーラルフレイルから社会的フレイルへは栄養状態の低下を介して間接的に関連していた。この他にもオーラルフレイルは、服用薬剤数と関連しており、認知機能、身体機能だけでなく社会性や栄養状態、多剤服用といった高齢者の様々な健康問題と関連していた(図4)。これらの結果はオーラルフレイルへの対応は社会的フレイル、身体的フレイル、栄養状態、服薬などの問題に対して、多面的な対応を行っていく必要があることを示している。
以上のように、現在その効果が明らかになっている、慢性疾患のコントロール、運動療法、栄養療法、感染症の予防だけでなく、社会性や栄養状態、多剤服用といった高齢者の様々な健康問題を含めたフレイル対策において歯科との連携は不可欠となっている。
4:その他、オーラルフレイルにおける連携
オーラルフレイルの予防改善には、ささいな口の衰えを早期に発見し、適切に評価して高齢者本人に健康問題として認識してもらうことが重要である。そして歯科治療等によって、それら歯科的問題を取り除く必要がある。しかし、高齢者の中には歯科的な問題がなくなっても、悪化し習慣化した食事を含む生活習慣が改善しない者も多い。つまり悪化した生活習慣を改善するには、口腔機能を改善し、食事や生活習慣を見直し、改善しなければならない19、22、23)。
オーラルフレイルは咀嚼や会話などの機能の低下が注目されがちだが、口腔周囲は容姿への影響も大きく、精神・心理的フレイルや社会的フレイルに与える影響も大きく、それらは相互に影響しあいながら悪化し、改善しにくい状態になっていることが多い。そのためオーラルフレイルの予防改善によるフレイル対策を考える上では、フレイルの多面性を考慮する必要がある(図5)。つまり、オーラルフレイルを予防改善するには、単に口腔機能を維持改善するのではなく、それにより栄養状態および身体機能の改善をはかること、さらに、コミュニケーションや容姿を改善し、さらに認知機能ならびに精神心理的状態の改善、社会性の向上などにつなげるといった多面的、包括的な介入、支援を行う必要がある。これには、本人、家族、歯科、医科だけでなく、看護師、薬剤師、介護士、行政、ボランティア、商店、コンビニエンスストア、飲食店、交通機関、企業などを巻き込んだ地域を包括した取り組み、すなわち地域包括ケアシステムによる対応が必要となる。
重要なことは、高齢者自身がささいな"口の衰え"に気づき、食事や生活を見直すことでフレイルや要介護状態への移行を予防し、自立した望む暮らしを意欲的に生涯続けられるよう、本人が自分事とすることである。また、家族や友人がそれらのことを理解し支援するとともに、歯科と上手にかかわることで、専門的な評価とそれに基づく、専門的なアドバイスを受けて、ともに取り組んでいくことが大切である。オーラルフレイルによる、ささいな口の衰えは口だけの問題でなく、全身の衰えと大きく関わっていること、身体、精神・心理、社会といった多面性を持つフレイルに対して、口腔機能の維持改善だけでなく栄養、運動など包括的な介入が重要であることを、本人、家族、歯科関係者が一体となって、地域においてその予防に取り組んでいかなければならない。
5:口腔機能低下症とオーラルフレイル
平成30年度の診療報酬改定において、高齢者の口腔機能低下に関わる口腔機能管理が保険収載された。この口腔機能低下症にかかる診断は7つの症状(口腔衛生状態不良、口腔乾燥、咬合力低下、舌口唇運動機能低下、低舌圧、咀嚼機能低下、嚥下機能低下)のうち、3項目以上該当する場合とされている31)。オーラルフレイルと共通している項目も2項目(オーラルディアドコキネシスと舌圧)あるが、口腔機能低下症は病名であり、客観的評価をもとに診断され、その他の歯科的検査結果も含め総合的に評価され治療管理が行われる。対してオーラルフレイルは口の健康への関心を高齢期においても継続してもらうためのスローガンであり、これにより歯科において治療が行われるということはなく、歯科への受診の動機にはなるが、基本的にはセルフケアを促すとともに、通いの場や介護予防事業など地域における自主的な活動で対応することが想定されている32)。オーラルフレイルに関する啓発は地域において浸透してきているが、十分普及しておらず、フレイルの啓発や、2020年から開始された後期高齢者の質問票などで広く啓発されていくことが期待されている。
