心拍数と運動強度
公開日:2016年7月25日 15時00分
更新日:2023年7月12日 13時49分
心拍数とは
心拍数とは、一定の時間内に心臓が拍動する回数のことで、通常は1分間の回数を指します1)。
心臓から送り出される血液によって生じた拍動が動脈に拍動として現れたものが脈拍で、心拍と脈拍はほとんど同じとなります。しかし、不整脈がある場合は心臓が拍動していても、動脈へ拍動が伝わらない場合もあり、心拍数と脈拍数が一致しないこともあります1)。
心拍数の測り方
心拍数は胸にセンサーをつけて心電図や心拍計で測定することで正確に測ることができますが、一人でも簡単に測る方法として、手首の親指側に指を添えて脈拍の回数を数える方法があります1)。
心拍数、脈拍数には個人差があります。自分の普段の脈拍数を知るには、リラックスした状態で、手首の親指側を通る橈骨動脈(とうこつどうみゃく)に人差し指、中指、薬指を3本並べて当て、1分間の脈拍の回数を数えます。30秒間数えて2倍する方法もあります(図1)2)。
厚生労働省の「運動基準・運動指針の改定に関する検討会 報告書 平成25年3月」では、一般市民に対する脈拍測定方法の説明例として、「利き手の人差し指・中指・薬指の3本の指で、利き手でない側の手首の内側にある動脈(親指側で拍動が触れるところ)を10 秒間図り、その数値を6 倍すると1 分間の脈拍数となる。脈拍計等の様々な市販の機器を活用してもよい。」としています3)。
通常、健康な成人であれば、安静時の脈拍数は1分間に約60~100回であり、加齢とともに、最大に発揮できる心拍数は少なくなっていく傾向にあります1)。
主観的運動強度(RPE、ボルグスケール)と心拍数の関連
主観的運動強度(RPE:rating of perceived exertion)は自覚的運動強度とも呼ばれます。1962年にスウェーデンの心理学者により開発されたBorg(ボルグ)スケールは、運動を行う本人がどの程度の疲労度、「きつさ」を感じているかを測定する指標です。ボルグスケールでは、「非常に楽である」から「非常にきつい」までの自覚症状を6~20の数値で表されています(図2)2)3)。
筋収縮に酸素が消費される有酸素運動では、筋収縮に酸素が消費されない無酸素運動に比べて運動強度が低く、比較的安全に運動を行うことができます。最大酸素摂取量と運動強度との関係性は様々な学説があり、その一例に有酸素運動から無酸素運動に変わるATポイントと呼ばれる範囲の運動強度は、最大酸素摂取量(%)の40~60%、ボルグスケールでの11.「楽である」から13.「ややきつい」程度に当たり、生活習慣病の予防などの効果が得られて安全に行える運動強度とされています。「息がはずむ程度の運動」と表現されることもあります。ボルグスケールでの「きつい~かなりきつい」と感じる強度の運動は、生活習慣病患者等では避けた方が良いとされています2)3)。
ボルグスケールは年代別による脈拍数で表すこともでき、運動強度を推測する際のひとつの指標として用いることができます(表1)。
ただし、脈拍数には個人差があることに注意し、持病や服薬がある場合には運動を始める前に主治医に相談するようにしましょう2)3)。
強度の感じ方 (Borg Scale) | 評価 | 60歳代 | 50歳代 | 40歳代 | 30歳代 | 20歳代 |
---|---|---|---|---|---|---|
きつい~ かなりきつい |
× | 135 | 145 | 150 | 165 | 170 |
ややきつい | 〇 | 125 | 135 | 140 | 145 | 150 |
楽である | 〇 | 120 | 125 | 130 | 135 | 135 |
心拍数から運動強度を求める方法として、カルボーネンの式があり、運動強度(%)=(運動時心拍数-安静時心拍数)÷(最大心拍数-安静時心拍数)×100で求めることができます。最大心拍数は、「最大心拍数=220-年齢」で一般的に求めることができます。高齢者の場合は、「最大心拍数=207-(年齢×0.7)」の式を用いる方法もあります。