高齢者の脂質異常症とは
公開日:2017年6月30日 13時12分
更新日:2019年6月12日 09時09分
脂質異常症とは
脂質異常症とは血液中の脂質、つまりコレステロールや中性脂肪の濃度が高まった状態のことです。脂質異常症は、診断基準が総コレステロール値からLDLコレステロール値へと変わったため、2007年4月に高脂血症から脂質異常症に呼び方が変わっています。高脂血症という呼び方も並行して使われています。
脂質異常症の種類
脂質異常症はいくつかの種類にわけることができます。コレステロールだけが多い、中性脂肪だけが多い、両方とも多いなどの分類です。
さらに別の観点から、家族性とそれ以外とにわけることもできます。脂質異常症の原因は遺伝的(体質的)なものと生活習慣によるものとにわかれますが、家族性脂質異常症の場合は遺伝的な要素が強いもので、生活習慣の是正のみでは治療が困難です。
脂質異常症の予防と治療
さて、なぜ脂質異常症の予防と治療は必要なのでしょうか?それは動脈硬化性の疾患を予防するためです。
動脈硬化性疾患とは、動脈の壁が硬く厚くなって血流を悪くなり、さらには閉塞することによってその動脈によって栄養が供給されている臓器に障害がもたらされた状態です。冠状動脈の狭窄や閉塞による狭心症、心筋梗塞や下肢への動脈がやられる場合の閉塞性動脈硬化症が代表的なものです。
それだけではなく、障害された動脈の壁で血小板が病的に活性化されたり、血管内で異常な凝固がおこる結果、そこで血栓(血のかたまり)ができ、それが脳などに流れていき、脳梗塞を引き起こすこともあります。
脂質異常症(高脂血症)の予防と治療には食事療法(カロリー制限と脂質の制限) と適度の運動が基本です。
それらを十分に行ったうえでもデータの改善が認められない場合は薬物療法を考えます。ただし、脂質異常症(高脂血症)以外に糖尿病、高血圧、喫煙、冠動脈疾患、脳梗塞、毛閉塞性動脈硬化症などをすでに有している場合は脂質異常症(高脂血症)についてもさらに厳格なコントロールが必要となります。
また、高齢者では、その他の合併症、認知機能、生活機能障害、服薬管理能力、介護の必要性と対処状況、経済状態などを総合して、薬物療法を開始するか、どのような薬物を用いるか、などについて検討すべきです。
脂質異常症の治療薬とその作用
脂質異常症の治療薬をその作用別にあげますと次のようになります。
- LDLコレステロール※低下薬:
- HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)、陰イオン交換樹脂(レジン)、フィブラート系薬、ニコチン酸誘導体、プロブコール
- トリグリセリド低下薬:
- フィブラート系薬剤、ニコチン酸誘導体、イコサペン酸エチル
これらの中でとくにHMG-CoA還元酵素阻害薬は多くのものが開発されており、血清コレステロールの低下作用はもちろん動脈硬化性血管障害の予防効果も多くの研究で確かめられています。ただし、後期高齢者に関する血管合併症予防効果に関するデータはまだ蓄積される必要があります。
なお、横紋筋融解症などの副作用の出現には十分注意する必要があります。効果を副作用の療法を確かめながら、有効かつ安全な薬剤で治療をしていきます。
- LDLコレステロール:
- LDLコレステロールとは動脈硬化性疾患を助長するいわゆる「悪玉」コレステロールのことです。