筋肉の種類とその特徴
公開日:2016年7月25日 12時00分
更新日:2023年8月16日 13時53分
筋肉の種類1)2)
筋肉には横紋筋と平滑筋の2つの種類があります。横紋筋は横縞模様のある筋肉で、平滑筋には横縞がありません。
横紋筋には骨格筋と心筋があります。骨格筋は姿勢を保ち、身体を動かしている筋肉で、一般的に筋肉と呼ばれているものは骨格筋を指しています。心筋は心臓を構築している筋肉で、心臓以外の場所には存在しません。
平滑筋は内臓や血管の壁に存在し、緊張を保つことや収縮によって内臓や血管の働きの維持を行っています。
骨格筋は運動神経支配であり、自分の意志で動かすことができますが、心筋や平滑筋は自律神経支配であり、自分の意志で動かすことはできません。骨格筋のように自分の意志で動かすことのできる筋肉を随意筋、心筋や平滑筋のように自分では動かすことのできない筋肉を不随意筋といいます(図1)。
筋肉の特徴
私たちの体を動かしている骨格筋の特徴について詳しくみていきます。骨格筋を構成している筋繊維は2種類あり、それぞれ遅筋、速筋といいます。
遅筋の特徴
遅筋には、酸素をたくわえるミオグロビンというたんぱく質が多く含まれるため赤い色をしており、赤筋とも呼ばれます。酸素をたくさん蓄えているためエネルギーを多く作り出すことができます。
収縮スピードが遅く、瞬時に大きな力を発揮することはできませんが、繰り返し収縮しても疲れにくく、長い時間にわたって同じ程度の力を発揮し続けることができます。年をとっても衰えにくい筋肉です。遅筋を多く持つ魚は広い海を回遊するマグロやカツオに代表され、長距離選手タイプといえます。
速筋の特徴
一方、速筋は白っぽい色をしているので白筋とも呼ばれます。収縮スピードが速く、瞬時に大きな力を発揮することができますが、収縮を保ちにくく疲れやすいという特徴があります。20歳前後から速筋の萎縮が起こるといわれており、衰えるのがはやい筋肉です。速筋を多く持つ魚は近海の海底で普段はじっと身をひそめ、獲物を追いかけるときや、敵が来たときには素早く動くヒラメに代表され、短距離選手タイプといえます(図2)。
筋肉の働き
抗重力筋・主動筋・拮抗筋
骨格筋は骨や皮膚、他の骨格筋に付着して、関節や脊柱などの骨格を動かす働きをしています。その他にも、重力に抗して姿勢を保つこと、筋収縮を行うことによってエネルギーをつくりだすこと、内臓を保護することなどの働きをしています3)。
重力に抗して姿勢を保つために働く筋肉は抗重力筋と呼ばれ、体幹の筋肉である腹筋・背筋と下肢の筋肉である殿筋・大腿四頭筋・下腿三頭筋などがあります。加齢による筋力低下は、下腿三頭筋や殿筋などの下肢の筋肉の筋力低下が著明にみられるため、歩行能力や立位機能を保つためには、抗重力筋の筋力トレーニングは有効です4)。
身体を動かすときに、その動きを行うために主に働く筋肉は主動筋と呼ばれ、主動筋と反対の動きをする筋肉は拮抗筋と呼ばれます3)。例えば、膝を伸ばす動きを行う主動筋は大腿四頭筋であり、拮抗筋は膝を曲げる筋肉であるハムストリングスです。主動筋、拮抗筋どちらの筋力が低下してもバランスが崩れて運動の機能低下をもたらすので、筋力トレーニングは運動に関わる筋肉をバランスよくトレーニングすることも重要です。
筋力・筋持久力5)
身体の動きには一回の収縮で最大の力を発揮することのできる筋力と運動を持続するために繰り返し筋肉が収縮することのできる筋持久力とが必要です。
筋力は一回に出すことのできる力が大きいけれども疲労しやすい速筋に関係しており、筋持久力は一回に出せる力は小さいけれども、長く収縮し続けることのできる遅筋に関係しています。
筋力、すなわち速筋を鍛えるためには、レジスタンス運動(負荷をかけて繰り返し行う運動)が適しています。レジスタンス運動を行うと筋繊維が傷つき修復されます。修復過程で元の筋肉より太くなるので繰り返し行うことによって徐々に筋肉が大きくなり、力を発揮できるようになります。
筋持久力、すなわち遅筋を鍛えるためには有酸素運動が適しています。酸素を取り込んで筋肉を働かす有酸素運動によって、遅筋の周囲の毛細血管の酸素を供給できる力を高めることで、持久力を高めることができます(図2)。
参考文献
- 神戸大学附属図書館 デジタルアーカイブ 「学内研究成果」 004筋組織
- 松野丈夫 等編 標準整形外科学 第12版 骨格筋の構造と機能 79p