ウォーミングアップの目的と方法
公開日:2016年7月25日 14時00分
更新日:2019年2月 1日 16時34分
ウォーミングアップとは
ウォーミングアップとは「運動によるケガの防止や、主運動を行うための身体の準備、その運動に対する能力を最大に発揮できる状態をつくること」を目的に行う、運動前の準備運動のことです。
ウォーミングアップは言葉の通り、体温を上げて身体を温める「warm:ウォーム(温める)」と、心拍数を上げる、血流量を増やす「up:アップ(上げる)」ことが大切です。筋や関節も温まることで関節可動域が広くなり、また心拍数や血流量を徐々に上げることで心臓や肺への急激な負担を避けることができます。
ウォーミングアップの効果
ウォーミングアップを行う事で以下の効果があります。
体温や筋温を上昇させる
身体の中で発生したエネルギーは、筋を収縮させるだけでなく、熱エネルギーとしても使われ体温を上昇させます。それにより血管が拡張し、酸素の供給もスムーズに行われるようになります。
関節可動域を広くする
筋温が上がることで筋や腱を柔らかくすることができるため、関節可動域が大きくなります。そのため運動中の過度の伸展やねじれによる肉離れや腱断裂などの傷害を防ぐことができます。
神経の伝達を促進する
ウォーミングアップで身体を動かすことで中枢神経の興奮を引き起こし、すぐに反応できるように身体を運動の準備状態にもっていきます。
心拍数と呼吸数を徐々に増加させる
ウォーミングアップで軽い運動から始めることで、徐々に心拍数や呼吸数を主運動に近づけることができます。そのため心臓や肺への急激な負担を軽減させることができます。
心の準備をする
これから行う運動のイメージをつくり、精神的にゆとりをもって主運動に臨むことができます。
ウォーミングアップの種類
以前はウォーミングアップとしてスタティックストレッチ※1がよく取り入れられていました。しかし、スタティックストレッチは筋の伸張反射を抑制してしまうため、最大筋力が出せずパフォーマンスが低下することが報告されています1)2)。そのためウォーミングアップ時にスタティックストレッチを取り入れる場合は、体温が上がったあと、短時間(30秒未満程度)が良いとされています3)。
一方ウォーミングアップに適しているストレッチはダイナミックストレッチ※2、PNFストレッチ※3、バリスティックストレッチ※4があります。これらは筋を収縮させながら関節可動域を広げることができます。ただし、反動をつけて行うバリスティックストレッチは強度が高く筋や関節への負担が大きいため、1.筋温が上がったあと、2.小さい動きから大きい動きへ、というポイントを押さえておく必要があります。
- ※1 スタティックスストレッチ:
- スタティックスストレッチとは、静的ストレッチとも呼ばれ、体を静止させ、反動を使わずに関節の可動域を段階的に増していき、無理のない程度に筋肉が伸ばされた状態をしばらく保持し(15~60秒間)する方法です。
- ※2 ダイナミックストレッチ:
- ダイナミックストレッチとは、動的ストレッチとも呼ばれ、体を動かしながら行うストレッチのことです。代表的なダイナミックストレッチの一つにラジオ体操があります。ダイナミックストレッチは柔軟性の確保だけではなく、筋肉の温度も高めることができ、スポーツのウォーミングアップに採用されることが多いです。
- ※3 PNFストレッチ:
- PNFストレッチとは、Proprioceptive Neuromuscular Facilitationの略で、固有受容性神経筋促通法といいます。筋肉に対して適切な負荷量で、様々な収縮の仕方で負荷を与えることで効果的に固有受容器(筋肉や関節の曲げ伸ばしに生じるセンサー)を刺激して神経筋の反応を良くしていくことを目的に行います。
- ※4 バリスティックストレッチ:
- バリスティックストレッチとは、反動や弾みをつけて筋肉を伸ばすストレッチ方法です。
ウォーミングアップの方法
ウォーミングアップでは軽い全身運動、ダイナミック(動的)ストレッチ、スタティック(静的)ストレッチ、主運動に近い専門的な動きをうまく組み合わせて行います。効果的なウォーミングアップの例を下に示します。
主要部位の軽いほぐし
足首・手首まわし、腰まわし、膝の屈伸、膝回しなど運動でよく使う部位を軽くほぐします。
全身運動(ダイナミックストレッチを含む)
筋温を温めるために、ジョギング~ランニングなど全身を動かす動きを取り入れます。
スタティックストレッチ
筋温が温まったところでスタティックストレッチを行うことで関節可動域を広げます。ただし、ウォーミングアップで行うスタティックストレッチは60秒以上行うとパフォーマンスが低下することが報告されているため、30秒程度の短い時間にします3)。
ダイナミックストレッチ
運動で使う肩甲骨まわりや股関節まわりなど、動かしながらさらに可動域を広げるようにします。動かすことでさらに筋温、深部体温も上昇させることができます。
専門性のある動き
ダイナミックストレッチから、主運動の動きに近づけていきます。例えば陸上競技の場合は、もも上げやスタートからの蹴り出し動作、バドミントンの場合はフットワークや素振りなど、種目によって行う内容は異なります。(図)。
ウォーミングアップの注意点
ウォーミングアップの量やタイプには個人差があります。自分のタイプや体力に合ったウォーミングアップの内容を選んでください。またウォーミングアップは競技特性を考慮する必要があります。ただ身体を動かせばよいのではなく、スピード、動き、脈拍などを徐々に主運動に近づけることが大切です。
参考文献
- (財)富山県健康スポーツ財団(2010).スポーツ医・科学的トレーニング情報no.35