脂質異常症治療の食事レシピ
公開日:2016年7月25日 05時00分
更新日:2019年2月 1日 17時43分
脂質異常症の食事・食材・調理のポイント
脂質異常症の食事
脂質異常症とは血液中の脂質、つまりコレステロールや中性脂肪の濃度が高まった状態のことです。
コレステロールが上がる原因
- 遺伝的素質がある
- 食生活や生活習慣による
- コレステロールが上がる疾患がある
この中で、一般的なものは食生活や生活習慣によってコレステロールを上がることがあります。食事からの摂取エネルギーを多くとりすぎると、肝臓で合成されるコレステロールが増えるので、血中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)も増えます。
また、コレステロールを合成する材料は、脂質だけでなく、糖質も分解されて材料となるので、主食やお菓子、アルコールの過剰摂取もLDLコレステロールを増やす原因にもなります。
食べ過ぎや飲み過ぎにより食事からコレステロールを摂り過ぎてしまうと、体内でコレステロールを合成する量を調整し、余分なコレステロールを体外へ排出しますが、コレステロールが高い食品ばかり摂り続けてしまうと、調整ができず、LDLコレステロールが増えていきます。
なお、コレステロールが上がる疾患としては糖尿病、甲状腺機能低下症、閉塞性黄疸(肝臓の病気)、ネフローゼ症候群などが挙げられます。
コレステロールを下げる食事
総摂取エネルギーの適正化
まずは、食事からの摂取エネルギーを適正にすることが重要です。
摂取エネルギーの計算方法
適正エネルギー摂取量=標準体重×25~30kcal
標準体重=身長(m)×身長(m)×22
栄養素配分の適正化
普段の食事において、栄養バランスの良い食事を心がけます。
炭水化物 60%
炭水化物はエネルギー源となる、ご飯、パン、麺類です。
体重をコントロールするときは、主食量を減らすと減量効果が現れます。
ご飯の摂取カロリーの目安
- ご飯茶碗に軽く1杯 100g=約160kcal
- ご飯茶碗普通盛り1杯 150g=約250kcal
- ご飯茶碗多め1杯 180g=約290lkcal
また、うどん1玉、食パン6枚切り1枚、じゃがいも中1個が1食当たりの炭水化物の摂取目安量です。
たんぱく質 15~20%
動物性肉より魚肉、大豆たんぱく質を多くとります。
魚は1日1回主菜に、大豆、大豆製品は1日1回以上取り入れます。
脂肪20~25%
飽和脂肪酸(動物性脂肪)を少なくし、植物性、魚肉性脂肪の良質の油を選びます。ショートニングやマーガリンなどトランス脂肪酸はLDLコレステロールを増やすので、摂取を控えます。
コレステロール 1日300mg以下
鶏レバー、たらこ、マヨネーズ、卵・バターなどを使った料理や、菓子類を、今より減らします。
食物繊維 25g以上
緑黄色野菜や淡色野菜、海藻、きのこ類など1日5品を目安に摂取します。
アルコール 25g
アルコールの摂取は他の合併症を考慮する必要があります。
アルコールを摂取すると食欲が増し、摂取カロリーが増えるので注意しましょう。
抗酸化作用のある食品と糖質の摂取制限
抗酸化作用のあるビタミン(C、E、B6、B12、葉酸など)やポリフェノールの含有が多い野菜、果物などの食品を多く摂取する。
ただし、果物の摂取量は1日80~100kcal以内が望ましい。
中性脂肪が高い方は、糖分入り飲料やクッキー、せんべい、アイスクリームなど糖質が多い食品を控えます。
1日3食を規則正しく摂る
食事は1日3食とし、毎日同じ時間帯に食事を摂るようにします。毎食のエネルギー量は朝:昼:夜を3:4:3の割合にするのが理想的です。夕食量が多くなってしまうと、肥満を招きます1)。
脂質異常症における食事療法の基本
脂質異常症の食事療法の食材
- 大豆、大豆製品
- 魚
- 良質の油
- 緑黄色野菜や海藻、きのこ類
大豆、大豆製品
大豆、大豆製品は「畑の肉」と呼ばれるほど、良質のたんぱく質を含んでいます。大豆たんぱくにはLDLコレステロールを減らす働きがあります。また大豆イソフラボンにはLDLコレステロールや中性脂肪を減らす働きがあります。1食あたりの摂取目安量は納豆1パック、豆腐・厚揚げ1/3丁、大豆水煮50g、豆乳コップ1杯です。
