糖尿病治療の食事レシピ
公開日:2016年7月25日 06時00分
更新日:2019年2月 1日 18時18分
糖尿病の食事・食材・調理のポイント
糖尿病の食事
糖尿病とは膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの作用不足によって、血糖値の高い状態が続く病気です。血糖値の急上昇の抑制や血糖値のコントロールをするために食事が大事な役割を果たします。
糖尿病の食事のポイント
- 適正エネルギーを守る
- 栄養素のバランスのとれた食事を摂る
- 1日3食を規則正しい時間に食べる
- 1食あたりの脂質の適量を把握し、良質の油を摂取する
- 食物繊維は1日20gを目標に積極的に摂取する
- 間食は控える
- アルコールは控える
- 塩分を控える
- ゆっくり食べる
1.適正エネルギーを守る
自分の適正エネルギーを守ることは血糖値の上昇を抑えるだけでなく、肥満の解消や合併症の進行を抑えることができます。医師の指示で摂取カロリーが出ている場合は、そちらを目安に食事をしましょう。
適正エネルギーの範囲内で3回の食事量は均等にします。適正エネルギーの範囲内でも1日2食にし、夕食を大量に食べてしまうと食後血糖値の上昇を引き起こすだけでなく、肥満の原因にもなり効果があらわれません。
適正エネルギーの求め方
標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22
1日の適正エネルギー=標準体重(kg)×25~30kcal
2.栄養素のバランスのとれた食事を摂る
糖尿病診療ガイドラインでは炭水化物、たんぱく質、脂質の比率を理想的な比率にします1)。
三大栄養素の理想的な比率
- 炭水化物 50~60%
- たんぱく質 20%以内
- 脂質 20~30%
血糖値を上げるのは白米やパン、麺類などの主食、果物、菓子類、清涼飲料水、砂糖など炭水化物(糖質)ですが、極端な糖質制限は、短期間(1年未満)はできるが、長期間の継続は困難です。糖尿病の食事は一生涯継続していくので、無理なく継続できる食事のバランスにしていきます。
また、たんぱく質の過剰摂取は腎臓への負担、動脈硬化をはじめ心疾患の発症リスクも高まります。
3.1日3食を規則正しい時間に食べる
1日3食の食事時間を決めて食事をするようにします。食事の間隔を5~6時間を目安にすると、食べ過ぎ防止や血糖値を安定させるだけでなく、インスリンを分泌する膵臓の負担を軽減します。寝る2~3時間前に夕食を済ませると、肥満予防になります。
また、夜10時以降の食事は肥満の原因になるので、昼食と夕食の時間が空いてしまう時は夕方補食を補い、夕食は補食で補いきれなかった栄養素を補うようにします。
4.1食あたりの脂質の適量を把握し、良質の油を摂取する
肉や乳製品、卵に含まれる脂肪は飽和脂肪酸が多く、動脈硬化の原因にもなるLDL(悪玉)コレステロールを上昇させます。魚に含まれるDHAやEPAなどのオメガ3脂肪酸やオリーブオイルなど良質な油を使用します。
5.食物繊維は1日20gを目標に積極的に摂取する
食物繊維は満腹感を与えるほか、消化吸収を緩やかにし、血糖値の上昇を抑える働きがあります。
6.間食は控える
間食はできるだけ控えますが、食べる場合は1日1回、昼食と夕食の間に取り入れます。清涼飲料水や菓子類は糖質も多いので、ヨーグルトや果物がオススメです。間食を補う時は1日の適正エネルギー量に含めて、昼食や夕食でエネルギーを調整します。
7.アルコールは控える
アルコールは塩分やエネルギーの多いおつまみが欲しくなり、1日のエネルギーがオーバーしやすくなるので、なるべく控えます。
8.塩分は控える
塩分の摂り過ぎは、高血圧を招き合併症のリスクも高まります。
9.ゆっくり食べる
ゆっくり食べることで、血糖値の急上昇を抑えるほか、20分以上かけてゆっくり良く噛んで食べると、満腹感が得られるため食べ過ぎを防ぎます。
食材のポイント
食物繊維が多く、低脂肪、ビタミン、ミネラルを含む食材が適正エネルギーのコントロールや血糖値の上昇を抑えてくれます。
糖尿病治療に適した食材
