装着型ロボット
公開日:2016年8月26日 03時00分
更新日:2019年2月 1日 22時22分
ロボットの中でも特に、からだに装着し、モーター等でからだの動きをサポートするものを装着型ロボットと言います。ここでは、リハビリテーションや介護の分野で開発が進んでいる装着型ロボットの中で、販売や有償レンタルが開始されて、みなさんの目に触れる可能性の高いものをいくつか紹介します。
HAL®(Hybrid Assistive Limb® )
HALは、脳から筋肉への指令(生体電位信号)を読み取ることで、身体機能を改善・補助・拡張することができるサイボーグ型ロボットです。皮膚に貼った電極から生体電位信号を読み取り、モーターによって関節を動かします。動かしたい力の大きさに合わせて力をアシストすることができるので、動きの補助や拡張ができるだけでなく、脳が動きを再学習することで装着者の機能回復訓練にも使えると言われています。
HAL下肢用(写真1)は脚に装着し、歩行や立ち座りの訓練を行うロボットです。これまでのところ、脳卒中等で片麻痺(半身の麻痺)がある方に対しての使用が報告されているのをはじめ、さまざまな症例が報告されています。既に欧州では医療機器認証を得ており、ドイツでは両脚に麻痺のある脊髄損傷患者などに対して機能改善治療用に公的な労災保険が適用されています。国内では、HAL福祉用下肢タイプが医療機関や介護施設向けに有償レンタルされており、脳卒中や神経筋疾患、運動器疾患などで歩行が不安定な方に対しての活用が広がっています。
また、健常者が装着して運動機能を増幅し、介護場面(写真2)でのからだの負担を軽減したり、災害現場で重労働をしたりするHAL®作業支援用も研究開発されています。
WPAL®(Wearable Power-Assist Locomotor®)
WPAL(ウーパル)は、脊髄損傷等で両足が動かなくなった対麻痺という状態の方が使用する歩行補助ロボットです。左右の足の体重の乗り具合(荷重)を感知し、足の各関節の動きを補助し、専用の歩行器と共に歩くことができます。左右の荷重を感知して動く構造のため、足の筋肉が全く動かない方でも利用することができます。また、モーターやフレームが足の内側にあるので、車椅子に乗ったままWPALを装着したり、WPALを装着しまま車椅子に座ったりできるのが特徴です。すでにリハビリテーション病院向けに臨床研究用の販売が開始されています。
他にも、WPAL同様に両足が動かなくなった対麻痺の方が装着し両手の杖で歩く「ReWalk」(イスラエルのアルゴ社)、体が弱った高齢者の股関節に装着して足の振り出しのタイミングを助ける「リズム歩行アシスト」(本多技術研究所)、重度片麻痺(半身の麻痺)の方が歩行訓練用に用いる「GEAR (Gait Exercise Assistant Robot)」(トヨタ自動車)なども、実際の患者さんを対象とした研究や、有償レンタルが始まろうとしています。
問題点と今後の展望
装着型ロボットは、これまで社会に存在しなかった全く新しいものです。そのため、どのように開発し、安全性を確認し、法制度上の認可をし、社会に普及させていくかも手探り状態です。国としても特区を制定するなど産業育成を進めています。 ロボットは何でもできる夢のマシーンと思いがちですが、現状では装着型ロボットの使用目的の対象となる方も、装着型ロボットで出来ることも限られています。しかし、これら技術が発展していくことで、装着型ロボットが徐々にみなさんの身近なものになっていくことでしょう。