ロスムンド・トムソン症候群
公開日:2016年7月25日 12時00分
更新日:2019年2月 1日 20時34分
ロスムンド・トムソン症候群とは
ロスムンド・トムソン症候群とは、常染色体の劣性遺伝により発症する疾患です。若い頃から白内障を合併するケースが多く、さらに悪性腫瘍(特に、骨肉腫や皮膚扁平上皮がん)を合併します。
日本には現在、10人ほどの患者がいます。がんなどの合併症に罹患(りかん)しなければ、通常の人と変わらない寿命を全うできますが、根治的な治療法(完全に治る方法)はなく、対処療法(現れている症状を軽減する治療)が主体となります。
また、日光の暴露により症状が悪化するため、日光を避けて過ごし、悪性腫瘍を早期に発見するための定期的な検診が必要です。
ロスムンド・トムソン症候群の症状は?
ロスムンド・トムソン症候群の症状は、以下の様なものがあります。
乳児期からみられる特徴的な皮膚所見
- 浮腫性紅斑からの毛細血管拡張
- 皮膚の萎縮や色素沈着
特に、日光に当たった箇所には、火傷後のような水疱ができたり、湿疹が見られることもあります。
幼児期にみられる所見
- 若年性白内障
- 低身長
- 骨格異常(骨格形成不全)
- 性腺機能低下
などがみられます。
合併症としては、高い確率で悪性腫瘍(がん)を発症します。特に骨肉腫、皮膚扁平上皮がん、白血病、胃がんなどの合併症が報告されています。
ロスムンド・トムソン症候群の原因は?
ロスムンド・トムソン症候群は、常染色体の遺伝子異常によって発症します。その原因は、DNAの複製・修復に関与する"ヘリカーゼタンパクRECQL4"という遺伝子の異常です。
この遺伝子は、ヒト1人に対して2つ存在します。両親から1つずつ受け継ぎ、子は2つの遺伝子を持って生まれてきます。両親がこの遺伝子を1つずつ持っていた場合、親は発症しません。しかし、両親から異常がある遺伝子を1つずつ、計2つ受け継いでしまった子は発症します。これが、劣性遺伝の仕組みです(図)。親が遺伝子の異常を1つずつ持っていた場合、子がロスムンド・トムソン症候群となる確率は、およそ25%です。
ロスムンド・トムソン症候群の診断は?
ロスムンド・トムソン症候群の診断は、臨床症状をもとに行われ、症状の現れ方により重症度を判断します。
症状から診断する
以下のようなロスムンド・トムソン症候群に特徴的な症状を複数認め、さらに、関連する遺伝子(RecQL4遺伝子)変異が遺伝子検査や皮膚生検で確認されると、確定診断がつきます。
- 多形皮膚委縮症
- 低身長
- 骨格異常
- 日光過敏症
- 毛髪異常
- 若年性の白内障
- 悪性腫瘍(骨肉腫、皮膚扁平上皮がんなど)
また、ロスムンド・トムソン症候群と似た様な症状がみられる疾患がいくつかあり、これらの疾患との鑑別診断も行われます。
重症度の診断
重症度は、食事、栄養、呼吸の評価や、日本の脳卒中の評価スケールともなるmodified Rankin Scale(mRS)により、評価されます。
ロスムンド・トムソン症候群の治療は?
現在では、根治的な治療法が確立していないため、対症療法が主な治療法となります(表)。
確認される症状 | 治療法 |
---|---|
母指の欠損 | 母指の形成術を行う |
白内障 | 眼科的治療(眼内レンズ挿入など)を行う |
皮膚の委縮 | レーザー治療 |
頭蓋骨の早期融合症 | 外科的処置(手術) |
低身長や骨格異常(骨格形成不全)が見られるため、定期的に発達のチェックを行い、必要に応じてリハビリテーションも行います。
ロスムンド・トムソン症候群は、遺伝子異常の劣性遺伝であるため、次のお子さんを希望する場合は、遺伝カウンセリングが必要となります。