- きのこ類
- 海藻類
- 野菜
- 押し麦・もち麦
きのこ類
低カロリーで食物繊維が多く含まれています。きのこに含まれるβ-グルカンは胃や腸で膨らむので満腹感も得られ、お通じの調子も整います。
海藻類
低カロリーで食物繊維、ビタミン、ミネラルを多く含みます。めかぶのネバネバは血糖値の上昇を緩やかにしてくれます。
野菜
低カロリーで食物繊維が多く、糖質や脂質の代謝に必要なビタミンやミネラルが含まれています。ほうれん草や小松菜などの緑黄色野菜は抗酸化作用があるβ-カロテン、ビタミンC、ビタミンEを含み動脈硬化などの生活習慣病を予防します。
ただし南瓜やれんこん、芋類は糖質が多い野菜なので、食べ過ぎは注意が必要です。
押し麦、もち麦
押し麦やもち麦には水溶性食物繊維のβ-グルカンが多く含み、糖の吸収を抑える働きがあるので、食後血糖値の上昇を抑えてくれます。100g当たり水溶性食物繊維を6g、不溶性食物繊維を3.6g、合計9.6g含みます。精白米では水溶性食物繊維がほとんど含まれず、不溶性食物繊維が0.5gで合計0.5gなので、押し麦は精白米の約20倍食物繊維を含んでいます。
糖尿病治療の食事の調理のポイント
砂糖やみりんなど糖質を多く含む調味料を控える
調味料の糖質は吸収しやすいので、血糖値が上がりやすいです。調味料の中でも比較的エネルギーが高いです。
蒸し物や煮物を取り入れる
油の使用量が少なくて済むので、摂取カロリーをコントロールしやすいです。
野菜や少し固めに茹で、少し大きめに切る
野菜は小さく切り、柔らかく調理をすると食べやすくなるため、噛む回数が少なくなり、食べるペースが早くなってしまいます。ゆっくり良く噛んで食べることで満腹感が得られ、血糖値の上昇を緩やかにできます。
だしをきかせ、薄味に調理する
味の濃い料理は食が進み、主食の過食につながります。また減塩にすることで、高血圧予防になり、糖尿病の合併症の予防にも役立ちます。
酢やかんきつ類を利用する
酸味を利用すると味にメリハリがつき、減塩ができます。また酢には血糖値の上昇を抑える働きや脂肪燃焼に役立ちます。
糖尿病治療の食事レシピ
レシピ1 きのこご飯
材料(4人分)
- 精白米 1合
- もち麦 50g
- まいたけ 100g
- しめじ 100g
- 油揚げ 1/2枚
- A顆粒だし 小さじ1/2
- A料理酒 大さじ1
- Aみりん 大さじ1
- Aしょうゆ 大さじ1/3
作り方
- 米は洗ってざるにあけ、水気を切ります。
- まいたけ、しめじは根元を少し切り落とし、半分くらいの長さに切りほぐします。
- 油揚げは熱湯をかけ、油抜きをし、水気を切ってから細切りにします。
- 炊飯器に米を入れ1合目まで水を入れ、もち麦を入れさらに100ml水をプラスします。まいたけ、しめじ、油揚げ、調味料Aを入れ炊きます。
- 炊けたら全体を混ぜ合わせ、盛り付けます。
レシピ2 もずくとトマトの黒酢和え
材料(2人分)
- もずく 120g
- トマト 中1/2個
- 黒酢 大さじ1
- 砂糖 小さじ1/2
- しょう油 小さじ1/4
作り方
- もずくは水洗いをしてざるにあけます。
- トマトはさいの目状に切ります。
- 黒酢、砂糖、しょう油を合わせます。
- ボールにもずく、トマト、3を入れ全体を混ぜ合わせ、お皿に盛り付けます。
レシピ3 エビとパプリカのガーリック炒め
材料(2人分)
- エビ 100g
- 赤パプリカ 30g
- 黄パプリカ 30g
- ピーマン 30g
- 長ネギ 20g
- にんにく 1片
- ごま油 大さじ1
- 顆粒中華だし 小さじ1
- 塩 少々
- こしょう 少々
作り方
- 赤パプリカ、黄パプリカ、ピーマンは乱切り、長ネギは斜め切りにします。
- にんにくはみじん切りにします。
- フライパンにごま油をひき、にんにくを入れ弱火で香りが出できたらエビを入れ、中火で炒めます。
- エビに火が通ってきたら1を入れ、中華だし、塩、こしょうで味を整え、お皿に盛り付けます。
参考文献
- 糖尿病診療ガイドライン2016 日本糖尿病学会
- 日本食品標準成分表 2015年版(七訂) 文部科学省