高齢者の脂質異常症の治療
公開日:2016年7月25日 10時00分
更新日:2023年12月28日 12時46分
生活習慣の改善1)
脂質異常症の治療では、食事療法、運動療法をはじめとする生活習慣の改善が基本となります。具体的には以下のようなことを行います。
- 喫煙、受動喫煙を避ける
- 標準体重※1を維持する
- 主食や甘いお菓子など、糖質の摂り過ぎに気をつける
- アルコールは1日25g以下とする(表1参照)
- 毎日30分以上の有酸素運動を行う
- 肉の脂身やラード、乳製品、卵黄などの飽和脂肪酸※2の摂取を控え、魚介類や大豆製品などの多価不飽和脂肪酸※3を摂るようにする(表2-1、2-2参照)
- コレステロールを多く含む鶏卵や魚卵、レバーやモツなどの内臓類の摂取を控える
- 塩分は1日6g未満に抑える
- 緑黄色野菜、果物などビタミンやポリフェノールを多く含む食品を摂り、脂質の酸化を防ぐ
- 海藻やキノコ、胚芽米、玄米、全粒粉パンなど未精製穀類など、食物繊維を多く含む食品を摂る
お酒の種類 | ビール | 清酒 | ウイスキー・ブランデー | 焼酎(35度) | ワイン |
---|---|---|---|---|---|
アルコール20~25gの目安量 | 中瓶1本500ml (20g) |
1合180ml (22g) |
ダブル60ml (20g) |
半合90ml (25g) |
2杯240ml (24g) |
日本人の食事摂取基準では、脂質に関して、総脂質(目標量)の他に、飽和脂肪酸量(目標量)、n-3系脂肪酸(目安量)、n-6系脂肪酸(目安量)が定められています。
年齢 | 脂質 (エネルギー比率)※1,a | 飽和脂肪酸 (エネルギー比率)※1,b,c | n-3系脂肪酸 (g/日)※2 | n-6系脂肪酸 (g/日)※2 |
---|---|---|---|---|
50~64歳 | 20%以上30%未満 | 7%以下 | 2.2g | 10g |
65~74歳 | 20%以上30%未満 | 7%以下 | 2.2g | 9g |
75歳以上 | 20%以上30%未満 | 7%以下 | 2.1g | 8g |
- ※1 脂質・飽和脂肪酸(エネルギー比率):総エネルギー摂取量に占める割合(%エネルギー)。生活習慣病の予防のために現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量を示す。
- ※2 n-3系脂肪酸・n-6系脂肪酸(g/日):1日当たりの摂取量。一定の栄養状態を維持するのに十分な摂取量を示す。
- 範囲に関しては、おおむねの値を示したものである。
- 飽和脂肪酸と同じく、脂質異常症及び循環器疾患に関与する栄養素としてコレステロールがある。コレステロールに目標量は設定しないが、これは許容される摂取量に上限が存在しないことを保証するものではない。また、脂質異常症の重症化予防の目的からは、200mg/日未満に留めることが望ましい。
- 飽和脂肪酸と同じく、冠動脈疾患に関与する栄養素としてトランス脂肪酸がある。日本人の大多数は、トランス脂肪酸に関する世界保健機関(WHO)の目標(1%エネルギー未満)を下回っており、トランス脂肪酸の摂取による健康への影響は、飽和脂肪酸の摂取によるものと比べて小さいと考えられる。ただし、脂質に偏った食事をしている者では、留意する必要がある。トランス脂肪酸は人体にとって不可欠な栄養素ではなく、健康の保持・増進を図る上で積極的な摂取は勧められないことから、その摂取量は1%エネルギー未満に留めることが望ましく、1%エネルギー未満でもできるだけ低く留めることが望ましい。
年齢 | 脂質 (エネルギー比率)※1,a | 飽和脂肪酸 (エネルギー比率)※1,b,c | n-3系脂肪酸 (g/日)※2 | n-6系脂肪酸 (g/日)※2 |
---|---|---|---|---|
50~64歳 | 20%以上30%未満 | 7%以下 | 1.9g | 8g |
65~74歳 | 20%以上30%未満 | 7%以下 | 2.0g | 8g |
75歳以上 | 20%以上30%未満 | 7%以下 | 1.8g | 7g |
