健康長寿ネット

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QOLを高める50代・60代から始める運動

公開日:2016年7月25日 18時00分
更新日:2020年2月20日 10時03分

現役世代の健康不安(平成19年労働者健康状況調査第28表より)

 厚生労働省の平成19年労働者健康状況調査の「労働者の将来の健康状態に対する不安」によると、表1が示す通り労働者全体で将来の健康状態に対して「大変不安を持っている」割合は10.9%、「少し不安を持っている」割合は70.1%であり、「不安を持っている」労働者の割合は81.0%でした。平成14年の「不安を持っている」労働者は76.0%であり、5.0%増しています1)

 また、年代別にみると、「不安を持っている」労働者の割合は50~59歳の男性では、86.6%、50~59歳の女性では88.6%、60歳以上の男性では81.7%、60歳以上の女性では86.2%であり、全体の割合に比べて50代、60代では将来の健康状態への不安が高いことがわかります1)

表1:将来の健康状態への不安の有無及び程度別労働者割合(単位:%)1)より一部抜粋
区分 不安を持っている 大変不安を持っている 少し不安を持っている 不安は持っていない
平成14年 76.0 8.9 67.1 22.7
平成19年 81.0 10.9 70.1 18.1
 50~59歳男性 86.6 12.3 74.3 11.8
 60歳以上男性 81.7 6.7 75.0 16.9
 50~59歳女性 88.6 11.6 77.1 10.5
 60歳以上女性 86.2 7.2 79.1 11.5

運動によるQOLへの効果

 QOL(Quality Of Life )とは生活の質のことであり、QOLが高いということは、身体的・精神的にも健康で充実した毎日を活き活きと生活できる状態です。QOLを保つためには、身体的・精神的な健康を維持することが重要です。

 運動を行うことは、加齢にともなって低下していく筋力や減少していく筋肉量を予防し、立つ・歩くといった姿勢保持や歩行能力の維持・改善につながります。また、運動をすることは生活習慣病の予防となり、身体機能の低下を予防することができます。運動によってストレスの発散や達成感・爽快感を感じることは、精神的な安定をもたらすことにもつながります。

 運動を行うことは身体的・精神的な機能の維持・改善に役立ち、QOLを保つことになるのです。

身体活動がセルフエフィカシー(自信)を高める

 セルフエフィカシーとはある行動をうまく行うことができる「自信」のことを指し、自己効力感とも言われます。セルフエフィカシーを強く感じることができると、努力を惜しまずにその行動を行う可能性が高まり、失敗したり、困難なことがあったりしても続けることができると考えられています2)

 セルフエフィカシーを高めるためには、うまくできたという「成功体験」を得ることと、自分と似た条件のモデルとなる人が成功していることを見る・聞くなどして自分にもできそうだと感じる「モデリング」を利用することがポイントとなります2)

 身体活動においても、セルフエフィカシーを感じている人ほど、身体活動を行う可能性が高くなり、身体活動で「成功体験」を得ることと「モデリング」を利用することが身体活動を高めることにつながります2)

 厚生労働省の「アクティブガイド―健康づくりのための身体活動指針―」では、身体活動の目標は18~64歳は1日合計60分間、65歳以上は1日40分間、元気に身体を動かすこととされており、さらに筋力トレーニングやスポーツなどの運動が活動の中に含まれていると効果的であるとしています。また、1日の目標歩数は8,000歩とされています3)

 この目標値をすでに達成しており、身体活動においてセルフエフィカシーを高く感じていれば、身体活動を行う可能性は高くなります。身体活動が普段少ない方が身体活動へのセルフエフィカシーを高めるためには、自分と似ている条件の人で、身体活動や運動を行っていて成功している人をみつけ、運動をうまく続けるコツや運動を続けることで得られるメリットなどを聞き、「自分にもできそう」という「モデリング」を利用すること。まずは、「いつもより多く歩いてみる」、「階段を使ってみる」、「家事や仕事の合間に体操をしてみる」など、すぐに達成できそうなことからはじめ、達成できたら次の目標値を設定し、段階的に達成していきながら「成功体験」を積み重ねていくことが大切です2)

50代・60代から始める運動とは

 50代・60代の中高年から始める運動としては、まずは誰でも手軽に始めることができ、身体への負荷も少ないウォーキングがおすすめです。ウォーキングは歩く速さや距離、コースなどを調整することで負荷も調節しやすく、有酸素運動であるので全身を使い、心肺機能の向上や身体機能の向上が期待できます。

 65歳以上の高齢者では散歩やウォーキングを1日20分程度行うことが、健康日本21での運動に対する高齢者の個人目標の例として挙げられています4)

高齢者夫婦がウォーキングを行っている写真。生活の質(QOL)を高めるには、身体的・精神的な健康を維持することが重要。高齢者のQOL向上には運動を行うことで加齢により低下していく筋力や減少する筋肉量を予防し、姿勢保持や歩行能力の維持・改善につながる。50代・60代の中高年から始める運動としては、身体への負荷も少ないウォーキングがおすすめ。

 他にも、有酸素運動では水中ウォーキングや体操などもはじめて行う運動としてはおすすめです。有酸素運動と加えて、筋肉の柔軟性、関節の可動性を促すストレッチングや下肢や体幹の筋力トレーニングを行い、筋力維持・改善を行うことも、運動を続けるための丈夫な足腰を維持するために有酸素運動と組み合わせて行いたい運動です。

高齢者がストレッチングを行っている写真。

 手軽に行える筋力トレーニングとしては、椅子スクワットと呼ばれる、椅子から立ち上がって再び座る運動や、椅子に座った状態や立った状態での足踏み、椅子の背を持って立った状態でのつま先立ちなどの運動がおすすめです5)

参考文献

  1. 平成19年労働者健康状況調査の概況 厚生労働省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. セルフ・エフィカシーを高めるポイント 厚生労働省e-ヘルスネット(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. アクティブガイド―健康づくりのための身体活動指針― 厚生労働省(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  4. 健康日本21 身体活動・運動 厚生労働省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  5. 安全かつ効果的に「足腰」を鍛える方法 厚生労働省e-ヘルスネット(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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