更年期の運動の効果
公開日:2016年7月25日 17時00分
更新日:2019年2月 1日 18時00分
更年期とは1)
更年期とは、加齢にともなう性ホルモンの分泌量低下によって様々な体調の変化や精神的な不調がみられる時期です。性ホルモンの分泌量に関係するため男女ともに起こり、一般的には40代以降にみられるとされています。
女性では、閉経前後の約10年間に卵巣ホルモンのエストロゲンの分泌が急激に減少することで、身体的や精神的な様々な変化が急激に起こりはじめます。男性では、睾丸ホルモンのテストステロンの分泌の減少により、身体的な症状や精神的な症状がみられますが、個人差が大きく、また、女性と比べて性ホルモンの減少が緩やかであり、身体的・精神的な変化も緩徐に現れるため、女性ほど更年期の変化がみられにくくなります1)。
更年期にみられる症状により、日常生活に支障が出る場合はホルモン剤や漢方薬などでの薬物治療や、生活習慣の改善などが行われます。更年期に現れる変化について良く知り、適切な対処を行うことや辛い時は休むなどして上手くつきあっていくことが大切です。
更年期の身体変化と症状1)
更年期では、のぼせ、顔のほてり、汗が噴き出る、手足の冷え、頻脈、動悸、息切れ、耳鳴り、めまい、頭痛、肩こり、疲れやすい、皮膚の乾燥、手足のしびれ、頻尿、尿漏れ、お腹の張りなどの自律神経失調の身体的症状や、イライラする、不安、意欲の低下、抑うつ、不眠などの精神的症状がみられます。
女性ではエストロゲンの急激な減少により、高脂血症や高血圧、虚血性心疾患などの生活習慣病や、骨粗鬆症、脳梗塞、認知症などの疾患にかかるリスクも高くなります。
更年期の運動の効果
更年期では、性ホルモンの急激な減少による様々な身体的・精神的な変化や症状が現れ、生活習慣病を発症するリスクも高くなります。更年期は男性にも女性にも起こる加齢にともなう身体の変化のひとつとして捉え、更年期へと入る前から、栄養バランスの整った食事と運動習慣で生活習慣を整え、更年期で起こる変化に備えておくことが大切です。
更年期女性に対する運動の効果を報告した国内外の研究では、閉経前の女性のランニング程度の運動が骨密度を維持向上させること、日頃、座位中心の生活スタイルの女性がレジスタンス運動を行うと筋力の向上、血中脂質、骨機能への効果があること、更年期についての知識を得たうえで運動を行うと、しびれや感覚異常、イライラ感に効果があることなどが報告されています2)。
運動を行うことで爽快感や達成感を味わうことができ、ストレスの発散やリラックス効果を得られ、睡眠リズムを整える作用もあります3)。有酸素運動であるウォーキングは体力・持久力の向上や骨密度の改善を促し、レジスタンス運動は筋力の維持向上などの効果が得られます4)。
運動を継続することで身体的・精神的な良い変化がみられるということを知ること、また、実際に運動を行って自らの良い変化を実感することは、積極的に運動を続けることにもつながり、更年期を前向きにとらえることができるようにもなります。
更年期にみられる変化を知り、更年期前から運動習慣を持って健康的な身体づくりを意識すること、更年期は生涯に起こる一次的な変化と前向きにとらえて、将来的な健康を目指して運動を楽しみながら継続することが重要といえるでしょう。
更年期の運動は何をしたらよいか4)5)
厚生労働省の健康づくりのための身体活動基準2013では、18~64歳の身体活動(生活活動・運動)の基準として、「強度が3メッツ以上の身体活動を23メッツ・時/週行う。具体的には、歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を毎日60分行う。」とされています。
歩行は3.0メッツであり、同等の生活活動には、犬の散歩をする、自転車に乗る、そうじをするなどがあります。
18~64歳の運動量の基準としては、「強度が3メッツ以上の運動を4メッツ・時/週行う。具体的には、息が弾み汗をかく程度の運動を毎週60分行う。」とあります。
3メッツ以上の運動には、ボウリング、社交ダンス、自分の体重を重りとする軽い筋力トレーニング、ゴルフ、ラジオ体操第一、卓球、ウォーキングなどがあります。
上記の身体活動、運動を達成することができることが理想ですが、運動の習慣の全くない方が、いきなり運動の目標を達成することは難しいため、まずは、日常生活の中でプラス10分多く身体を動かすことを心がけることを健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)で呼びかけています。
具体的には、歩く時に歩幅を大きくとって速歩きする、買い物や通勤、子どもや孫の送迎の際には歩行や自転車で移動する、仲間と一緒に体操やスポーツを行う、散歩や外出など外へ出て歩く機会をつくる、テレビを見ながら筋力トレーニングやストレッチを行うなどがおすすめです。