- ※1 脂質・飽和脂肪酸(エネルギー比率):総エネルギー摂取量に占める割合(%エネルギー)。生活習慣病の予防のために現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量を示す。
- ※2 n-3系脂肪酸・n-6系脂肪酸(g/日):1日当たりの摂取量。一定の栄養状態を維持するのに十分な摂取量を示す。
- 範囲に関しては、おおむねの値を示したものである。
- 飽和脂肪酸と同じく、脂質異常症及び循環器疾患に関与する栄養素としてコレステロールがある。コレステロールに目標量は設定しないが、これは許容される摂取量に上限が存在しないことを保証するものではない。また、脂質異常症の重症化予防の目的からは、200mg/日未満に留めることが望ましい。
- 飽和脂肪酸と同じく、冠動脈疾患に関与する栄養素としてトランス脂肪酸がある。日本人の大多数は、トランス脂肪酸に関する世界保健機関(WHO)の目標(1%エネルギー未満)を下回っており、トランス脂肪酸の摂取による健康への影響は、飽和脂肪酸の摂取によるものと比べて小さいと考えられる。ただし、脂質に偏った食事をしている者では、留意する必要がある。トランス脂肪酸は人体にとって不可欠な栄養素ではなく、健康の保持・増進を図る上で積極的な摂取は勧められないことから、その摂取量は1%エネルギー未満に留めることが望ましく、1%エネルギー未満でもできるだけ低く留めることが望ましい。
食事療法1)
LDLコレステロールや中性脂肪が少ない食事は伝統的な一汁三菜の日本食が理想です。
LDLコレステロールが高い場合の食事
コレステロールや飽和脂肪酸を多く含む食品(肉の脂身、レバーなどの内臓、鶏肉の皮、乳製品、卵黄)とトランス脂肪酸※4を多く含む食品(菓子、加工食品)の摂取を控えましょう。
中性脂肪が高い場合の食事
糖質を含む食品(米、パン、麺類などの主食、菓子)、アルコールの摂取を控え、n-3系脂肪酸(魚介類)を含む食品を多く摂るようにしましょう。
HDLコレステロールが低い場合の食事
トランス脂肪酸を含む食品(牛肉、牛乳、洋菓子)、n-6系脂肪酸(植物油)の摂取を控えるようにしましょう。
- ※4 トランス脂肪酸:
- 不飽和脂肪酸の中で、炭素(C)の二重結合をはさんで反対側に水素(H)がついているものをトランス不飽和脂肪酸と言います。牛や羊などの動物の胃の中でトランス脂肪酸はつくられ、牛肉や羊肉、牛乳、乳製品の中に含まれています。また、マーガリンやショートニング、パン、ケーキ、ドーナツ、揚げ物、植物油などを製造する過程でもトランス脂肪酸がつくられます。摂り過ぎるとLDLコレステロールが増えてHDLコレステロールが減り、心筋梗塞などのリスクを高める原因となります4)。
運動療法1)
運動を行うと、HDLコレステロールが増えて中性脂肪は減り、インスリン感受性が高まり、動脈硬化によって引き起こされる疾患やメタボリックシンドロームの予防、改善につながります。体力維持や増加、ストレスの解消、骨密度や脳機能を向上する効果もあり、日常生活の質の改善にもつながります。
運動療法の方法
早歩き、スロージョギング、社交ダンス、水泳、サイクリングなどの中等度強度※5の有酸素運動を1日30分以上、週180分以上行いましょう。
- ※5 中等度強度:
- 最大酸素摂取量の約50%の運動であり、推定する方法として「心拍数(脈拍/分)=138-(年齢/2)」、運動を行って「楽である~ややきつい」と感じる程度の運動強度のことを示す。
薬物療法1)
食事療法や運動療法を基本とした生活習慣の改善を行っても、脂質異常症の改善がみられない場合や、糖尿病、慢性腎臓病、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患がある場合などには、医師によって薬物療法が検討され、病態に応じて適切な薬剤が選択されます。
参考文献
- 脂質異常症の診断基準 動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症治療のエッセンス 一般社団法人日本動脈硬化学会