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高齢者とテクノロジー

 

公開月:2022年11月

廣瀬 通孝(ひろせ みちたか)

東京大学名誉教授
東京大学先端科学技術研究センターサービスVRプロジェクトリーダー


 「コンピュータは苦手で......」とは、高齢者の専売特許である。たしかに新しいものに手を出すのは若者であり、高齢者はともすると受け身である。

 しかしながら、テクノロジーとは道具の延長にあって、われわれが不足する部分を補うものである。だから、元気な若者よりは高齢者のほうがテクノロジーの福音を享受できるという見方もできる。高齢者よ、もうちょっと積極的にテクノロジーと向き合えと言いたい。

 コンピュータは小型化して、メガネや入れ歯のような存在となりつつある。加齢による身体の老化をある程度は補綴(ほてつ)することができるだろう。デジタルは身体拡張のツールであり、健康寿命を大きく延長することに貢献しよう。

 特に、人間は社会性のある生き物なので、個人の健康もさることながら、どう社会とつながり続けるかが大事である。社会とのコミュニケーションを取り続けることによって、身体を使い、脳を使い、能動的に動くことが重要なのである。

 著者の年齢になると、同窓会の出席者が増えてくる。われわれの場合、コロナ前は年に1度の開催であったが、コロナに突入後Zoomによるリモート開催になったものの、かえって気楽に集まりやすいこともあって月1のペースで行われるようになった。頑張った幹事に感謝である。

 友人のお茶の先生も、お茶の教室の開催に大きな制約がかかり、LINEの同時通話TV会議機能を活かし、リモート開催に踏み切った。結果、遠方の会員も頻度高く参加できるようになり、フランスの生徒さんも毎週参加が可能になったとのこと。最高齢者は85歳とか。

 この2つの事例はいくつかの幸運が重なっている。たとえば、メンバーがほどほどのPCリテラシーを持っていたとか、同居の若い家族がスマホの使い方を教える余裕があったとか。しかし何より大事なことは、ある程度の支援があれば、こういうソリューションもあるということである。

 もちろん現在のリモート技術は十分でなく、従来に比べて不自由が多いことも事実である。ただ、全部止まるよりはよいではないか。時には文句を言いながら使うことも、それはそれで刺激になってよいのではないかとさえ思う。

 本来、テクノロジーはプラグマティックなものである。できることから始めてみればよい。道具はいろいろそろっているのだから。

※プラグマティック(pragmatic):実用的な、実際的な

筆者

ひろせみちたか氏の写真
廣瀬 通孝(ひろせ みちたか)
東京大学名誉教授
東京大学先端科学技術研究センターサービスVRプロジェクトリーダー
略歴
1977年 東京大学工学部産業機械工学科卒業、1979年 東京大学大学院工学系研究科修士課程修了、1982年 東京大学大学院工学系研究科博士課程修了、工学博士、東京大学工学部産業機械工学科専任講師、1983年 東京大学工学部産業機械工学科助教授、1999年 東京大学工学系研究科機械情報工学専攻教授、東京大学先端科学技術研究センター教授、2006年 東京大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻教授、2018年 東京大学バーチャルリアリティ教育研究センターセンター長、2020年より東京大学先端科学技術研究センターサービスVRプロジェクトリーダー
専門分野
システム工学、ヒューマンインタフェース、バーチャルリアリティ

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公益財団法人長寿科学振興財団発行 機関誌 Aging&Health 2022年 第31巻第3号(PDF:5.4MB)(新しいウィンドウが開きます)

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