老年学とは -老年学と世代間問題-
公開日:2016年7月25日 14時00分
更新日:2021年12月 9日 11時28分
老年学とは?
老年学は英語のジェロントロジー(gerontology)の日本語訳である。ジェロントロジーは1903年にロシアの学者メチニコフが創作した用語であり、gerontはギリシャ語で老人を意味する。それに学の意味であるologyが合成されたものである。
このように、老年学にはまだ100年の歴史しかもたない新しい学問である。その内容はきわめて学際的である。図に2002年から開講している桜美林大学の修士課程のカリキュラムを示すが、その学際性を理解していただけるであろう。このような学際的な老年学の修士課程はアメリカには40近くあるが、わが国では桜美林大学の1つしかない。対照的に老年医学の講座はアメリカには3つしかないがわが国では全国医学部(あるいは医科大学)80のうち23に確立している。
学際的の日本語は英語のmultidisciplinaryおよびinterdisciplinaryの訳語である。multidisciplinaryには、さまざまな学問が協力し合うといった意味合いがある1)。interdisciplinaryには、もっと積極的に、学問間の壁を取り払っていくといった意味がある。すなわち、ジェロントロジー(老年学)は近代のさまざまに細分化された学問を再統合する歴史的な役割を担って登場してきたといえるであろう。
老年学の内容
老年学という学問の内容はその後さまざまなプロセスを経てカステンバウム(kastenbaum)により、次のような内容に整理されている1)。
- 加齢変化の科学の研究
- 中高年の抱える問題についての科学的研究(リンク1参照)
- 人文学(humanities)の立場からの研究
- 以上の研究成果を成人や高齢者の知識に応用するための研究
これを少し解説しよう。(1)はエイジングの研究ともいうべきもので、人間の加齢変化を身体的、心理的、社会的な側面から捉えようとするものである。(2)は中高年の集団に内在している問題を探り出しその解決の手立てを確立するための研究である。(3)には(1)(2)の科学ではカバーできない分野の学問、すなわち、哲学、歴史、文学、宗教学など含まれる。(4)は(1)~(3)までの学問の応用であり、これには産業老年学や教育老年が含まれる。産業老年学にはシニアビジネスの理論と実践、教育老年学には、学校教育のみでなく社会教育における老年学のコンセプトやスキルの開発も含まれる。
老年学と世代間問題
以上みてきたようにエンサイクロペディア的に定義された老年学には世代間問題の研究は含まれていない。しかし、老年学は単に中高年者を対象とするのみでなく、高齢者が増加していく社会全体の問題を解決するための学問に脱皮することが求められている。したがって、世代間問題の研究を重要な領域の1つに加えるべきであろう。
参考文献
1.Maddox G.F et al eds:The Encyclopedia of Aging, Springer Publishing Company,1987