フレイルが身体、栄養の問題だけでなく、精神心理的な問題、社会的な問題を含んでいるように、オーラルフレイルの判定にある2つの主観的評価の低下の背景には、身体機能の低下だけでなく精神心理的、社会的な問題も含まれていることが多く、これらに配慮した対応が必要である。これらは地域の活動や歯科医療だけの対応では限界があることから、地域包括ケアシステムのなかで、住民間、行政を含めた多職種と連携した精神心理、社会的支援が必要となってくるものと思われる。
口腔機能低下症に関して歯科医院では、通常のう蝕や歯周病、義歯等補綴治療を行うことによって、機能回復を行う。この時フレイルや生活習慣病対策といった視点をもって、口腔機能の維持向上を通じて介護予防を患者とともに意識する必要がある。また口腔の健康を通して患者に必要な食事を支援するといった視点も必要である。これは単に栄養の質、量といった問題に介入するだけでなく、外食や会話といった人と人との繋がりに必要な機能を維持し、意欲的な生活を支援することが目的となる。
さらに口腔機能の低下が顕在化し、回復が困難な状況になると、歯科の治療計画は患者の口腔や全身の状態だけでなく、取り巻く社会や生活の現状と今後を予測し、それに配慮したものでなければならない。生涯口腔機能を維持することは困難である。口腔機能低下症に対する管理の中で、その低下の状況を把握しながら、全身、生活などの変化も考慮した対応を行っていく必要がある。この時期の介入の目的は、単にQOLや栄養状態の維持、誤嚥などの予防だけでなく、要介護状態、生活習慣病、認知症の発生、重度化を予防することも含まれてくる。そのため地域の医療や福祉との連携は必須となり、それら関連職種とのコミュニケーションやネットワークづくりが重要となってくる。
6:おわりに
現在の高齢者は団塊の世代と言われ、高度成長の日本を支えた肉体的にも精神的にも強い世代である。団塊の世代が発達期にある時は、現代ほど食事も多様化しておらず、また加工食品も普及していなかったと思われる。つまり発達期から十分に咀嚼し飲み込む必要のある食事を摂取しており、摂食嚥下機能は十分に発達したものと考える。そのような団塊の世代であっても、老化による口の衰えが生じ、オーラルフレイルとなってフレイルや要介護状態への影響がクローズアップされる状況になっている。これ以降の世代は、成長期にはすでに食事は多様化し、あまり咀嚼を必要としない食事を行っていたと思われることから、顎口腔の形態的、機能的発育が、団塊の世代よりも十分でない者が多い。今後高齢期を迎える、多様化した食生活を成長期から続けてきた世代は、より早い段階から、オーラルフレイルとなり、それによる問題に早期から直面する可能性が高く、今以上に深刻な問題となる可能性がある。これら次の世代の人々は自分の歯を多く残していることから、その管理のために定期的に歯科を受診している人が多い。今後は定期受診時にう蝕や歯周病の治療を行うだけでなく、オーラルフレイルの評価や予防にも早くから取り組んでいく必要があると考える。
現在、発達期にある児童の口の状況をみると、先天的に顎骨は小さく、歯が少なく、また歯が並ぶ顎のスペースがないため、歯並びが悪くなったりと、形態的に口腔機能が十分獲得できない状況にある。また、食生活も完全に多様化しており、加工食品を摂取する機会も多く、アレルギーなどで食品の種類が限られる児童も多いことから、食事において口腔機能の発達が十分獲得できない状況にある。すなわち発達期が終わった直後からオーラルフレイルである者もいる可能性がある。
つまり現代においては、オーラルフレイル対策は発達期から行う必要があり、その中でも食事は顎顔面口腔の形態的、機能的な発達に重要である。発達期後の形態回復は不可能であることから、家庭での食事や歯科治療によって発達を促す必要がある。例えば咀嚼を必要とする食品を積極的に取り入れたり、健口体操や口腔筋機能療法などを行ったりして、顎顔面口腔の形態的、機能的発達を促す。また咬合誘導や歯列矯正などによって、形態的、機能的な発達を修正する必要があるかもしれない。つまり、オーラルフレイル対策は高齢者や成人だけの問題ではなく、小児、発達期の領域にも及ぶ問題であって、行政、教育、医療機関が総力で取り組まなければならない問題なのである。
文献
プロフィール
- 渡邊 裕(わたなべ ゆたか)
- 北海道大学 大学院歯学研究院 口腔健康科学分野
高齢者歯科学教室 准教授 - 最終学歴
- 1994年 北海道大学歯学部卒
- 主な職歴
- 1994年 東京都老人医療センター 1995年東京歯科大学 2012年 国立長寿医療研究センター 2016年 東京都健康長寿医療センター 2019年 北海道大学 現職 北海道大学大学院歯学研究院口腔健康科学分野 高齢者歯科学教室准教授
- 専門分野
- 老年歯科学、オーラルメディシン、口腔外科学