魚
魚には良質な脂質であるオメガ3脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペタエン酸)を含んでいます。これらはLDLコレステロールや中性脂肪を減らし、血栓の形成を抑えます。
あじ、いわし、さば、さんまなどの青魚やかつお、まぐろなどの赤身魚、魚のかまの部分に多く含まれます。1食当たりの目安量は80gです。
良質の油
LDLコレステロールを下げる働きがある油はオレイン酸を含むオリーブオイルやキャノーラ油(菜種油)などです。大豆油やごま油、サフラワー油もLDLコレステロールを下げますが、摂り過ぎると善玉であるHDLコレステロールも減らしてしまいます。
ただし、良質の油でも脂質は1gあたり9kcalとカロリーが高いので、使いすぎには気をつけます。調理油の1日の目安量は大さじ2杯(1人分)です。
緑黄色野菜や海藻、きのこ類
食物繊維が多く、体内のコレステロールの吸収が抑えられ、排泄が促されます。
緑黄色野菜にはβ-カロテンやビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどの抗酸化作用成分は、LDLコレステロールの酸化を抑えてくれます。
これらは低カロリー食材なので、たくさん食べても肥満の原因にはなりにくく、さらに満腹感を与えてくれるので、食べ過ぎを防げます。1日の目安量1日350gです。
脂質異常症の食事療法の調理のポイント
油を控える
蒸す、煮るなど油を使う量が少ない料理にし、低カロリーの食事にします。
低カロリーの食材を利用する
きのこ類、海藻類を使用して、ボリュームがあり、低カロリーの食事にします。
野菜は少し大きめにきり、固めに作る
噛む回数が増えることで満腹感が得られ、食べ過ぎを防ぐことができます。
脂質異常症治療のレシピ
レシピ1 アスパラガスのおひたし
材料(2人分)
- アスパラガス 4本
- かつお節 適量
- 醤油 適量
- 塩 少量
作り方
- アスパラガスは根元の固い部分を切り落とし、下の方の皮をピーラ―で剥き3cm幅に切る。
- 沸騰したお湯に塩を入れ、アスパラを茹で、ザルにあげる。
- アスパラを皿に盛りつけ、醤油をかけ、かつお節をのせて完成。
レシピ2 厚揚げのステーキ きのこソースかけ
材料(2人分)
- 厚揚げ 1枚
- まいたけ 50g
- しめじ 50g
- 和風顆粒だし 小さじ1/4
- しょう油 小さじ1/2
- 水 1/2カップ
- 片栗粉 小さじ1
- あさつき 1本
作り方
- 厚揚げは熱湯をかけ、油抜きをし、キッチンペーパーで水気を拭きとる。
- 厚揚げをトースターで両面に焼き色がつくまで焼く。
- まいたけ、しめじは軸を切り、ばらばらにほぐす。
- 鍋に水、和風顆粒だしを入れ、沸騰したら3を入れ、しょう油で味をつけ、水溶き片栗粉で、とろみをつける。
- あさつきは小口切にする。
- 厚揚げを6等分に切り、お皿に盛り付け、4をかけ、あさつきをのせる。
レシピ3 魚のロールキャベツ
材料(4人分)
- 魚の切り身 40g×4
- キャベツ 4枚
- 人参 40g
- さやいんげん 4本
- 玉ねぎ 半分
- こぶだし 約2カップ
- A(酒 大1、しょう油 小2、塩 小1/2)
- 小麦粉 適宜
- つまようじ 必要量
※魚の種類はまぐろ、かじき、さけなどです。
作り方
- 魚はキャベツに包める位の大きさに切り、小麦粉をまぶしておく。
- キャベツ4枚をゆで、軸の部分をそぎとる。
- 人参は棒状に切り、玉ねぎは薄切りに、さやいんげんは2等分にする。
- キャベツをひろげ、魚、人参、玉ねぎ、いんげんを乗せ包みつまようじでとめる。
- 鍋に包んだロールキャベツを並べる。
- こぶだし(ひたひたになるくらい)、Aを加え20分程度アクをとりながら煮る。
- 煮えたら、食べやすくきり器に盛る。
参考文献
- 「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」2007年版 日本動脈硬化学会