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筋膜リリースの効果と方法

公開日:2016年7月24日 02時00分
更新日:2024年5月13日 13時00分

写真:筋膜リリースを行っている女性の写真

筋膜とは

 筋膜とは筋肉を包んでいる膜で、身体全体にはりめぐらされています。筋繊維や器官、神経などとも連結していて三次元的に全身を覆っており、第二の骨格1)とも呼ばれています。

 筋膜は浅筋膜(せんきんまく)、深筋膜(しんきんまく)、筋外膜(きんがいまく)、筋周膜(きんしゅうまく)、筋内膜(きんないまく)2)と連続して層になっており、すべての筋組織はお互いに滑りあうように動きます。筋膜には筋肉を保護する作用、筋収縮時の滑りを助ける作用、血管や神経、リンパ管を支えて通過させる機能があります。

 筋内膜以外の筋膜はコラーゲン繊維とエラスチン繊維でできており2)、コラーゲンとエラスチンはお互いに協力し合って身体の形を整えたり、身体の動きに合わせて形を戻したりしています。

 筋膜に機能異常がみられると、本来はサラサラの水溶性の基質が粘度の高い状態になり、筋膜全体の滑りが悪くなります。また、筋膜を通っている血管や神経、リンパ管などの通過部分が圧迫されて循環障害などが起こります。

筋膜リリースとは

 非対称な姿勢や動作をとり続けることや同じ姿勢を長時間とり続けること、怪我などによって身体の一部に負担がかかり、身体がアンバランスな状態となると筋膜が自由に動けない状態になります。すると筋膜のよじれが生じて筋膜と皮膚・筋肉との間の滑らかな滑りが失われます。

 筋膜のよじれができると、コラーゲン繊維とエラスチン繊維が一部により集まり、本来はサラサラの状態が粘っこくなってほどけなくなります。

 筋膜は全身につながっているので、ほかの筋肉や筋繊維にまで動きの悪さが波及し、痛みや筋力の低下、柔軟性の低下、運動パフォーマンスの低下、日常生活活動の低下がみられるようになります。

 筋膜のよじれやねじれを解消して、正しい筋と筋膜の伸長性と筋肉の動きの回復を促すのが筋膜リリースです。

 筋膜リリースはストレッチのようにある一定の方向に伸ばすのではなく、筋膜をさまざまな方向に解きほぐしていくことです。

筋膜リリースの効果

 本来は理学療法士などが筋膜リリースを施術し、その後の効果を持続するために自分で行える筋膜リリースが指導されますが、日常的な姿勢や動作のとり方による身体の動きの硬さや肩や首の凝り感、腰痛、むくみ、バストアップなどの改善には自分で行う筋膜リリースでの改善が期待できます。

 自分で筋膜リリースを実施することで身体のバランスが整い、身体が軽く感じられるようになります。継続することで身体の良い状態を保てるようになり、身体が動きやすくなっていくのでセルフコンディショニングとしても活用できます。

 ただし、悪性腫瘍・がん、開放創(皮膚の開いた傷)、縫合部がある場合、全身・局所感染時は、筋膜リリースは禁忌3)となります。筋膜リリースを実際にやってみて、痛みが強くなる場合や痛みが変わらない場合もほかの病気が原因となっている場合もあるので筋膜リリースを一旦止めて受診しましょう。

筋膜リリースの方法

 筋膜リリースは自分の身体の硬い部分、伸びにくい部分を感じとり、ゆっくりと呼吸しながら行います。一部分により固まったコラーゲン繊維とエラスチン繊維を解きほぐしていくのですが、解きほぐれるまでには時間を要するので無理せずに痛みを出さないようにしてゆっくりと伸ばしていきます。最初は20秒~30秒から始め、90秒以上4)行えるように慣らしていきます。

 首都大学東京健康福祉学部理学療法学科教授の理学療法士・医学博士の竹井仁先生は筋膜が解きほぐされる感覚をフライパンの上の固形バターが溶けるイメージ4)と表現されています。午前、午後、入浴後など一日の内で数回に分けて筋膜リリースを行うことが効果的とされています。

 竹井仁先生による筋膜リリースはテレビや書籍、書籍出版社のYoutubeの動画で紹介されています。その中からいくつかの方法を説明します。

【竹井仁】疲れない体になるには筋膜をほぐしなさい【筋膜リリース動画】著者・竹井仁先生による紹介 誠文堂新光社(YouTube)5)

猫背・肩こり、二重あごの改善に効果的な筋膜リリース

  1. 椅子に座り、背中が丸まらないように注意して肩甲骨を前に押し出すように両手を肩の高さで前に伸ばします。20秒数えます。
  2. 肩の高さから両腕を下げないように平行に保ちながら、両肘を後ろに引いて20秒数えます。
  3. 肘の高さは保ったまま両手の手のひらを前に向けるように肘から上を上に上げていきます。腰が反らないように、顎が上がらないように注意して20秒数えます。

首のこり、肩こり、腰痛の改善に効果的な筋膜リリース

  1. 立って右腕を上に上げて肘を直角に曲げます。左腕は左肘を直角に曲げて左手の甲を腰の後ろにあてます。
  2. 両肘を直角に保ったまま、両方の肩甲骨を反時計回りに回すように動かして20秒数えます。
  3. 右足を左足の前に交差させて、右のわきを伸ばすように左に身体を倒して20秒数えます。
  4. 鼻を左肩に近づけるように顔を向けます。右肘が前に引っ張られないように注意しながら20秒数えます。

フォームローラーを使った筋膜リリースの方法

 筋膜リリースを行う際に筒状のフォームローラーを使うこともあります。身体の硬い部分、伸びにくい部分にフォームローラーを当てます。身体の重みで当てた場所を圧迫しつつ、圧迫した部位に関連する関節を前後、左右に動かしながら解きほぐすように伸ばしていきます。これらの手順を圧迫する箇所につき1分程度行います5)

参考文献

  1. 筋再教育運動が筋膜リリース後の筋膜の伸張性および筋力に与える影響 勝又泰貴 理学療法科学 31(1):99-106,2016 (PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. 姿勢の評価と治療アプローチ 竹井仁 脊髄外科 Vol.27 No.2 2013年8月(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. Myofascial Release(筋膜リリース) 竹井仁 理学療法学16(2):103-107,2001(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  4. 自分でできる!筋膜リリースパーフェクトガイド 竹井仁 自由国民社 2017
  5. 【竹井仁】疲れない体になるには筋膜をほぐしなさい【筋膜リリース動画】誠文堂新光社 YouTube(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  6. 伊藤 知之 水須 達也 フォームローラーを使用した筋膜リリース方法 スポーツ健康学会誌 第3号 大阪大谷大学(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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